東京電力・福島第一原発の処理水海洋放出で、先の見えない不安を抱える福島県の漁業。そこに希望の光となる一人の若者がやってきた。福島の海に魅せられた16歳が、一人前の漁師を目指し歩み始めている。
新人漁師は16歳
「興奮でいっぱい」と、これからの漁に胸を躍らせているのは16歳の原瑛貴さん。2023年4月に東京からやってきた新人の漁師だ。
この記事の画像(15枚)午前3時半 漁師の一日が始まる
「漁師になりたい」という原さんの思いを受け止め、共に生活を送っているのは、福島県相馬市で4代続く漁師・高橋一泰さん。
高橋さんは「最初の頃、起きるの大変なのかなって思ったけど、今は目覚ましかけて自分で起きてくる」と話す。高橋さんのサポートを受け、原さんは一人前の漁師への道を歩み始めている。
今の楽しみは漁に出ること
新たな生活を始めて半年。漁がない日は1人の時間が多く、物足りなさを感じることもあるというが…「普段は1人でゲームやっているので、漁行った方が面白いなって感じ」と話すように、今は何よりも漁に出ることを楽しみに生活している。
福島での釣りがきっけけ
漁師に憧れを持ったのは小学生の時。福島県に旅行し、釣りをしたのがきっかけだった。「釣った魚を見るのが好きで、それでどんどん魚が好きになって」と原さんはいう。
その時の思い出から、福島で漁師になりたいという気持ちが募り、その後、SNSを介し高橋さんとの出会いに繋がった。
若手育成は重要課題
東日本大震災以降、漁業の再建を願ってきた高橋さんにとって、原さんとの出会いは嬉しい出来事だった。高橋さんは「一番やらないとダメなのは、若手育成だと思う。そうしないと、どんどん人がいなくなっていって、地域の衰退に繋がっていく」
「漁師になりたいっていうだけでも貴重なのに、しかも いま大変な福島でやるっていう。俺も感動した」と語る。
福島の漁業 希望と不安
高橋さんのサポートを受け、着実に一人前の漁師として育っている原さん。次代を担う若手が育ち、希望もあるが懸念材料もある。
福島第一原発にたまる処理水の海洋放出から1ヵ月が経過し、価格に変動はないが漁業者は先の見えない不安を抱えている。
立ち止まってはいられない
漁を始めて30年、震災で漁の自粛を経験した高橋さんも不安な思いは同じ。しかし、そんな時だからこそ、原さんのような次代を担う若い漁業者のために「前を向き続ける」ことが大事だと考えている。
高橋一泰さん:我々は魚をとって消費者に届ける。安全なものは届ける。その使命だけで、ここで止まっても仕方ないから。若い人だって育てないとダメだし、地域盛り上げていかないとダメだと思います
「ここしかない」新人漁師の思い
そんな高橋さんの思いを、原さんはしっかりと受け止めている。「やっぱり辛いけど楽しい。もう、ここしかないみたいな感じ」と話す原さん。
海の魅力を教えてもらった福島で頑張る気持ちは、漁師になってより大きいものとなった。そして、新たな目標もできたという。
「高橋さんみたいな、いい漁師になりたいです」
東日本大震災に、それに伴う原発事故。そして処理水の海洋放出。福島の漁業者は常に「風評被害」という不安に直面している。しかし、逆風に負けず次世代へバトンは繋がっていた。
(福島テレビ)