王座戦の第4局で、藤井聡太七冠が永瀬拓矢王座に勝利し、八大タイトル戦になってから初となる全冠制覇を達成した。

11日の対局は、両者ともに「居玉」の状態で戦うという、「将棋の常識」を変えてしまうような、将棋の歴史の転換点になるような内容だった。

史上初の八冠達成

藤井八冠:
それ(八冠)を実現できたのも、まだまだ実感が湧かないというのが正直なところ

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11日、京都市内のホテルで行われた王座戦の第4局で、藤井聡太七冠(21)が永瀬拓矢王座(31)に勝利し、2017年に現行の八大タイトル戦になってから初となる全冠制覇を達成した。

一夜明け、藤井八冠は会見に臨み、思いを語った。
「追われる立場だが?」という記者の質問に対し、藤井八冠は「立場の違いなどは全くない。まだまだ伸びしろ、改善の余地は多いかなとは思っている。どうすれば実力を高めていけるのか、しっかり考えていきたい」と話した。

このニュースについては、元女流棋士の竹俣紅キャスターがお伝えする。
史上最年少の17歳11カ月で棋聖のタイトルを獲得して以来、わずか3年あまり、しかもタイトル戦で挑戦・防衛すべて成功してということで、圧倒的な強さを見せての偉業達成となった。

史上初の8つのタイトル独占から、一夜明けての会見の中では、藤井八冠は「まだまだ伸びしろ、改善の余地は本当に多い」「王座戦の第3・4局は、全体通して非常に苦しい将棋で、逆のスコアでもおかしくなかった」と語っていた。
八冠達成までの道のりの中で、素晴らしい指し回しをたくさん見せてくれたが、今回の王座戦に関しては、相手の作戦がうまくいってしまい、不利になるということが続いた。
藤井八冠としては、もっと高みを目指したいと思っているのではないか。

両者が「居玉」で戦う異例の事態に

11日の対局は、八冠達成という意味でもちろん歴史的だが、「将棋の常識」を変えてしまうような、将棋の歴史の転換点になるような内容だった。

ポイントは、2人が「居玉」で戦ったことだ。
将棋では、玉を最初の位置のままにしておくことを「居玉」という。
一般的には、玉は囲いを作って守ってあげないといけない、というのが将棋の常識だ。
ところが、この常識が変わるかもしれない。

11日の対局では、両者ともに玉が最初の位置のままだった。ボクシングで例えると、ノーガードで打ち合うという形になっていた。

王を危険な状態にしたのは早く戦いが始まったからだが、それでも異例なことだ。
将棋の基本として、「居玉は避けなきゃダメ!ちゃんと囲って!」と教わるもので、11日の将棋はあくまで“人間の枠を超えた人”同士の戦いのため、これから将棋を始めたい方は、絶対にマネしてはいけない。

記録にも、そして記憶にも残る歴史的な1局を制して、八冠全制覇を成し遂げた藤井八冠だが、8つのタイトルを防衛していくことも大変なことだ。

藤井八冠の前の全冠達成者で、長きに渡ってタイトルを保持した羽生九段でさえ、1996年2月に全冠達成後、同じ年の7月に棋聖のタイトルの防衛に失敗して、全冠制覇の状態だったのは167日間のみだった。

藤井八冠の怒濤の防衛戦ロードが、どれだけ大変なのか。カレンダーで見てみるとよくわかる。
既に、伊藤7段を挑戦者に迎えた竜王の防衛戦は始まっている。
そして、2024年1月には王将戦が予定されており、その後も1年通してずっと防衛戦を戦い続けていくことになる。
藤井八冠の防衛戦ロードの次なる対局である、竜王戦七番勝負の第2局は、17~18日に京都市で行われる。
(「イット!」 10月12日放送より)

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