菅さんと岸田さんはよく頑張った
東京電力福島第1原発の処理水が24日に海に放出された。これを2年前に決めた菅義偉前首相、そして実行に移した岸田文雄現首相の2人の政治家はよく頑張ったと思う。これは評価したい。
中国は日本の水産品を全面禁輸すると発表したが、騒いでいるのは事実上中国だけだ。ロシアはウクライナで中国に加勢してもらっているので一応付き合って情報開示を求めたりしているが、実はあまり関心がある風ではない。
この記事の画像(3枚)放出について日本政府はIAEAのお墨付きをもらったので、欧米やアジア各国が日本に理解を示したのは当然だが、韓国が中国に追随しなかったのは大きかった。
韓国の野党は騒いでいるが、尹錫悦大統領は筋を通した。韓国政府のコメントは「(放出を)支持はしないが、科学的、技術的な問題はない」というもので、中国はさぞかしガッカリしただろう。これは岸田政権の対韓外交の成果だ。
風評被害を起こしているのは中国なのか?
海外が中国を除いて冷静なのに比べて、日本国内での一部野党やメディアの反応はやや過剰ではないか。
立憲の岡田幹事長は「安全性について何か問題があるという立場には立っていない」としながらも、「関係者の理解なしにはいかなる処分も行わないという約束が守られたかという観点からみるとそうはとても言えない」と批判した。共産の小池書記局長も「完全な約束違反」と、立憲とほぼ同じことを言っている。
メディアも同様で「処理水放出、科学的根拠だけでいいのか」(毎日)や「科学を隠れみのにするな」(日経)などの記事をいくつか読んだが、私は非科学的に物事を決めてはいけないと思う。
ちなみに立憲と共産が言っている「関係者との約束」なのだが、全国漁業協同組合連合会(全漁連)の会長は「(放出に)依然として反対」としながらも、「科学的な安全性には理解を深めてきている」として「唯一の望みは、平穏に漁業を続けていくこと」と述べている。
ホタテを食べて日本の水産業を守ろう!
これは、できれば放出はしてほしくないが、風評被害を最小化しながら、政府や東電による補償も併せて、前に進もうという事ではないのか。科学的には正しいが関係者の理解が得られないから処理水の放出はするなという野党やメディアの主張とは少し違うと思う。
中国は実はこの件で国際的に孤立しているが、日本の一部野党やメディアの「放出反対」の論調に背中を押してもらって、強硬姿勢を変えないという構図になってしまっている。だとしたら風評被害を生み出しているのは実は中国ではなく日本自身ということになる。実におかしな話だ。
中国への水産物への輸出は北海道のホタテが多いらしい。我々がやるべき事は自分の国をおとしめるのではなくて、福島の魚だけでなく北海道のホタテもたくさん食べて、日本の水産業を応援することだと思う。
【執筆:フジテレビ上席解説委員 平井文夫】