被災した際に、支援や保険の申請に必要となる「り災証明・被災証明」。 不安を抱える中での生活再建のためにも、知っておいて損はない。
台風13号による雨で被害
2023年9月8日に福島県浜通りを襲った豪雨で、いわき市では10の河川の水があふれ、住宅街に濁流が押し寄せた。福島県によると、いわき市と南相馬市で確認された床上浸水は1200棟以上に上っている。
この記事の画像(15枚)支援に必要な「り災証明」
いわき市で9月11日から始まったのが「り災証明書」の申請受け付け。窓口は、被災した多くの市民で混雑していた。
り災証明書は、被災者が生活再建に向けて主に自治体のサービスを受けるために必要な書類。対象となるのは「住宅」で、申請に基づき現地調査が行われるが、水害の場合“床上の浸水の高さ”が「全壊」「半壊」など被害の判定に関わってくる。
いざとなると片付けに追われ…
自宅が浸水の被害に遭った根本佐知子さんは「り災証明書の申請は初めての事で、戸惑いがあった。例えば床上何センチが、床からなのか地上からなのか、そこが不安になった」と話す。
佐知子さんは、メジャーを使って浸水の高さを撮影したが「写真は撮らなくてはいけないんですけど、いざとなるとなかなか出来なかったりして、片づけに追われてしまった」と話す。
地震被害での「り災証明書」
一方自然災害は水害だけではない。福島県国見町では2022年3月の福島県沖地震で震度6強の揺れを観測。全世帯の3分の1にあたる住宅が被害に遭った。その時の「り災証明書」が役場に保管されている。
国見町・税務課の佐藤光男課長は「外壁のヒビ割れや内装のはがれは、どこの家にもあって、被害として本当に大きかった。まずはり災証明を出して、その後の支援につなげていけるように取り組まなければという思いで取り組んでいた」と振り返る。
写真があればスムーズに
地震による建物被害では「屋根・外壁・基礎」が、どのくらい壊れているかを調べ被害を認定。国見町では、職員などが申請を受けた住宅で現地調査を行い、2カ月ほどで、ほぼすべての”り災証明書”を発行した。
国見町の場合、本人確認ができる身分証だけで申請に写真は不要だったが、早期の修理を希望する場合は、写真を撮り記録を残しておくと調査がスムーズになるといいう。
建物4方向と被害部分で十分
写真は、建物を東西南北の4方向から撮影。全景と被害箇所のアップがそれぞれ1枚あれば十分だという。国見町・税務課の渡邊和巳さんは「発災して部屋が散乱した状態で1枚写真を撮って頂ければ、状況はわかる」と話す。
また家具や家電なども片付けをする前に撮影をしておくと、保険会社に損害保険を請求する時に役に立つ。
国見町・税務課の佐藤光男課長は「り災証明は、実務的には被害判定を証明するものだが、被害認定・判定によっては適用される行政サービスがあるので、役場まで足を運んでほしい」と話す。
り災と被災の違い
「り災証明書」は、建物にどの程度被害があったかを証明するもので、自治体の職員による現地調査が行われる。対象になるのは住宅。
一方の「被災証明書」は、被害を受けた事実を証明するもので、店舗や車・家財など住宅以外が対象で、こちらは現地調査は行われない。
「り災証明書」は、支援金の受け取りや税金や公共料金が減免の措置がとられた際に必要で「被災証明書」は、保険会社に損害保険を請求するときなどに役立つ。
災害の種類によって、被害状況が分かる写真を求めない自治体もあるが、支援や保険のことを考えると撮っておいて損はない。被災直後は混乱する状況だが、その後の生活のためにも被害状況の撮影を。
(福島テレビ)