香川県で子どもがゲームで遊ぶ時間を制限する「香川県ネット・ゲーム依存症対策条例」が4月から施行されたことは多くの人がご存じだろう。編集部でも以前取り上げているが、この条例はネットやゲームの依存症になることを防ぐためのもので、罰則はないものの18歳未満は平日のゲームは1日60分、休日は90分に制限するという。
(参照記事:「スマホとゲームは1日1時間」驚きの条例案が物議…その後「ゲームのみ」に修正した理由を香川県に聞いた
 

ところが今年は新型コロナウイルスの影響で学校が長く休みになった。条例により子どものゲーム時間は本当に減ったのだろうか?気になるその後を調べた意外な結果が公開された。

出典:株式会社ゲームエイジ総研

調査を行ったのは、ゲームビジネスに特化したマーケティングなどを行うゲームエイジ総研。情報提供を許可した全国約135万人のユーザーからスマートフォンゲームの利用状況を集計し、2月から4月にかけて週ごとのゲームプレイ時間を全国と香川県の10代で比較した。

調査開始時期の、2月初旬はクルーズ船のダイヤモンド・プリンセス号が横浜港に停泊し、連日のように集団感染が報道された。政府は2月27日に全国の小中高校と特別支援学校に対し、3月2日から春休みまで臨時休校を要請。さらに4月7日には東京など7都府県に緊急事態宣言を発令し、16日には対象地域を全国に拡大。5月14日に39県、25日に全国で解除されるまで休業する学校が多かった。

グラフを見ると全国の10代のゲーム時間は、2月から4月にかけてなだらかな上昇傾向を示している。
一方、香川県では3月2日または3日から学校が休業し、それに伴いゲーム時間が増加したが、4月1日の「香川県ネット・ゲーム依存症対策条例」施行に合わせるように一時減少するも、緊急事態宣言で急激に増加している。
この結果をゲームエイジ総研は「全国の10代と比較して香川県の10代のゲームプレイ時間が多いわけではなく、同程度であることがわかります。」とまとめている。
 

さらに調査では、香川県在住で高校生以下の子供を持つ親へのインタビューも行い、ゲームへの考え方を掘り下げている。その中では、自粛で自宅にいることで逆にゲームの時間が伸びた家庭もあること、条例より家庭で取り組むべき問題との意見があることなどを紹介し、もともとゲーム依存から子どもを守るために作られた条例について次のようにまとめている。
 

香川県の「ネット・ゲーム依存症対策条例」は依存防止のために利用時間を制限するという条例ですが、親や子供に“依存防止”の意識を持ってもらうための意味付けとして考えると、データでの実態や在住者の意見から見ると、それほど影響力は少ないのが実態のようです。

目指す“依存防止”という意図を伝える・意識してもらうには、どのようにゲームと向き合うか、ゲームを通じてどのような経験をするのか等、一律に時間制限をすることとはまた違ったアプローチの方法が考えられるのではないでしょうか。

新型コロナという不測の事態はあったが、この調査結果を香川県はどうとらえているのだろうか?また影響が少ないのなら、条例そのものを見直すことはないのか?
香川県の担当者に聞いてみた。
 

各家庭において、ルールづくりを行う契機になったのでは

――「ゲーム時間が伸びた」という調査をどう思う?“新型コロナ”の影響?

県としては、影響について把握していませんが、在宅時間が長くなったことで、インターネットやゲームに接することのできる時間は増えた可能性があるのではないかと考えられます。
 

――条例施行後はどんな変化があった?

条例の施行に関する報道等などを通し、各家庭において、スマートフォン等の利用に関するルールづくりを行う契機になったのではないかと考えます。
 

――ゲーム依存から子どもを守るという条例の効果はある?

施行後、間がなく、現時点では、効果について把握していません。
 

2年めどで検討し必要があれば必要な措置をとる

――効果の有り無しはどうやって調べる?

本条例の効果を直接把握するものではありませんが、県教育委員会では、従前から児童生徒等のスマートフォン等の利用に関する調査(スマホ等の所有率・利用方法・一日当たりの利用時間等)を実施しており、今後も本調査を実施することとしています。
 

――効果がなかったら条例はどうなる?

この条例は、ネット・ゲーム依存症対策の推進について、正しい知識の普及啓発や予防対策などの推進、医療提供体制の整備、相談支援、人材育成の推進など施策の基本となる事項を定めることにより、県、学校、保護者などが相互に連携を図りながら、ネット・ゲーム依存症対策を総合的かつ計画的に推進することで、次代を担う子どもたちの健やかな成長と県民が健全に暮らせる社会の実現に寄与することを目的にしています。

条例では、附則において、施行後2年をめどとして、条例の施行状況等を勘案し、検討が加えられ、必要があると認められるときは、その結果に基づいて必要な措置が講ぜられるものとされていますが、まずは、依存状態に陥ることを未然に防ぐための正しい知識の普及啓発や相談支援に加え、依存症となった場合の進行予防、再発予防のための適切な医療を提供できる人材の育成が重要であることから、効果的なネット・ゲーム依存対策を検討するなど、子ども・若者のネット・ゲーム依存対策に取り組んでまいりたいと考えています。
 

「ゲームは1日1時間」以外の対策は?

――調査会社は「時間制限とは違ったアプローチが考えられるのでは」と言っているが、どう思う?

ネット・ゲーム依存対策にあたっては、家庭や学校を含む社会全体で対応を行っていくこととしており、条例では、利用時間などの家庭におけるルール作りの目安だけではなく、県や学校、保護者、関連業務従事者等の責務を定めています

具体的には、依存症対策として、精神保健福祉センターや各保健所において相談支援を行うほか、県内医師等を対象に依存症の専門家を招いた研修会の開催や、依存症対策の全国拠点である、国立病院機構久里浜医療センターが主催する研修会への医療従事者等の派遣を実施するとともに、医療提供体制の充実を図るため、相談から回復に至るまでの方法をマニュアル化した回復プログラムを新たに作成し、その使用方法等について医療従事者等を対象にした研修会を開催したいと考えています。

条例の内容も十分踏まえながら、関係機関と連携して、効果的なネット・ゲーム依存対策を推進し、引き続き、国に対しても法整備、医療提供体制の充実などの対策の強化を求めるなど、この依存対策に取り組んでまいりたいと考えています。
 

――この条例はどんな方法で周知している?

ネット・ゲーム依存対策について説明した県民に向けたチラシ(現在作成中)を広報誌に折り込むなど、ゲームやインターネットに依存することに伴うリスクについて、広く県民の皆様に周知するとともに、ネット・ゲームに関する正しい知識や予防等に関する知識の普及啓発を図るための講演会を開催することとしています。
 

香川県からの回答は条例施行から2カ月半経った6月中頃に頂いたものだが、効果はまだ把握していないとし、ゲームエイジ総研の調査結果に直接言及することはなかった。

条例でゲームの時間を制限するということで物議をかもしたが、検討のめどとされる2年が経過するまでにはどんな効果が判明するのか、今後も注目していきたい。