成長が早く、放置すると増え過ぎて森林を荒らしてしまう「竹」。その竹を有効活用することで森林を保全しようと、高齢者のボランティアが地道な活動を続けている。子どもたちが自然を学ぶ体験学習の場も開かれた。
竹林のシニアボランティア
佐賀・基山町園部の竹林で竹を切っていたのは、NPO法人「かいろう基山」の代表、松原幸孝さん(72)だ。
この記事の画像(11枚)NPO法人 かいろう基山・松原幸孝さん:
毎日活動している団体は、全国の他の里山保全の団体でもないのではないか。それくらい稀有(けう)な団体
「かいろう基山」は、老いを楽しみながら地域貢献しようと2004年に設立された、主に森林整備に取り組むシニアボランティア団体だ。活動は火曜日から土曜日の午前中。65人の会員のうち主に14人が中心となって活動している。
NPO法人 かいろう基山・松原幸孝さん:
自分の空いた時間に体力とお金を使って奉仕してもらうので、強制はしません
この日、活動に参加したのは、松原さんと80代の元大工の男性の2人だった。
NPO法人 かいろう基山・松原幸孝さん:
大工さんだったので、本当にのこの使い方がうまい
「かいろう基山」が竹の伐採に力を入れるのには理由がある。
NPO法人 かいろう基山・松原幸孝さん:
本当は、平成20年度で会を閉じる予定だった。そんな時「あんたがこれから来るならもう1年やろうかな」と。みなさんの意見を聞いていたら、竹を切って山をきれいにすることは楽しいし面白いし役立つし、続けていきたいという声がとても多かったので
あっという間に成長する竹
竹は非常に繁殖力が強く、地中に伸びた地下茎からタケノコが出てきて3年目の地下茎が最もタケノコを産むと言われている。
また、節ごとに「成長点」があるため、この成長点が1日数cm伸びれば節の数ほど成長する。
ーーけっこう重労働ですね…?
NPO法人 かいろう基山・松原幸孝さん:
はい、すごいでしょ(笑)
あっという間に成長する竹のライフサイクルに人手が追いついておらず、枯れても撤去に手間がかかるため、森林が荒れ果てる原因となる。
元自衛官だった松原さんが保全活動に携わるようになったきっかけとは…。
NPO法人 かいろう基山・松原幸孝さん:
第二の人生は地域住民の方々のためにと漠然と考えていた。各県を回っていた時、高速道路から見る山々が孟宗竹(もうそうだけ)だらけだった。「困っているってこれか」と。まだ人生あるので、もっと社会のために役立てると保全活動に入るようになった
竹で食器づくり「体験学習」も
この日は、基山中学校の生徒5人が職場体験。
生徒たちは切り出した竹から炊飯器や器、箸を作る。この日は松原さん以外に5人のメンバーが参加した。
男性(70代):
週に1回、土曜日だけ来ている。福岡の和白から。片道1時間ちょっと、2時間かかることも。そういうこともあり、週に1回だけ遊ばせてもらっている
男性(70代):
だいたい毎日出ていたが、ことし(2023年)は異常気象でしょう。暑い時に老人が活動する状態でないと(松原さんに)散々悪口言っている(笑)
慣れないノコギリを扱う中学生をメンバーたちが指導していった。
自分たちで作った“竹の炊飯器”で炊いたご飯を食べながら、中学生たちは「すごくおいしい。“竹の炊飯器”を動かすのに苦労した」「みんなで食べるおいしさと自分で作ったうれしさがあり、そういうおいしさがあった」「竹で(ご飯)作ったのは初めてだったが、炊飯器で作った時みたいにおいしくできた」と感想を口にしていた。
知ってほしい…竹は“資源”
「かいろう基山」では他にも竹を細かく砕き、竹炭と家畜の排出物とを混ぜて堆肥を作ってホームページ上で販売するなど様々な活動に取り組んでいる。
NPO法人 かいろう基山・松原幸孝さん:
なんとか若い人を雇用できるようになりたい。その一歩として、竹が資源になるので竹の資源化事業を行っている。竹って資源になるんだと思ってくれる方々とか企業が出てきたなら、竹を求めて山に入ってくるので、より早く山がきれいになるのではと思っています
(サガテレビ)