8月24日から始まった、福島第一原発にたまる処理水の海洋放出。中国が日本の水産物の輸入を全面的に禁止するなど、影響が広がる中、宮城県内の魚市場からは今後、漁獲量が増えた際の値下がりを懸念する声が聞かれている。

宮城県内の漁業にも大きな影響

多くの種類の魚が集まる石巻魚市場。8月29日の競りでは、処理水の海洋放出前とほぼ変わらない値がつけられた。

この記事の画像(9枚)

石巻魚市場の社長である佐々木茂樹さんは「国内の消費はトリチウムが不検出という結果が出たので、消費者のみなさんも安心しているのではないか」と話す。

こうした中、中国は日本の水産物の輸入を全面的に禁止に…。年間で870億円以上と、日本の水産物の輸出額1位だった、中国の禁輸措置は9月から底引き網漁が再開し、漁獲量が増加する、宮城県内の漁業にも大きな影響を及ぼすことになりそうだ。

佐々木さんは「量が多ければ国内で消費できない場合、海外に輸出する。中国も消費人口が多いですから、当然、全体的な面で魚の消費がなくなるので、値段についても下げる傾向が出てくると」懸念する。

この状況に漁師や買い付け人は…。

「漁業者だけの問題ではなくなってきているので大変ですよね。加工とか店の方も」と話すのは、石巻市雄勝で漁業を営む大和久男さんだ。

一方、買付人である「スイシン」の 色川朋彰さんは「この魚がストップするとか具体的に見えていない分もあるので、状況をみて、周りの仲買さんと話をして進めていきたい」としている。

そんな中、影響が大きく出ることが予想される魚介類が…。

今後、大きな価格変動が予想されているのが、中華食材として使われるカニやナマコなどだ。市場関係者からは値下がりが不安視されている。

石巻魚市場によると、ワタリガニやナマコは中国で高級食品とされ、漁獲量の多くを中国に輸出しています。特に11月に漁が解禁されるナマコは1キロあたり4000円の値がつくこともあり、石巻魚市場では年間で約100トン、3億円ほどを取り引きしている。影響はどこまで広がるのか…まだ見通せない。

石巻魚市場の佐々木さん(前出)は「政府に対しては中国との関係を改善してもらって一刻も早く禁輸措置を解除してもらうように速やかな対応をとってもらいたい。それにあわせて国内消費を一層喚起するような対策をとって、水産物の消費・流通について円滑に進めるようにしてほしい」と訴える。

「嫌がらせ電話」相次ぐ

中国の禁輸措置は大きな影響を及ぼすことになりそう。こうした中、中国からとみられる「嫌がらせ電話」が相次いでいる問題で、8月29日、仙台市の郡市長は、28日までに、区役所や東京事務所にもあわせて約60件かかってきたことを明らかにした。

(仙台放送)

仙台放送
仙台放送

宮城の最新ニュース、身近な話題、災害や事故の速報などを発信します。