住宅街のど真ん中。時折後ろを振り返ってこちらの様子をうかがうのは、クマだ。秋田・大仙市で14日、撮影された。

クマを目撃した人は「まさか市街地で、クマと遭遇というのは思ってなかった。車を降りて何かすると、絶対襲いかかってくるだろうなって」と話す。

この秋、東北地方を中心に、各地でこれまでにない頻度でクマが出没している。
その出没場所の多くは、人里のすぐ近く。人間と遭遇しても、ひるむ様子を見せない。

宮城・大崎市でも19日朝、人が近くにいる中、気にせず何かを食べるようなクマの姿が目撃されていた。
市街地周辺に出没する、都市型の「アーバン・ベア」と呼ばれるクマたちが、人間に危害を加えるケースが相次いでいる。
1日で5人の被害…バス停や小学校近くで襲撃
19日、秋田・北秋田市。クマの出没を受け、巡回中のパトカーが「不要な外出は控え、建物内から出ないようにお願いします」と警戒を呼びかけていた。
付近の住民は「びっくりして、わたしもうご飯も食べたくない」とおびえる。
住民を恐怖に陥れる事態が起こったのは、19日午前6時40分ごろ。
市内にある小学校の目の前で、クマが相次いで人間を襲ったのだ。

鷹巣小学校付近で被害に遭ったのは、2人。
いずれも80代の女性で、1人は頭部から出血した。もう1人は頭部に加え顔面、右肩を負傷し、ドクターヘリで搬送された。
しかし、クマの襲撃は、これだけでは終わらなかった。

小学校付近で2人を襲ったすぐあと、直線で700メートルほど離れた場所で、同じクマかはわからないが、第2の襲撃が起きてしまったのだ。
その場所はなんと、多くの車が行き交うバス通り。
停留所でバスを待っていた女子高校生に、クマが襲いかかった。

悲鳴を聞いた人は「私のところ(洋菓子店)の建物の通路を、若い女性がすごい、ぎゃーという声を出しながら走っていった」と当時の様子を振り返る。
女子高校生(10代)は、左腕をかまれ軽傷。さらに、付近にいた80代の女性も、頭部や肩を襲われたという。

さらに午前11時ごろ、60代の男性がクマに襲われ、19日だけで北秋田市内では5人がクマの被害に遭ったことになる。
「人の気配気にせずエサ食べうなり声」
2023年、人里近くで出没するクマ。

17日には、富山市の住宅の中で、70代の女性がクマに襲われ死亡。富山県は19日、緊急の会議を開いた。

岩手県では18日、ついに学校の敷地の中にまでクマが侵入した。奥州市の水沢南中学校の校庭に、クマ2頭が現れたという。
水沢南中学校は、ロサンゼルス・エンゼルスの大谷翔平選手の母校。

18日の正午ごろ、テニスコート付近にクマが出没すると、すべての部活が休止に。
下校時間を1時間半早めたうえで、教師らが周辺を警戒していた。
人間の生活圏に堂々と出没し始めたクマたち。

冒頭で記述した、14日に秋田・大仙市に現れたクマの目撃者は、「小学校の通学路で出くわした」と話す。

14日に秋田・大仙市でクマを目撃した人:
通常、平日であれば、小学生が登校班で歩く道路。(クマの出没を受けて)小学校からの指示で、親の送り迎えか 車の送迎になった。
また、宮城・大崎市で19日に動画を撮影した人は、クマは「人間の気配を気にせず餌を食べていた」と語る。

宮城・大崎市でクマを撮影した人:
車もすぐ横にいて、(車に)全然反応せずに食べていた。
クマがこっちを見た瞬間に、重低音の静かなうなり声で来たので、『あ、まずい』と思った。
過去最悪ペース…“小柄な人の方がクマも襲いやすい”
環境省によると、2023年4~9月までにクマによる被害に遭った人は、全国15の道府県で109人。
国の統計開始以来最悪だった3年前の同じ時期を上回る、過去最悪のペースとなっている。

市街地周辺で、高齢者や女性を中心に被害に遭うケースが増えている理由について、アジア動物医療研究センター・パンク町田 センター長は「やっぱり体格だと思いますね。要するに、小柄な人間の方がクマとしても襲いやすいと(考える)。対策については、ある程度距離が離れているのであれば、手を振るなど、自分を大きく見せることで警戒させることはできる」と話している。
(「イット!」10月19日放送より)