横に寝かせると目をつぶり、赤ちゃんにそっくりな人形「ぽぽちゃん」。子どもの頃に遊んだ思い出がある人も多いかもしれない。
そんなぽぽちゃんについて、乳幼児玩具メーカーの「ピープル」が9月4日、公式サイトに「生産終了のお知らせ」を掲載したのだ。

ぽぽちゃんは、日本人の子どもの可愛らしさを理想化した新しい抱き人形として1996年に発売。
誕生のきっかけは、同社の創業者が一生懸命にぬいぐるみの世話をする孫を見て「親からもらった愛情を分けてあげているのではないか?」などと考え、妹がわりになる人形のアイデアを得たそうだ。
その特長は、「閉じるおめめ」「リアルな顔」「さらさらヘア」「体の大きさ」「プニプニお肌」「ふわふわボディ」。

これまでに風呂に入れられるタイプや、より小さな子ども向けの小柄なタイプなどラインナップを増やし、現在公式サイトには4タイプの「ぽぽちゃん」が紹介されている。
ちなみに2021年には「ぽぽちゃん25周年スペシャルサイト」を公開。発売開始から今までの累計販売数は約580万体だという。

同社が生産終了のお知らせを公開すると、SNSには感謝の声や思い出が続々と投稿された。
・ありがとう………
・フニフニの体たまらんくらい好きだった
・幼稚園までの大親友ぽぽちゃん…お疲れ様だ
・娘がお世話になりましたぁ
・ぽぽちゃんの公式ホームページ見て少し泣きそうになった
・今お持ちの方、どうか末永く大事にしてあげてください
・寂しくなるけどぽぽちゃん今までありがとう これからもうちの子は一緒に遊び続けるよ
現在「ぽぽちゃん」の販売は在庫限りとなっており、在庫状況は各取扱店に確認が必要という。
またアフターサービスは継続して行われ、購入から1年以内に不具合が起きた場合は、商品のレシートを用意してお客様相談係に連絡してほしいと案内している。
「最初に生産終了を聞いた時は絶対反対」
様々な惜しむ声が挙がっているが、なぜ生産終了を決断したのか?SNSの意見をどう受け止めているのか?ピープル株式会社のコーポレート広報チームに聞いてみた。
――なぜ生産を終了することになった?
昨年4月に弊社では「子どもの好奇心がはじける瞬間をつくりたい!」というパーパス(編集部注:目的、意図、意義などの意味)を制定しました。そのパーパスに基づいた経営判断が、今回の「ぽぽちゃんの生産終了」です。
ぽぽちゃんには社員一同、特別な思い入れがありますし、最初その話を聞いたときには絶対反対!でした。社長も何度も何度も悩んでいました。もちろん、ぽぽちゃんもお子様の大事な好奇心を満たす役割を持っています。
しかし、市場背景・競合の状況、売り場の確保をすること…
いつしかぽぽちゃんというロングセラー商品を維持するためには、子どもの好奇心を満たす以外のことに、会社として気にしなくてはいけないことが多くなっていたのも事実であり、新事業開発にむけてリソースを集中させるために、今回の決断となりました。
――もう生産は終了しているの?在庫はどのくらいある?
商品ごとに生産終了時期は異なりますが、誕生日やクリスマスなど、これからぽぽちゃんを購入いただける方にも手に取っていただけるよう、在庫は準備しております。
現在、生産終了の報道を受け、多くの方にぽぽちゃんをご購入いただいている状況につき、一部取扱店にて欠品となっているお店もございますが、順次入荷をしてまいりますので、ご安心いただければと思います。
――「ぽぽちゃん」は、どんなところにこだわってきた?
お顔、やわらかいお肌、寝ると目を閉じること、本物の赤ちゃんそっくりな見た目と抱き心地には発売当初時からこだわっています。
ぽぽちゃんを作る工程には手作業の部分も多く、たとえば前髪を切ったりするのは手作業だったり、よく見るとぽぽちゃんは1体1体違うように見えます。
――「ぽぽちゃん」にはどんな想いがある?
発売から27年経ち、昔ぽぽちゃんを遊んでいた子が入社してくれるなど、ピープル株式会社=「ぽぽちゃんの会社」という私たちピープルを代表する看板商品です。
私個人としては、おもちゃメーカーとしての、仕事の面白さ・難しさも含めて、入社から今まで、ぽぽちゃんに教えてもらったことが本当にたくさんあります。
ぽぽちゃんで得たことを糧に新しい挑戦
――SNSの反応には感謝や惜しむ声が出ているが、どう受け止めている?
今回の発表を受け、SNS上などで弊社の予想を大きく超える反響をいただいております。
「ぽぽちゃんありがとう!」のメッセージとぽぽちゃんとの心温まるエピソードを教えていただき、1件1件大切に読ませていただいております。熱いメッセージとぽぽちゃんとの写真を直接DMしてくださる方もいらっしゃるほど。
ぽぽちゃんはみなさんにとって、ただのお人形ではなくて、本当に家族の一員として大切にしていただけているのだなと、ぽぽちゃんを今まで販売してきて本当によかったと心から思いました。
――「これまで遊んでくれた子どもたち」に伝えたいことは?
このような決断となり、悲しい思いをさせてしまった方には大変申し訳なく思いますが、「生産終了になっても、ぽぽちゃんとの生活はこれからも続けていく」というコメントをみて、すごくうれしく思います。ご購入後のアフターサービスは引き続き行ってまいりますので、ご安心ください。
私たちはぽぽちゃんで得たことを糧に、子どもたちの好奇心に真摯に向き合い、好奇心むき出しで思う存分遊べる世界の実現にむけて、新しい挑戦をしていきたいと思っています。
本当にありがとうございました。

「いつか、大きくなって、ぽぽちゃんとは遊ばなくなる日がきても一緒に育んだ愛情、自分や他人を思いやる心がその後の人生を豊かにする助けとなりますように」
公式サイトには、ピープルの願いとしてこのような文章が掲載されている。「ぽぽちゃん」を店で見かけることは少なくなってしまうかもしれないが、いつまでも楽しい思い出を育んでほしい。