材料の調達から生産、消費までを見直した、CO2の排出量が世界最少クラスのスニーカーが登場した。
この記事の画像(14枚)アシックス サステナビリティ部・荒井孝雄さん:
高品質と低CO2排出量というのを両立する。1足あたり1.95kgという市販のスニーカーの中で、世界最少のCO2排出量を実現できた。
2023年9月11日にアシックスが発表したのは、CO2排出量世界最少クラスを実現したスニーカー「GEL-LYTE III CM(ゲルライトスリーシーエム) 1.95」(価格は1万9800円・税込み)だ。
商品名にも含まれる「1.95」の数字は、このスニーカーを製造するにあたり排出されるライフサイクル全体のCO2の量「カーボンフットプリント」を表している。
1足分でCO2が8kg排出されていた従来品と比べ、約4分の1まで削減した。
このスニーカーの原材料調達では、さまざまなサステイナブル素材を採用している。
表生地に使用しているのは、リサイクルポリエステルだ。
ミッドソールと中敷きにはサトウキビ由来の原料など、複数のバイオポリマーを配合したサステイナブルでありながら品質を損なわないフォーム材を採用した。
製造工程では、テープを折り返しながら配置した補強構造を用いることで、本来靴紐を通す部分に使われていた無駄なパーツを削減した。
さらに、アシックスの特徴的デザイン、アシックスストライプ模様を刺しゅうで表現した。
モデルベースの従来品47パーツに対し、新商品では23パーツでの製造を可能にすることで、約50%パーツ削減を実現した。
ほかにも、製造工程における再生可能エネルギーの利用や、バイオ燃料を使った輸送、委託先工場でのリサイクル施策を行うなど、全体のCO2削減に力を入れている。
アシックス サステナビリティ部・荒井孝雄さん:
(目標として)2030年に2015年と比較して、CO2の排出量を63%削減と、2050年までに温室効果ガスの排出量を実質0にする。
その実現のために、今回のようなイノベーションを継続して起こしていく必要がある。
実際に、このシューズを見て手に取って履いて、我々が品質とサステイナビリティを両立しているポイントを実感していただければ。
環境への対応が商品選択を左右
「Live News α」では、一橋ビジネススクール教授の鈴木智子さんに話を聞いた。
堤 礼実 キャスター:
地球に優しいスニーカー、どうご覧になりますか。
一橋ビジネススクール教授・鈴木智子さん:
気候変動の影響を最も受ける分野の一つに、スポーツがあります。例えば暑さ。スポーツの勝敗や記録が気温に左右されます。
今、アシックスなどのスポーツアパレルブランドは、人はもちろん、地球の健康もケアする必要があります。
そして、アスリートたちが記録に挑戦するように、企業はサステイナブルな商品の開発にしのぎを削っていますが、これは将来の成長を左右する絶対に負けられない戦いでもあります。
堤 礼実 キャスター:
具体的にはどういうことでしょうか。
一橋ビジネススクール教授・鈴木智子さん:
スニーカーやスポーツアパレルの生産には多くの水やエネルギーを必要とし、また、その製造過程では化学薬品を使用するなど、環境に負荷を与えています。
さらに、靴のほとんどがリサイクルされず、ゴミとなって埋められていることも大きな問題です。
商品の持続可能性に関心を持つミレニアル世代の購買力が高まる中、環境への負荷に対応していないと、商品の選択から外されしまう可能性があるのです。
CO2世界最少は大きな一歩へ
堤 礼実 キャスター:
具体的には、どういった取り組みが行われているのでしょうか。
一橋ビジネススクール教授・鈴木智子さん:
例えば、NIKEは2008年以降にデザインされた、すべてのNIKE Airソールに廃棄物をリサイクルした素材を50%以上使い、製造には100%再生可能エネルギーを用いています。
いま、石油由来の素材の使用量を減らしたり、植物や天然ゴムからビーガンレザーを作ったりなど、エシカルな実践に力を入れるブランドが増えています。
そんななか、実はスニーカー分野で早くから持続可能な取り組みを行ってきた企業の一つが、アシックスなんです。
今回の「カーボンフットプリント」を見直したCO2排出量の世界最少クラスの実現は、地球の健康をケアする大きな一歩です。
サステイナブルなスニーカーが、クールなファッションとして広く受け止められるといいなと思います。
堤 礼実 キャスター:
今はまだ、多くの消費者がスニーカーに求めるのは、履き心地やデザインという方が多いかと思います。
ただ、靴は生活するうえで欠かせないものの一つですから、環境への負荷も考えなくてはなりません。
地球に優しいスニーカーというのが、商品選びで大きな要素になっていくのを期待したいです。
(「Live News α」9月11日放送分より)