高知・田野町の塩づくり職人、田野屋塩二郎さんに弟子入りした移住夫婦が、独立後初めて作った塩が販売された。

3カ月から半年かけて天日塩を完成

安田町の海岸近くに2023年7月、3棟のハウスが完成した。

この記事の画像(14枚)

ここで海水を使って天日塩を作っている夫婦が、埼玉出身の「田野屋紫蘭」こと小坂英晃さん(42)と「田野屋白兎」こと千里さん(33)。200箱に入った海水をかき混ぜて天日干しに。その後、海水を足して再びかき混ぜる。この作業を繰り返し、3カ月から半年かけて天日塩を作り上げる。

「田野屋紫蘭」こと小坂英晃さん:
修業の当初、慣れないころは海水を混ぜても混ざりあわない。食紅やインクを垂らしてどれぐらいきれいに混ざるか練習した。均一に混ざらないと塩の品質も均一にならない

ハウスの温度は40度。夏場は70度まで上がる。

玉井アナは汗だくに…
玉井アナは汗だくに…

玉井新平アナウンサー:
ハウスに10分いただけで滝のような汗が全身から噴き出してきます。髪もびしょびしょ。まるでサウナ

暑さの中、毎日、日の出から日の入りまで塩づくりに取り組む。

「田野屋紫蘭」こと小坂英晃さん:
3年以上休みはとっていない。1日も

「田野屋白兎」こと 妻・千里さん:
半日以上外出できない。夫婦の片方が病院行くなら片方が必ず残って200箱面倒を見る

それでも、夫婦は幸せをかみしめている。

「田野屋白兎」こと 妻・千里さん:
最初は夫の夢から始まった。私はこうやって始めただけで幸せ

「公務員」から「塩職人」に

小坂さん夫婦はともに埼玉の春日部市役所で働いていた。

人生を変えたのは、塩二郎さんの塩づくりを紹介するテレビ放送だった。塩づくりに引かれ3年前、市役所を辞めて夫婦で田野町に移住して塩二郎さんの門をたたいた。

夫婦の師匠・田野屋塩二郎さん:
僕が出てるバラエティ番組とか見て簡単、面白い、もうかるのではという感じで来る人が多い。彼らはもう、公務員出身、「ザ・キッチリ!」。久々というか、初めての真面目な2人だった

修業から3年目。夫婦は2023年7月、安田町に4,000万円かけて製塩ハウスを建設。塩二郎さんから屋号をもらった。

夫婦の師匠・田野屋塩二郎さん:
「小坂英晃」改め「田野屋紫蘭」。「小坂千里」改め「田野屋白兎」

独立を果たした夫婦はここで、2種類の塩を作り上げた。1つは小粒でおにぎりや野菜に合う「万能」。

玉井アナウンサー:
普通の塩と全然違う。塩味だけじゃなく甘さも苦みもある複雑な味わい。まろやか

「田野屋紫蘭」こと小坂英晃さん:
角がない、塩味が強すぎない塩。より素材の味が際立つ

2つ目は、大粒でカツオのたたきや肉に合う「コクと余韻」。

玉井アナウンサー:
これは荒々しい。カツオと絶対マッチする。海をガンと味わっている。普通の塩のイメージを払拭(ふっしょく)する新たな味。天然の塩のパンチ。ノックアウトされてもうれしい

新たな名産として販売を開始

夫婦の努力の結晶を安田町の新たな名産として、「輝るぽーと」で初めて販売することになった。

「田野屋紫蘭」こと小坂英晃さん:
2人で修業も励まし合いながらやってきて、ようやくこの日を迎えられて私も感無量

販売開始と同時に早速、お客さんが買い求めていた。安芸市から訪れた人は「前に田野屋塩二郎さんの塩を食べたことがあって、すごくおいしかったから弟子の塩なら間違いないと思って」と期待を込めた。

20袋購入した地元の人は「知り合いに配ろうと思って楽しみに待っていた」と話し、どうやって食べたいかを子供に尋ねると「焼き鳥」と答えた。

安田町の塩職人として一歩を踏み出した小坂さんには、追い求める理想の塩があった。

「田野屋紫蘭」こと小坂英晃さん:
自分たちが塩に求めているのは、人と海の架け橋となる塩。素材の味を際立たせる塩。食べれば体にしみわたっていく、いつもの素材がワンランクアップするような塩をつくりたい

天日塩は、1袋100グラム入りがいずれも800円。小坂さんのサイト「田野屋紫蘭」や安田町の輝るぽーとで販売している。20グラム入り300円のお試しサイズもある。

(高知さんさんテレビ)

高知さんさんテレビ
高知さんさんテレビ

高知の最新ニュース、身近な話題、災害や事故の速報などを発信します。