10月13日、田中碧の2ゴールなどで4-1と快勝。2026年のW杯開催国として強化が進むカナダを相手に、高い得点力を見せつけたサッカー日本代表(世界ランキング19位)。これで国際Aマッチ5連勝、直近の5試合で22得点と、かつてない決定力を発揮している。

その指揮官、森保一監督(55)に、いま心に思い描いている「夢」を聞いてみた。その答えは。

「ワールドカップで優勝することが夢かなと思っています」

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未だかつて8カ国しか手にしていない世界の頂へ。監督として2度目のワールドカップで、これまでにない次元のサッカーに挑もうとする森保監督。あえて「ワールドカップ優勝」という壮大な目標を公言するのはなぜか。その真意と強化策を聞いた。

夢の叶え方は2つある

まずは「ワールドカップ優勝」への思いの前に、サッカー日本代表を率いる森保―監督にとって、子供の頃の夢は何だったのか尋ねてみた。

「小学校5年生頃まではプロ野球選手になるのが夢でした(笑)。そこからサッカーに出会って『自分にはサッカーが合っている』『サッカーが面白い、楽しい』ということで、サッカー選手になりたいという夢に変わりました」

「私の少年時代というのは、国内にJリーグというプロのリーグもなかったしですし、プロ選手になるという目標や夢はなくて。サッカーがうまくなれば、推薦で学校に行けるとか、最終的に就職できるとか、そういう感じで、夢というか、目標として捉えていましたね」

現役時代の森保監督(サンフレッチェ広島)
現役時代の森保監督(サンフレッチェ広島)

もともとは『プロ野球選手が夢だった』ところから始まり、小学5年生でサッカーと出会い、いつしかサッカー選手を夢見た森保監督。現役時代には日本代表にも名を連ねことが出来た原動力は、一体どこにあったのだろう。

「夢って、叶え方が2つあると思っていて、夢から逆算して努力をするっていうことと、もう1つは私のように、好きの延長が実は夢に繋がったというか、仕事になっている、夢と言えるようなことをやらせてもらっているっていうパターンもあると思います」

「私自身は、実は、夢を叶えるというよりも、好きなことをやって、夢中になれることをやり続けた結果が、今になっていると思いますね」

一方、夢から逆算して努力しているのが、子供の頃からJリーグや海外サッカーを様々なメディアを通じて見られる環境にあった今の代表選手達だ。彼らはつねにサッカー界のトップを目の当たりにし、夢見て、そこに向かって走り続けてきたとも言える。

森保監督はそんな彼らをこう評する。

「ほんと、すごいなと思いますね。夢を叶えるために、目標を持って、今の自分は何をしなければいけないか、彼らは常に考えられる。そして今の自分よりも、どうやったら明日の自分が、未来の自分が成長できるかっていうことを整理して考える力があるということは素晴らしいです」

「今だけ見ると、もう成功者として見られると思いますけど、本当に夢を叶える前に、周りの人から見れば、大変だなって思うような努力を、いっぱいして来ていると思います」

越えられなかった壁が目標でなく

そんな夢や目標へのアプローチが異なる選手達と目指す「ワールドカップ優勝」という夢。壮大な目標を掲げるには訳がある。そのきっかけは、やはりあの敗戦からだという。

「カタールのワールドカップで、クロアチアにPKで負けて終わってしまった後ですね。もっと日本はやれるのに、この選手たちはもっと上のステージで戦えるのに、勝たせられなかった自分がいて、ベスト16で終わってしまった」

「一方クロアチアは、ブラジルに勝って、戦い方としても、内容は5分で戦ったというところを考えた時に、ワールドカップが終わってから、また改めて自分の気持ちの中で何が目標かっていうと、越えられなかった壁を目標にするのではなくて、ワールドカップで優勝することを目標に、夢を持って、今のレベルアップをすべきということを思いました」

「実際、カタールのワールドカップで、素晴らしい選手たち、スタッフと仕事をさせてもらった中で、日本は絶対ワールドカップで優勝できるなって思えたことは、今の夢に繋がっています」

そしてともに戦う日本代表の選手達が口にするのも、世界一への熱い思いだ。

伊東純也選手
伊東純也選手

伊東純也
次のワールドカップで優勝することを個人としても目標にしています

遠藤航選手
遠藤航選手

遠藤航
僕らは本気でワールドカップで優勝するっていう目標を掲げて

久保建英選手
久保建英選手

久保建英
運だけではワールドカップは勝てないと思うので、親善試合でもしっかり勝ち星を積み上げていくことが、今後のチームの成長に繋がっていくと思います

『新しい景色』を合言葉にベスト8以上への挑戦を図った前回のカタール大会。日本は決勝トーナメント1回戦で前回大会準優勝のクロアチアと対戦し、延長、ペナルティーキック戦の末に敗れて、初のベスト8進出はならなかった。より高い目標を見据えながら、越えられなかった壁を打ち破るための新たな戦いが始まっている。

夢を叶えるための具体策は

ではこの“夢”を現実のものとするために、何が必要なのか。そのための強化ポイントを森保監督に聞いた。

「大きく言うと、『全員攻撃、全員守備で、いい守備からいい攻撃に』というコンセプトは持った上で、最後のところを、攻撃・守備ともに詰めていきたいと思っています」

――具体的には

「攻撃の部分においては、守備からのカウンターアタック速攻は、より形として出せるようになってきていますが、さらに、回数を多くしていかなければと思っています。そして、サイドからの攻撃は、個で突破するボールの動かし方と、グループで突破するコンビネーションを使って突破する部分は、よりクリアな絵を持ちながら、さらに良くしていきたいと思います」

「今後、相手の対策をさらに上回っていくためには、中央からの突破という部分での遅行になった時に、より中央の起点を使ってというところは、チームとして上げていかなければいけないと思います」

――守備面についてはいかがですか?

「守備においては、ボールロストから、即時回収の回数を増やせるようにしていかなければいけないですし、今、日本の武器ともなっている『相手に嫌がられるミドルブロックでの粘り強さ』粘り強く守備をするところは、継続して、さらに上げていかなければいけないと思いますし、ミドルブロックからの、ボールを奪う回数を、さらに増やしていけるようにできればと思います」

高い組織力を活かしたサッカーで世界の頂きを目指す森保ジャパン。13日のカナダ戦を快勝し、17日のチュニジア戦で目指すところは何なのだろうか。

「カタールのワールドカップの前に敗れているチームなので、やはり、ホームの日本では、我々は勝つという結果を掴み取りたいと思います。応援してくださってるサポーターの皆さんと、喜びを分かち合えるように、喜んでいただけるように、やはり勝利を第1に考えた中で、全てがレベルアップできるようにしたいなと思います」

最後に、森保監督から夢を追う若者たちへメッセージを貰った。

「夢を持って、夢を叶えるために頑張ってる子どもたちと、まだ夢は見つからないけど、これから夢に向かって行く子どもたちに私からの送る言葉としては『楽しむことを忘れずに、今のベストを尽くす』事をやって欲しいなと思います。大変なことは、たくさんあると思いますし、夢を叶えるのは簡単なことではないですが、何をやるにしても、楽しむことを忘れずに頑張ってほしいと思います」

ワールドカップ優勝の目標を掲げ、進化を続けるサッカー日本代表。次なる戦いは17日(火)に行われるチュニジア戦(世界ランキング29位)だ。『新しい景色』のその先を見据えるその戦いに、日本中の熱いまなざしが集まる。

キリンチャレンジカップ2023
日本 × チュニジア
10月17日(火)夜6時50分
フジテレビ系列生中継
TVerにてライブ配信
https://00m.in/t0qkr