北海道北見市にある、病院の扉に貼られた1枚の張り紙。

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「コロナ禍もあり、経営状態が悪化したため、これ以上の事業継続は困難と判断し、不本意ながら本日をもちまして全ての外来患者様の受け入れを停止させて頂くことになりました。」

病院の入り口に掲示された貼り紙
病院の入り口に掲示された貼り紙

病院の利用者によると、9月30日に突然この張り紙一枚が貼られて、外来患者の受付が停止されたといいます。

病院の利用者:
足と首の調子が悪くて2カ月に1回来てたんだけど、ゆうべニュースで見てびっくりして。

病院の利用者:
困っている、(新しい)病院探すにしたってね、困るよね。

50年以上の歴史を持つ病院が突然閉院

閉院したのは、市の中心部にあり、50年以上の歴史を持つ「北見中央病院」。

一般病床数は40床。内科や外科、整形外科など7つの診療科がある、市内では中堅規模の総合病院です。

これまでは、常勤医2人と複数の非常勤医で、1日に約90人の外来患者を診察してきました。

病院の前には、外来患者や入院患者の面会に来たと思わしき人の姿が。張り紙を見つめたまま、しばらく動かない人や、建物の前から病院に電話をする人も。

病院の利用者:
別にね、やめるような話も全然なかったし。22年くらいここ通ってたからね。ものすごいショック。(病院)どこに行ったらいいか分からなくて。

現在、病院の入口の扉は、鍵が閉められた上にパーティションが置かれ、中の様子を見ることはできません。

病院は、外来患者の診察を停止し、患者が別の医療機関で診察を受ける際に必要な書類の提供を行っていますが、今も入院している患者が10人ほどいるといいます。

入院患者の家族に話を聞くと…。

入院患者の家族:
もうちょっと前に教えていただければよかったですけど…。(家族が)まだ治っていないのに、どうしようと思って。

入院患者に関しても、病院側は転院の手続きを進めているということです。

前理事長語る経営悪化の背景「どなたも来ない」

閉院の原因を「経営悪化」としている、北見中央病院。帝国データバンクによると、北見中央病院の2022年8月期の年収入高は、2億5400万円。

コロナ禍前と比べると約6割減。一方で負債は、約4億5000万円に上っています。

なぜこれほど急激に、経営が傾いたのでしょうか?「めざまし8」は、今年3月まで理事長を務めていた男性を取材。経営が悪化した背景が見えてきました。

北見中央病院 石川寛 前理事長:
(コロナ前から)医師不足で、赤字になりますよね。その過程で、4年ほど前からのコロナ。うち(病院)は、ご老人が90%なんですよ、患者さん。ですから、「病院行ったら、(コロナが)うつるぞ」となったら、どなたも来ないんですよね。それで一気に、経営状況が悪くなりました。

患者の多くが高齢者である中で、コロナが直撃。受診を控える患者が相次いだため、一気に経営状態が悪化したと話す前理事長。

病院側は、入院患者の転院手続きが済み次第、裁判所に破産手続き開始の申し立てを行う方針です。

全国各地で相次ぐ「閉院」

北海道で起きた、地域医療を支える病院の突然の閉院。
医療ジャーナリストの田辺功氏によると、同様の事態は今、 全国各地で発生しているといいます。

医療ジャーナリスト 田辺功 氏:
赤字を抱えている病院というのは結構あると思います。コロナで7割の病院が赤字を出した。それで、ギリギリになって、パンクしてしまう病院はありえる。

めざまし8でも今年5月、突然閉院した都内の産婦人科医院を取材していました。

突然閉院した産婦人科医院 撮影:2023年5月
突然閉院した産婦人科医院 撮影:2023年5月

その際に取材した、当時妻が2カ月後の7月に出産を控えていた男性に、連絡を取ってみると…。

妻が出産を控えていた男性:
もうこちらとしても、一刻を争う事態だったので、新しい病院をですね。自分たちで自力で探して。で、そちらの方で分娩していただいて、無事に子供が生まれたという状況です。

なんとか自力で別の病院を探し、無事に出産を迎えることができたといいますが、病院側の対応に男性は納得がいっていないと話します。

妻が7月に出産を控えていた男性:
(閉院した)病院からは特別…、手紙が1枚かなり遅れて届いたっていうのが1回あっただけで。電話でとか、そういう謝罪の対応とかも特にはなくてですね。
妻も切迫早産の疑いがあるっていう診断を新しい病院の方で受けて、結局1カ月半ほど入院することになったので。 そういったところで、紙ぺら1枚の謝罪だと、こちらとしても納得がいかないと。

金子氏「大切なインフラを守らなくてはいけない」

帝国データバンクによると、今年8月までの医療機関の倒産件数は、17都道府県で23件。倒産の原因としては、コロナ禍での受診控えや、国などの支援策の減少があげられます。

医療ジャーナリストの田辺氏によると、今後倒産が増える可能性があるといい、これにより、医療を受けられない地域が出てくるという懸念も。

さらに、倒産の理由としては「経営者の高齢化」などもあげられますが、「めざまし8」のスタジオゲスト陣は、この「高齢化」という点を見逃してはいけないと話します。

フジテレビ解説員 風間晋 氏
フジテレビ解説員 風間晋 氏

フジテレビ解説員 風間晋 氏:
コロナの影響というのは、もちろん大きいと思っているのですが、それ以前に日本の、特に地方においては人口が本当にどんどん少なくなってきていて、そして高齢化が進んでいると。そういう基礎的な条件というのが、本当に進んでいると思うんです。
そういうのがやはり、個々の病院の経営というのを圧迫しているという大きな流れを、見逃してはいけないと思います。

金子恵美 氏
金子恵美 氏

金子恵美 氏:
急な閉院ということで、非常に対応を困られている方。今回のケースもそうだと思いますけど、医療機関の問題って地方には地方の問題があるんですよね。代表者の高齢化や経営者の後継者など事業承継がうまくいっていないということは、前々から言われていますが、それは個別の課題であると同時に、地方の慢性的な医師不足は、なかなか自助努力でどうにかなる問題ではないですよね。診療報酬もそうですけど。
大切なインフラを守らなくてはいけないと考えると、資金繰りの支援策というのは国の方でも考えなくてはいけないかなと思います。

(めざまし8 10月4日放送)