増え続ける「空き家」。長期間放置すると倒壊の危険があり、自治体が強制的に解体する「行政代執行」のケースも。空き家を増やさないためには「家の相続」について早めに話し合うことが重要だと専門家は指摘する。

危険性高く“強制的に解体”

屋根が隣の建物に寄りかかり、今にも倒れそうな住宅。台風などで倒壊の危険性が高い佐賀・小城市牛津町の空き家に、近隣住民は不安を口にした。

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近隣住民:
隣の家に寄りかかっているでしょう?あの時点で台風とか来たら破片がこっちに飛んでくるかも分からないので、早く壊してもらった方が

小城市は8月、強制的に解体に踏み切った。複数人いた相続人は次々と相続を放棄し、残る1人とは連絡が取れなくなっていたという。こうした「行政代執行」は今後、各地で増加するとみられている。

7軒に1軒が「空き家」

2018年の調査では、県内に空き家は5万300戸、7軒に1軒が空き家という結果に。

このうち2割以上の1万1,400戸が倒れたり崩れたりする可能性がある危険な状態、またはその一歩手前という状態。年内に発表される最新の調査では、その数がさらに増加する見込みだ。

井手解体の北方悠誠さん
井手解体の北方悠誠さん

県内を中心に空き家の解体などを請け負う企業は、ここ数カ月で問い合わせの件数が増えたと話す。

井手解体・北方悠誠さん
以前だったら月に1回くらいだったんですけど、8月になって週に1回くらいに増えてきています

背景にあると考えられるのが、2023年6月の法改正で新たに設けられた「管理不全空き家」。倒壊の危険はなくても、雑草が生い茂っていたりガラスにヒビが入っていたりして、管理が不十分な場合に指定される見込みだ。固定資産税の優遇措置の対象外になり、支払う税金は最大で6倍に増えることになる。

佐賀市の場合、市内の空き家全体の25%が該当するとみられている。

空家・空地活用サポートSAGAの塚原功さん
空家・空地活用サポートSAGAの塚原功さん

専門家は、危険な空き家の対応を行政に依存しすぎないことが導入の目的と話す。

NPO法人 空家・空地活用サポートSAGA 代表理事・塚原功さん:
いわゆる「管理不全」。危険な空き家の手前で、空き家をきっちり管理していこうと。これによって空き家対策を行おうというのが狙いです

改正法は年内にも施行される見通しだ。

「事故が起こる前に…」解体を決意

佐賀市大和町の男性は、30年以上家族で住んでいた家を解体すると決めた。

解体を決意した男性:
父が亡くなって3年くらいになるんですけど、住んでいないので維持管理が大変

建物に大きな損傷はなく、すぐにでも暮らせる状態だ。

住宅の解体を決めた男性
住宅の解体を決めた男性

解体を決意した男性:
改めて見て、思い出すことはあります。さみしいかなと

解体を悩んだ理由は、住宅への愛着のほかに税金の問題があった。住宅が建っていれば、土地にかかる税金が優遇され負担を減らすことができるが、解体後は優遇措置がなくなり税金を多く払うことになるためだ。

一方で、事故の危険性や周辺への影響を考えると、費用をかけてでも解体したいと考え、土地は売却することを決めた。

解体を決意した男性:
やはり傷みもありますし、無人なのでもし火事とかになったらご近所に迷惑をかけてしまうので、事故とかが起こる前に手放した方が良いのかなと

井手解体広報・北方悠誠さん:
長い間使われていなかった家財の分別作業はこちらでするので、早い段階で決めてもらった方が費用もかさみませんし、こちら側としてもやりやすい

家の相続「早めの話し合いを」

今回の法改正は、危険な空き家の対策として一定の効果が見込まれる一方、空き家の増加は課題として残る。専門家は家の相続を早めに話し合っておくことが最も重要だと話す。

NPO法人 空家・空地活用サポートSAGA 代表理事・塚原功さん:
例えば子どもさんを集めて「家については自分が死んだ後、長男にやる」と、そういう話をするだけでも違うと思うんですよね。この建物の所有者、例えばお父さんがなくなった時にどうするか決めておくことが一番大事です

(サガテレビ)

サガテレビ
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