イスラム組織「ハマス」とイスラエルの武力衝突による犠牲者が1300人を超え、地政学的なリスクが高まっている。両者の“戦争状態”が長期化することで、原油価格高騰につながり、世界経済はもちろん、日本においてもガソリンや光熱費の高騰といった国民生活へのネガティブな影響が懸念される。

外国人も多数犠牲に

パレスチナ自治区ガザを実行支配するイスラム組織「ハマス」と、イスラエルの武力衝突により、双方の死者は1300人を超えた。    

「ハマス」が9日に公開した映像では、多くのロケット弾を備えた拠点から、イスラエルに向けて攻撃する様子が映されていた。

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一方、イスラエル・テルアビブでは、ハマスのロケット弾の直撃を受けて完全に倒壊した建物があった。その目の前でイスラエル市民に話を聞くと、「大きなショックを受けた。とても心が痛い」、「もっと大きなことが起こるだろう。こうなった以上すぐには収束しない」と悲しげな表情を見せた。

パレスチナ自治区ガザを実効支配する「ハマス」によるイスラエルへの攻撃と、それに対するイスラエルの報復攻撃によって、双方の死者は1300人を超えた。

地元メディアによると、これまでにイスラエル側で市民ら少なくとも800人が死亡し、外国人を含む100人以上がパレスチナ側に人質として連れ去られたという。

特にガザ地区との境界付近で行われていた音楽フェス会場では、「ハマス」の襲撃によって、約260人が死亡。

犠牲者の中には、外国人も含まれていて、タイ政府はハマスによる攻撃でタイ人12人が死亡し、ネパール政府は少なくとも10人のネパール人が死亡したと発表。アメリカ当局は、アメリカ人9人が死亡したとしている。

一方、ガザ地区に報復の空爆を続けるイスラエル軍。パレスチナ側のこれまでの死者は、子供を含む560人と伝えられている。

こうした中、イスラエル国防省は予備役30万人を召集。ガザ地区との境界線では、イスラエル軍の軍用車両が集結しており、地上戦への発展など、情勢の悪化が懸念されている。

原油生産量世界トップ5のイランがハマス側に?

「Live News α」では、エコノミストの崔真淑さんに話を聞いた。

堤 礼実 キャスター:
ハマスとイスラエルの武力衝突、心配ですね。

エコノミスト・崔真淑さん:
戦争状態が長期化することへの懸念が高まっている。

ハマス、パレスチナのガザ地区を実効支配するイスラム組織からの攻撃に対して、イスラエルは報復を行なった。

そして、アメリカがイスラエルを支援するため、空母を派遣したということで、事態が一気に収束するのか、それとも長期化するのか全く見えない状況。

そのため、マーケットの動きを見ても、互いの報復が深刻化することを懸念するような動きになっている。

堤 礼実 キャスター:
やはり、地政学的なリスクの高まりはマーケットにも、影響が出てきますよね。

エコノミスト・崔真淑さん:
大きなポイントは原油価格の動き。昨晩から急騰する動きになっている。

アメリカがイスラエルを支援する一方、ハマス側には、原油生産量で世界トップ5に入るイランの後ろ盾があるかもしれないと懸念されている。

アメリカとイランの外交関係がさらに悪化し、イランが西側諸国をけん制するために原油供給量を絞る可能性がある。

このリスクを受ける形で、供給減少に嫌気して原油価格が急上昇している。今後は、地政学リスクにも嫌気して、世界の株式市場が乱高下する可能性がある。

生活防衛意識がより高まる可能性

堤 礼実 キャスター:
私たちの暮らしへの影響については、いかがですか。

エコノミスト・崔真淑さん:
物価上昇の大部分は、原油価格の上昇と円安によるところが大きい。

このまま戦争状態が深刻化すると、原油価格が上昇していき、身の回りの物価も上昇し続けるかもしれない。岸田政権の目玉政策でもあるガソリン補助金に対してもさらに税金が投入される話になってくるかもしれない。

日本経済へのネガティブな影響が予想されるだけに、生活防衛意識がより高まる可能性がある。

堤 礼実 キャスター:
エネルギーの多くを海外に頼る日本にとって、この衝突がいつまで続くのか、他の勢力の介入などがカギとなりそうです。1日も早く、平穏な日々が訪れることを願います。
(「Live News α」10月9日放送分より)

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