100年以上前に小学校の校舎として建てられた木造の建築物が今も現役の市役所庁舎として利用されていることをご存じだろうか?まるでタイムスリップしたかのような、そのたたずまいは、SNS上でも話題となった。

明治時代に建築された校舎を市役所に

トンネルを抜けた先に建つ、この建物…。時間を巻き戻したかのような屋根と外壁…「気仙沼市役所第二庁舎」である。

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木造2階建ての建物は、いまも現役の市役所庁舎として使われている。そのたたずまいにSNS上では、「味があるとかのレベルじゃない。尊敬する」「中に入った途端、年号が大正とか明治になったりしませんか?」「用事無くても見に行きたい」などと書き込みがあり、話題となった。

「気仙沼市役所第二庁舎」が建てられたのは、明治時代の1909年。小学校の校舎として建築された。

今は「土木課」、「都市計画課」、「財産管理課」の3つの課が入り、51人の職員が働いている。小学校が移転した後は「気仙沼高等女学校」「気仙沼女子高校」。そして「鼎が浦高校」などと、時代に合わせて役割を変え、1969年からは現在の市役所の分庁舎に。

気仙沼市財産管理課 菅野真一さん:
東日本大震災では応援職員の方々に来て頂いたこともあり、本庁舎だけでは手狭だった。これまで使用し続けてきた。

学校だった面影が今も色濃く残っている。ガラガラと音を立てるガラス窓…かつて子供たちのにぎやかな声が響いていた昇降口。天井の雨漏りは長い歴史を積み重ねてきた証。これまで一回も大規模な改修はしておらず屋根などは当時のまま。

気仙沼市財産管理課 菅野真一さん:
壁とかサッシについては、当時(明治時代)のままなのかなというところで、タイムスリップしたような感じになるのかなと思います。

新しい環境へ

この建物で、社会人生活をスタートさせた笠原健太郎さん。勤務して2年が経つ。

財産管理課(入庁2年目) 笠原健太郎さん:
最初はやっぱりびっくりはしましたけれども、だいぶ今はもう慣れて…最近は特に何も思わなくなっています。「エアコンが無い」「夏暑いのでは」という話もあると思うんですけど、まあそんなに悪い環境ではないということは伝えておきたいと思います。

最初は戸惑いもありつつ今はすっかり第二庁舎での仕事を満喫している笠原さん。その一方で今、心待ちにしていることがあると言う。

財産管理課(入庁2年目) 笠原健太郎さん:
造りもこういう教室みたいなつくりじゃなくて、完全に開けた空間になるので、天井も広くなると思いますし、新しい環境は楽しみですね。

笠原さんのいう「新しい環境」…それは現在、計画が進められている気仙沼市役所の新庁舎のこと。実は気仙沼市役所の本庁舎も、宮城県内の自治体のメインの庁舎としては最も古い築63年が経過。そこでは市は約100億円の事業費をかけ2027年度の完成・移転を計画していて、それに伴い第二庁舎も半世紀以上に渡った行政庁舎としての役目を終える。

今後利活用について議論しながら、周辺のまちづくりの一環として第二庁舎の利活用を検討していく予定だという。

市では歴史的な価値の観点から建物を取り壊さず、まちの賑わい創出に向けて活用できないか官民連携で検討するとしているが、現時点で方針は白紙。戦争や東日本大震災などを乗り越え、1世紀以上に渡り、何度も生まれ変わりながら市民と共に歩んできた第二庁舎。その歩みはまだこれからも続きそうだ。

(仙台放送)

仙台放送
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