岸田首相は、廃棄物を資源として再利用する「循環経済」に向け、企業経営者と意見交換した。

企業経営者らは、リサイクル率の向上の必要性を強調。専門家は、循環経済を新しい成長戦略として捉え、地域での産業横断で、ものを循環させることがカギだと指摘する。

“サーキュラーエコノミー”に向け意見交換

岸田首相は、廃棄物を資源として再利用し、経済の活性化につなげるサーキュラーエコノミー「循環経済」に向け、企業経営者らと意見交換をした。

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岸田首相:
(10月にまとめる)総合的な経済対策、その中にあっても、サーキュラーエコノミー(循環経済)に向けた産官学の取り組みで、すぐに実行できるものを盛り込ませていただきたい。

車座対話では、企業経営者らから「日本は、産業廃棄物以外のごみのリサイクル率が19パーセント。非常に勿体ない。ものを捨てるのが計画的でないことが、リサイクル材を安定的に販売する上で一番難しい」などの意見が出された。

これを受け岸田首相は、「持続可能な経済モデルを作ると、国際社会に広がっていく可能性がある。できるところから実行しなければならない」と述べた。

2050年には120兆円規模へ

「Live News α」では、デロイト・トーマツ・グループの松江英夫さんに話を聞いた。

堤 礼実 キャスター:
サーキュラーエコノミーに関する車座対話、松江さんも参加されたとのことですが、いかがでしたか。

デロイト・トーマツ・グループ 松江英夫さん:
日本はこれまでも、リサイクル意識は比較的高く取り組んできましたが、近年、世界中でCO2削減や生物多様性など、環境対応が不可避なのと、今後、電化が加速する中で原料となる重要鉱物などの資源調達リスクが高まるため、サーキュラーエコノミー(以下CE)の重要性が、より一層高まっています。

堤 礼実 キャスター:
こうした取り組みを加速させるためのポイントは、どういったところにあるでしょうか。

デロイト・トーマツ・グループ 松江英夫さん:
CEを本格化させるには、“新しい成長戦略”として捉える視点が重要です。

具体的に成長が期待されている分野は、環境に配慮した設計による新製品開発、資源再生業としての静脈産業の拡大(リサイクルからリソーシングへ)、中古品などの二次流通市場の活性化(リユース、メンテナンス等)です。

政府は、2020年に50兆円市場を、2030年に80兆円、2050年に120兆円の規模に拡大することを目指しています。その実現のカギを握るのが、「地域循環」です。

現状でリサイクルや廃棄物処理の担い手である地域が、動脈企業である製造業と、静脈である資源再生業をつなぐ、さらに企業や業界の縦割りの垣根を越えて、産業横断でものを循環させる“結び目”の役割を果たすことが求められます。

循環立国として“地域”から“海外”へ

堤 礼実 キャスター:
循環の輪が大きく回りだすといいですね。

デロイト・トーマツ・グループ 松江英夫さん:
今後は、地域を国内に閉じずに、“海外”にも広げていくことも重要です。

特に東南アジアは、廃棄物処理や再利用技術がまだ十分ではないため、日本が支援して広げてゆくことが有効です。

具体的には、電気電子機器分野での技術者を派遣し、中古品や廃棄物のリサイクルのパイロットプロジェクトが行われる予定もあります。

人口減少下の日本においては、物や人の“数”に依存せず、利用頻度を高める、そこで得られた情報(データ)から、新たなサービス生み出し、価値を高めるという「価値循環」の考え方が重要です。

地域とグローバルを結び付けながら、あらゆる資源(人・物・データ・金など)を循環させて成長に繋げる「循環立国」として、日本が発展してゆくことを期待します。

堤 礼実 キャスター:
資源の少ない日本にとって、資源循環の取り組みというのは、今後大きなカギとなりそうです。

こういった仕組みづくりを国が率先して行うことで、一人一人の意識の変化にも繋がり、さまざまな可能性が生まれることを期待したいです。
(「Live News α」10月11日放送より)

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