大阪地裁は9月27日の判決で、救済策で対象外とされた原告らの訴えの一部を認め、国や熊本県などに総額3億5,000万円余りの賠償を命じた。

水俣(みなまた)病特別措置法に基づく未認定患者の救済策を巡り、全国4つの裁判所で起こされた集団訴訟で、初めての司法判断だ。

水俣病特措法…地域や年代で対象外に

水俣病を巡っては、国と熊本県の責任を認め、従来の認定基準を事実上否定した2004年の水俣病関西訴訟・最高裁判決をきっかけに認定申請者が急増し、各地で訴訟が相次いだ。

この記事の画像(7枚)

こうした状況を受け、国は2009年に救済策として水俣病特別措置法を施行し、水俣病の最終解決を図った。

この特措法は未認定患者向けの救済策で、感覚障害があれば一時金210万円などを支給するもので、約5万5,000人が救済された。

その一方で、特措法は救済の対象を、認定患者が確認された水俣湾の周辺地域に1年以上住んだ人で、チッソが排水をやめた1969年11月末までに生まれた人に限定。

救済の対象外とされた人など1,700人余りが国などを相手取り、熊本、大阪、東京、新潟で集団訴訟を起こし、このうち大阪地裁で9月27日に判決の日を迎えた。

争点は対象を区切った基準の妥当性

裁判では、住んでいた地域や年代で救済の対象を区切った特措法の基準の妥当性などが争われた。

大阪地裁に訴えを起こしているのは、就職などで熊本や鹿児島から関西や東海地方などに移り住んだ128人だ。

「水俣病特有の感覚障害があるのに、地域や年代の線引きで救済されないのは不当だ」として、国と熊本県、原因企業のチッソに1人当たり450万円の損害賠償を求めている。これに対し、被告側は「原告が水俣病を発症する程度のメチル水銀の摂取はなかった」などとして、訴えを退けるよう求めていた。

「基準以外でも暴露認められる」

判決で大阪地裁の達野ゆき裁判長は、救済対象を限定した特措法の地域と年代の基準について、「この基準以外でもメチル水銀への暴露が認められる」と否定した。

その上で、原告全員について「不知火海の魚介類を多食したことによるメチル水銀への暴露が認められ、それにより感覚障害などの症状が生じた。全員が水俣病に罹患(りかん)している」と認定。

国や熊本県などに原告1人当たり275万円、総額3億5,200万円の賠償を命じた。

原告(大阪在住)前田芳枝さん(74):
勝訴判決をいただいて本当にうれしい。私たちはきょうの日を指折り数えて待っていた

原告弁護団・徳井義幸団長:
全員が水俣病だと認められました。当然のことながら“地域外の人も年代外の人も全員が水俣病だ”という判決です。非常に画期的な、水俣病の救済問題を大きく前進させる判決だと言っていいと思う

熊本訴訟・森正直原告団長:
“地域、年代の線引きは不当だ”と認めていただいて、大変うれしく思う。今回の判決は(2024年3月の)熊本地裁での判決にも弾みがつくと思う

国と熊本県「判決採用精査し対応検討」

一方、環境省と熊本県は今回の判決について「判決の内容を精査し、対応を検討する」とコメントしている。

特措法に基づく未認定患者の救済を巡り、初めての司法判断となった今回の裁判。今後、判決を迎える熊本や東京での裁判にどのような影響を与えるのか注目される。

(テレビ熊本)

テレビ熊本
テレビ熊本

熊本の最新ニュース、身近な話題、災害や事故の速報などを発信します。