三重・桑名市で行われている伝統の「上げ馬神事」。
この歴史ある行事に、約2400件もの苦情が寄せられる事態となり、波紋が広がっている。

きっかけは“骨折馬1頭の殺処分”

手拍子をする観客の間を猛スピードで駆け抜け、高さ約2メートルの壁を飛び越えようとする馬が見どころの伝統行事「上げ馬神事」。なぜ多くの苦情が寄せられることになったのだろうか。

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毎年5月、三重・桑名市の多度大社で行われる伝統行事「上げ馬神事」。
馬が急な坂を駆け上がり、一番上の壁を乗り越えた回数で、その年の農作物の吉凶を占うというもの。県の無形文化財にも指定される地元で長く愛されてきた伝統行事に、多くの批判が寄せられる事態となった。

きっかけは、2023年5月に行われた神事で、骨折した馬1頭が殺処分となったことだった。

「今の時代にそぐわない。神事を廃止するべき」
「続けるのであれば、改善すべきだ」

市によると、18日までに電話で300件、メールで900件、手紙で1200件の計約2400件の苦情が寄せられたという。多くは県外からの苦情だが、一方で「伝統ある神事などで続けてほしい」という声もあるという。

17日、事態を重く受け止めた三重県の教育委員会は、多度大社に改善を求める勧告を出した。その内容は、馬を威嚇する行為をやめ、人も馬もケガをしない環境を整備するよう求めるものだった。

三重県の福永和伸教育長は17日の会見で、「例えば助走路のところが、馬が走るには硬いような状況になっているのではないかとか、馬術競技よりも高いところを跳ばせているのは、さすがに過酷じゃないかとか、やはりこのままではまずいと。社会の考え方に合ってない部分もあるので改善をしてほしい」と語った。

「(全部)豊作なっちゃうよね」地元民も複雑な心境

700年近く続く伝統行事に、毎年祭りを楽しみにしている地元の人も複雑な心境を隠せない。

「よそから来た人はやっぱり言う人いるね。『かわいそう』とか『怖い』とか…今は馬をたたいたりすることはなくなったし…うーん、それが動物虐待って言われてね…。2メートルの(土壁を)もっと低くするか…、どの馬もスッと上がっちゃうよね。(全部)豊作なっちゃうよね」と

県の改善勧告を受け、多度大社は「動物愛護に関する法律や人馬、参加者の安全を考えて、より一層の改善を進めていく」と神事のあり方を見直す考えを示した。

多度大社は、8月中にも改善策を県に報告する方針だ。

(「イット!」 8月18日放送より)

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