「興味本位のクリックが思わぬ課金に」「子どもが知らぬ間に100万円を超える高額課金をしていた」。ゲームやインターネットをめぐるトラブルも増える中、トラブルや依存を防ぐために家庭での子どもとのルールは必要なのか。実際の家庭やインターネットを通じて寄せられた意見、専門家の声をもとに考える。

約束の時間になったらやめる「そんな簡単ではない」

中学1年と小学4年の子どもを育てる加藤さんは、以前はゲームなどの「使用時間」を決めていた。

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加藤真澄さん:
1人目(長女)のときは1時間なら1時間と決めてやっていた。できないと怒っていた。1時間怒ったり問い詰めたり、追い込んでしまった。それが良かったかというと逆で、隠れてしたり、わからない状況になってきて良くないなと。現実は厳しい

加藤真澄さん:
子どもが約束の時間になったらやめる、それができれば簡単。そんな簡単ではない。だから親がコントロールする。うちではそれしかないと思う

現在は、「宿題やご飯を済ませたら夜8時までは自由時間」としていて、時間を細かく区切らず、「ごほうび」要素を取り入れている。

自分で時間のことを考えるきっかけに

同じような家庭は少なくないようだ。FNNプライムオンラインでは以前「子どもとインターネットの関わり方」についての記事を掲載。

夏休み!外で遊んでほしいけど…子どもはゲーム三昧、ハマりすぎると“負の連鎖”も 作っておきたい「使用ルール

この記事にインターネットを通じて470件を超えるコメントが寄せられた(2023年8月末時点)。そのコメントを一部抜粋する。

・(ゲームは)朝ごはんを済ませ、歯磨きなども含め身支度整え、宿題も終わらせてからの午前の1時間、夏休みだから(ゲームは)いつもの倍しているが、自分で時間のことを考えるきっかけになっているようだ。

・ゲーム機がやってきて初めての夏休み。宿題をやってからゲームができる決まりですが、今までで最もスムーズに宿題がこなせています。

(Yahoo!ニュースのコメントより)

時間のコントロールに一定の手ごたえを感じる一方、課題もある。

仕事や家事をしながら内容を把握するのは難しく、興味本位で押したボタンが、予期せぬ「課金」につながるケースもあるようだ。

“無料”の言葉につられ…ついボタンを

加藤さんの次女・美和さんは、スマートフォンでゲームをしていた時、「無料」という言葉に惹かれ、ついついボタンを押して、料金が発生してしまったことを話してくれた。

次女・加藤美和さん(小学4年生)※2023年8月時点:
母親には秘密にしていたけど、次の日の夜に言った。ずっと不安な気持ちだった

加藤真澄さん:
これは彼女が悪いわけではない。よく言ってくれたなと。いい教訓、彼女にとってはいい学びになった。「無料って怖いよ」って。親子でいい経験になった

加藤さんの家では、現在、夫が単身赴任で不在のため、家事・育児はすべて真澄さんに任されている。日中は仕事もしているため、子どもを守るためにはある程度のルールは必要としながらも、厳しい制限を課すことは物理的にも精神的にも難しいと話す。

加藤真澄さん:
時間的にも制限も厳しくしないといけないけど、そうするためには管理しないといけない、親が時間を割いて付き添ってあげないといけない。ゆるいかもしれないけど、最低限のルールを子どもと守っていこうと

管理しようとするから、逆に子どもは反発?

一方、インターネット上で寄せられたコメントの中には「ルール・制限は必要ない」との意見もある。

・ルールを設けるなど、管理しようとするから、逆に子どもは反発してしまう

・言っても聞かないよ。自分で自覚して考える時がくるし、ほっておいてもいい

・やりたいことを好きなだけやる!!という体験は今しかできない。(勉強や習い事など)それらをちゃんとやっているなら他の時間は好きなことに使わせてあげてもいいと思います

・体を動かしたり、タイピングの練習をするものもある。ただ「制限」するのではなく有効に学習に繋げる方法は必ずあります

(Yahoo!ニュースのコメントより)

ただ、依存を防ぐためにも「ルールは必要」とする専門家もいる。

ゲームは「長時間」「頻繁に」利用させようとするもの

成蹊大学客員教授 ITジャーナリスト・高橋暁子さん:
ルールを決めなくても本当にできて、全く問題ないのであれば全然いいと思う。ルールを決めたほうがのちのち問題が起きにくいという色々な調査結果が出ている

ITジャーナリストの高橋暁子さんは、ゲームやネットは決して「悪」ではないとしたうえで警鐘を鳴らす。

成蹊大学客員教授 ITジャーナリスト・高橋暁子さん:
ゲームは「長時間」「頻繁に」利用させようとするものなので、多くの場合はひきずられて、うまくコントロールして使えない子が非常に多い。ゲームはよいもの。正しいからと言って子どもがゲーム依存になりやすいこと、ゲーム依存が重大な悪影響につながることは否定できない

長崎県内の小学生から高校生までの4,048人を対象にした長崎大学の調査では、7%にゲーム依存症のおそれがあるとされている(2022年調査)。

依存傾向にある子どもは、ゲームに費やす時間と金額が多いだけでなく、情緒や行動の問題、それに不登校に直面しているケースもあるという。

世界のゲーム市場の規模は20兆円を超え、“拡大を続ける”との見通しもあり「娯楽」の枠を超えて「日常」に近い存在となっている。その距離感は、夏休みなどの長期休暇を通してより近づくケースもある。さらに高橋さんは、予期せぬ「高額課金」にも注意を呼びかけている。

成蹊大学客員教授 ITジャーナリスト・高橋暁子さん:
100万、150万円単位で使いこんでしまった子どももいるが、その場合どうしたらいいかという相談が多い。課金できない制限にしている端末を使わせるなど、アカウントからログアウトしておく。不正に使ってしまった場合は、なるべく早く気づけるように領収メールやカードの明細を必ず確認することが必要

親子の会話を通してルールをアップデート

ゲームの中には「課金」をしたか・していないかが、外部からわかるものもあり、子どもが友達との間で「差別」や「孤独」を感じるケースもあるという。

高橋さんは「どんなゲームに夢中なのかなど、親子の会話を通してルールをアップデートすることで、お互いに納得できる状況になれるのでは」と話す。

家庭内でのゲームやインターネットの使用をめぐってはさまざまな意見やルールがある。家庭環境や状況によっても異なってくるだろう。

保護者が子どもと向き合い、コミュニケーションをとることが、子どもをトラブルから守る一歩と言えそうだ。

(テレビ長崎)

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