サッカー・J2の第36節。甲府と対戦した清水エスパルスは勝利をつかみ首位追撃を狙ったが、スコアレスドローに終わった。秋葉監督は「能力の高い選手がハードワークすればおのずと勝てる。そうした気概を持ってほしい」と今後に向け練習に臨んだ。

反省いかしシュート練習繰り返す

“富士山ダービー”と称される第36節の甲府戦。自動昇格圏の2位に浮上して試合に臨んだエスパルスだったが、甲府の篠田監督の策略にはまりスコアレスドローに終わった。

とはいえ連続“負けなし”記録は14に伸ばし、これまでのクラブ記録を超えた。直近4試合は無失点が続き、秋葉監督は勝てないことを悲観するのではなく現況をポジティブにとらえている。

J1昇格に向けて互いにしのぎを削りあうJ2の終盤戦で“しびれる”試合が増えるのは各チームの指揮官にとって毎シーズン訪れる大きな悩みだが、こうした中で秋葉監督は以前「一段、ギアを上げる」と述べた。

無論、甲府相手にもギアを上げて挑んでいたに違いないが、前半は激しいハイプレスから主導権を奪われた。後半はペースを握り返して反撃したが、堅いディフェンスを前に勝ち点3を手にすることは出来なかった。試合後、秋葉監督は今後に向けて「学びとなる一戦だった」と口にした。

秋葉監督に言わせれば、エスパルスが得点をあげられなかった要因は「落ち着いて攻められなかったこと」。相手の裏を取ることが課題と認識したため、後半はシステムを3バックに変えてボールを支配し攻め続けたが、決定的な得点機は少なかった。

このため、今週の練習はシュートに関わるメニューを繰り返した。単純に相手の背後を狙うだけではなく、パスを戻して方向を変えたり、つなぎ直して攻める方向を変えたりなど選択肢を広げ、様々なパターンで仕掛ける反復練習だ。さらにメンタル面で心を静めてパスやシュートの精度が加われば、チームの目指す「超攻撃的・超アグレッシブ」が展開されるとの目論見だ。

次節で相まみえるのはエスパルスと同じベクトルの“超攻撃的なエンタテインメント・サッカー”の旗を降ろし、現実的な戦い方へとモデルチェンジしている藤枝MYFC。前回対戦した時のような一方的な戦いとはならないであろう“静岡ダービー”は、双方の指揮官の指導力と気持ちの強さが勝敗の行方をわけるであろう楽しみな一戦となる。

秋葉監督「反復練習で積み上げを」

清水エスパルス・秋葉忠宏 監督
清水エスパルス・秋葉忠宏 監督
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-今週の練習のポイント
清水エスパルス・秋葉忠宏 監督:
4試合連続で無失点と守備は安定してやれているが、0対0では勝ち点1しか得られない。勝ち点3を獲るためには集中力を上げてゴールに打ち込んだり、蹴り込んだりすることが必要。

急に上手くなることはない、反復練習で地道にコツコツと連携や精度を高めるため積み上げるしかない。最後を決めきるために「気概を持ってほしい」という思いを込めて、シュート練習を積んだ。藤枝戦を楽しみにしてもらいたい。

動き自体はオフ明けなのでまあまあだが、ボレーなどのミート率が悪かった。これは個人の技術の問題。相手どうこうでなく自分だけの問題。意識を持って取り組んで欲しいと感じた。能力の高い選手がハードワークすればおのずと勝てる。サボればそうはならない。そうした気概を持ってほしいという思いを込めて練習した。

-甲府戦を振り返って
清水エスパルス・秋葉忠宏 監督:
甲府はACLがあっても主力選手を温存して挑んできたが、点を取れれば自分たちが制することは出来たと思う。リスペクトしてくれていたかな、と。終盤を迎えてこういった試合もあると思う。

守備はよく無失点で、負けなしも14戦に伸ばした。この勝ち点1をどう活かすかが課題。そういったこともあると学びにしてくれた試合だと思う。

同じミスを繰り返さないよう短い時間で選手が修正していく。チャンピオンを目指す立場で、J1レベルでどうできるかという戦い方も意識している。選手同士がレベルの高い話し合いをしているのもいいこと。

ゲーム展開で強いて言えばもう少し攻め急がないでほしかった。一度逆に揺さぶってからとか、外への遊びを入れてからとか、フリーになっている選手も結構いたし、そこを見つける前にシュートしてしまったこともあったので。もっと冷静に精度を高めることが出来れば、続けていけば良い攻撃だと思った。入ろうとする流れとしてはよかった。これを続けていった方が良い。

共通意識を持って、焦らずに落ち着いてプレーすることがポイント。残り試合が迫っても「攻め急がない」「勝ち急がない」で、メンタル的な余裕やゆとりといったことが大事になる。

-直近数試合を上位陣に引き分けて調子を戻している藤枝について
清水エスパルス・秋葉忠宏 監督:
「超攻撃的なエンタテイメントサッカー」というところから、現実を見て随分変わってきたなという印象。ロングボールも蹴るし、前向きな守備を一生懸命にやるシーンも見えた。全員がハードワークするメンタル的にも強いチームで勢いもある。

彼らのホームで、いろいろ仕掛けてくると思うが“お付き合い”をせずに、こちらも前向きな姿勢を崩さずに相手をどう裏返すかやらなければならない。長いボールのケアも必要。

我々は、攻撃的なサッカーで攻守において主導権を握るサッカーを目指している。藤枝が方針を変える選択をしたのは、簡単なことではなかったと思う。選手がついて来ないリスクもあるし、それを決断して実行していることをリスペクトする。しかし、一歩も譲るつもりはない。攻撃の引き出しを増やす練習をしているし、自分の方が絶対に執念は強いと思っている。

鈴木義選手「失点しなければ負けない」

清水エスパルス・鈴木義宜 選手
清水エスパルス・鈴木義宜 選手

清水エスパルス・鈴木義宜 選手:
4試合連続無失点。失点しなければ負けることはない。引き続き6試合続けたい。ラインをコンパクトにするのはチームで奪いやすくする目的。細かなコントロールは自分の生きていく術。自分は特別足が速いわけではなく、身体能力が高いわけではないが、そこでの細かい駆け引きで優位性を保つのか自分の生命線、特徴ともいえる。

前にチャレンジするにはGKとの信頼関係もある。ボールがどこにあるかを的確に判断すること、特に相手選手がボールを置く位置を。甲府戦、ミドルシュートとしては危なかったのは1本だけで、あとは打たせている感じだった。後ろに権田選手がいることを考えながらやっている。これまで「取らなければいけないゲームを落としてきた」という認識なので、14試合負けなしはあまり意識していない。それよりこれから6試合の方が大事。

山原選手「何となくの攻撃では…」

清水エスパルス・山原怜音 選手
清水エスパルス・山原怜音 選手

清水エスパルス・山原怜音 選手:
甲府は、2022年の天皇杯王者でACL出場、また元エスパルスの篠田監督であり、スキのないチームでレベルの高い守備をしていた。これまで“何となく”だった攻撃では通用しないことは思い知らされた。

後半はサイドを広く使い、システムの改善を含め攻撃できるようになった。甲府は清水を知っていた。ただ我々はJ1を基準に考えていて、そうなればあんな守備は毎週ある。このままではJ1では通用しないと考えさせられるゲームだった。

藤枝は上位に良いゲームをして自信を持っているし、多分相当のプレッシャーをかけてくる。今週はそうした対策をした練習が上手くできたと思っている。

ホナウド選手「集中して入らないと…」

清水エスパルス・ホナウド 選手
清水エスパルス・ホナウド 選手

清水エスパルス・ホナウド 選手:
(2試合欠場したのは)練習中に痛めたが、今の状態は良いので試合にも出られる。金沢戦について良いリズムで出来たと外から見ていた。甲府戦は難しい試合になってしまった。篠田監督は我々の特徴をわかっていた。

これからの試合を大事にしたい。藤枝戦では今までやってきたことを続けたいと思う。ボールをもってコントロールすること。ジュビロ戦の前までに出来るだけ勝ち点を積み上げたい。前回の対戦は5対0で勝ったが、その時は自分たちの状態が良かったからで今はまた違って簡単にはいかない。集中して入らないと危険な試合になる、準備して臨みたい。

中山選手「期待して欲しい」

清水エスパルス・中山克広 選手
清水エスパルス・中山克広 選手

清水エスパルス・中山克広 選手:
甲府戦は途中出場で、ある程度チャンスを作れた。前半は手前でつないでいて、後半は背後を狙うよう修正出来た感じ。

藤枝はボールを持ちたいチームで、高い位置で押し込む時間が増えれば相手のチャンスを封じ込むことができる。今週はひたすらシュート練習をしてきた。自分自身もチームとしても、今回は入る気がする。盛り上げ方が出来ている。得点に飢えてはいるが、チームのために走って戦い、チャンスを作って、機会が来ればご褒美として決めたい。シュートは最後までボールを見極めることが大事だと意識付けすることができた。期待して欲しい。

(テレビ静岡 報道部スポーツ班・外岡哲)

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