「コロナ禍を乗り越えた国民は、今度は物価高に苦しんでいる」

26日の閣議でこう指摘して「今こそ成長の成果である税収増を国民に適切に還元すべきと考えている」と述べた岸田首相。その上で、25日夜に表明した、物価高対策・持続的賃上げ・国内投資促進など経済対策の5本柱を改めて示し、賃上げ税制の強化などを含めた具体的な対策を10月末をめどにとりまとめるよう、閣僚に指示した。

このニュースについて、政治部の高田圭太デスクが解説する。

「還元」という言葉に“こだわり”

岸田首相が掲げた「税収増を国民に適切に還元する」というのは、どういうことなのか。

この「還元」という言葉。関係者によると岸田首相の“こだわりの言葉”だったようだ。

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今、税収はコロナ禍からの景気回復や円安に伴う物価高などの影響で増えていて、昨年度の税収は71兆円と前の年度より4兆円も増えた。岸田首相としては、このお金を国民に還元して、暮らしを支え、経済の好循環につなげようということだ。

具体的には「物価高対策」「持続的な賃上げ」「国内投資促進」「人口減少対策」「国民の安全・安心」の5本柱。もともと賃上げと投資をまとめた4本柱だったが、それぞれを独立させて5本柱にしたもので、これに基づいてこれから具体策を決めていくことになる。

国民の暮らしには、どのように還元されるのか。

現時点で岸田首相が言及しているのは「燃料油や電気・ガス代の補助」「物価高に伴う地方交付金の追加」「賃上げを支援する減税制度の強化」「年収の壁を乗り越える支援策」で、これからさらにどのような対策が追加されるかがポイントとなる。

「増税」「バラマキ」と言われたくない…

この「還元」という言葉にこだわった裏で、実は岸田首相が今、言われたくない言葉があるという。

それが「増税」と「バラマキ」だ。

岸田政権でこれまで大きな増税は行われていないが、防衛費の増額に伴う増税を打ち出したり、政府の税制調査会の答申が「サラリーマン増税」と報じられた影響か、一部で岸田政権に増税というレッテルを貼る向きがある。

岸田首相はこの増税イメージを払拭したいということで、減税による還元を盛り込むことにこだわったようだ。

そしてもう一つ、岸田首相の家計支援策などについては「バラマキ」と批判する声もあり、岸田首相はこれも払拭したいようで、政府関係者も「ばらまけばいいということではなく、設備投資や研究開発など次のものを生み出せるところに還元するということだ」と強調している。

25日の記者会見で、「岸田政権では今後3年間を変革期間とし、集中的に取り組んでいくこととしています」と発言した岸田首相。今回の経済対策で目指す変革には3年間かかると言っていて、この対策のために3年は岸田政権を続けさせてくださいという思いがうかがえた。
(「イット!」 9月26日放送より)