150年以上の歴史がある「幅神楽(はばかぐら)」が9月9日、山形・舟形町の食の祭典“若鮎まつり”で4年ぶりに上演された。「僕たちが伝統を守る!」と使命感を持って演じた小学生と、地元の人たちの情熱に密着した。

世代を超え地域がつながる幅神楽

舟形町長沢の幅地区に伝わる「幅神楽」。演じるのは、小学5年生の阿部陸稔くんと伊藤大悟くん。地域から若者が減る中、子どもたちが郷土の伝統を守り継いでいる。

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緑豊かな幅地区。幅神楽は150年以上前、五穀豊穣などを願う奉納舞として根付いた。しかし、1960年ごろから出稼ぎなどで若者が減り、その後30年間は担い手がまったくいなくなった。

そこで望みを託したのが、地域の子どもたちだ。1988年、旧長沢小学校の新校舎落成をきっかけに、30年ぶりに復活した。

踊り手になれるのは5年生以上の男子だけ。神楽を通して、世代を超えて地域がつながり、子どもたちの成長が地域に元気を与えてきた。

おじいちゃんの思い・孫の決意

幅神楽保存会のメンバーは「みんなが幸せになるように踊るのが神楽だ。そういう心構えで練習する」と、陸稔くんと大悟くんに伝えた。

幅神楽保存会・伊藤太一さん:
技術的なことはもちろん、何のために神楽を踊るのかという目的・精神を子どもに受け継いでいってほしい

しかし、伝統を受け継ぐ子どもは減り続け、再び存続の危機にある。

幅神楽保存会・伊藤準悦会長:
この2人以外、小学生はいない。いなくなる。中学生までやってくれればあと5年は続くが…

大悟くんは幅神楽を「自分たちの“使命”であり、必ず務めなければならない“道”」と話す。そんな大悟くんのおじいちゃんでもある伊藤会長は、「特別な思い」を胸に孫の指導に臨んでいる。

大悟くんの母・さおりさん:
5年生にならないと舞うことができない中で、ようやく5年生になった年にコロナも明けた。おじいちゃんは「この子が大きくなったら自分が教えられるかな」と、ずっと言っていた。そういう思いも大悟が継承していけたらと思う

迎えた本番…晴れの舞台で躍動

そして本番当日。「祝いの舞いのはじまり~」のかけ声とともに、幅神楽の4年ぶりの公演が幕を開けた。

大悟くんの「後かぶり」はおじいちゃん
大悟くんの「後かぶり」はおじいちゃん

2人1組で踊る獅子舞。大悟くんの後ろにはおじいちゃんがいる。

幅神楽保存会・伊藤準悦会長:
大悟やんばいだぞ! その調子、その調子。よ~し、いいな~

晴れの舞台で陸稔くんと大悟くんは躍動した。

訪れた人は「素晴らしい。涙が出る」「伝統を守り継いで、舟形の良さをいつまでも残してほしい」と、2人の演舞をたたえた。

阿部陸稔くんは「宝物。ちゃんとできるようになりたいし、期待に応えて伝統をつなげていきたい」と今後の決意を語った。

町民の幸せを願う幅神楽。その歴史と伝統はこれからも後世に受け継がれる。

(さくらんぼテレビ)

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