泉佐野市がふるさと納税で逆転勝訴  

ビジネスの社会において「正直者がバカを見る」のはある程度しょうがないのかもしれない。グローバル企業がタックスヘイブンを使って法人税をちゃんと払わないことについて、「けしからん」と怒っても無駄だろう。民間企業の自由を奪いすぎると経済を壊してしまうからだ。

ただ「正直者がバカを見る」ようなことを「お上」がやってはいけない。

最高裁はふるさと納税で国が大阪府泉佐野市に対し、高額な返礼品で寄付を集めた過去の姿勢を基準に対象から除外したのは違法と判断した。

最高裁は「法改正前の寄付金の集め方を問題とする部分は違法で無効」と判断
最高裁は「法改正前の寄付金の集め方を問題とする部分は違法で無効」と判断
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ふるさと納税は返礼品競争が過激化したため昨年「返礼品は寄付額の3割以下の地場産品」に制度改正されたが、政府が泉佐野市の制度改正前の行為を理由に新しい制度から除外した事については当初から「法的根拠がない」との指摘が多かった。

日本人のモラルがぶっ壊れる  

だから最高裁判決は妥当なのだろう。だが民間企業ならともかく自治体が自分たちの金儲けのために平気な顔をして脱法的行為を行ってもいい、という判決はただでさえ最近アブなくなってきている我々日本人のモラルをぶっ壊してしまうのではないか。

泉佐野など一部の自治体以外のほとんどの自治体は国の強制力のない通知を守ったために正直者がバカを見た。

「主張を全面的に認めていただいてほっとしている」と語る市長
「主張を全面的に認めていただいてほっとしている」と語る市長

近江商人に笑われるぞ

僕の父方の曾祖父は近江商人だった。だから僕は「三方よし」という言葉が好きだ。「商売は売り手と買い手だけでなく社会に貢献しないといけない」という「三方よし」が近江商人の経営哲学だ。

泉佐野市の市長は逆転勝訴について「地方の自治にとって新しい一歩になる」と言ったそうだが、僕のひいおじいちゃんが聞いたら「ふん、お上がしょうもないことして金儲けて、なに威張ってんねん」とバカにするに違いない

【執筆:フジテレビ 解説委員 平井文夫】

平井文夫
平井文夫

言わねばならぬことを言う。神は細部に宿る。
フジテレビ報道局上席解説委員。1959年長崎市生まれ。82年フジテレビ入社。ワシントン特派員、編集長、政治部長、専任局長、「新報道2001」キャスター等を経て現職。