藤井聡太七冠が王位戦で初黒星となる中、同年代の伊藤匠七段が竜王戦の挑戦者に決定した。

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藤井七冠の八冠全制覇への道について、元女流棋士の竹俣紅キャスターがお伝えする。

王位戦ストレート防衛とならず

8月16日「王位戦」七番勝負の第4局が行われ、挑戦者の佐々木大地七段がここまで3連勝で、防衛に王手をかけていた藤井聡太七冠に85手で勝利。藤井七冠のストレート防衛とはならなかった。

敗れた藤井七冠は対局後、次のように語った。

藤井七冠:
課題が多い内容だったので、立て直せるように頑張りたい

16日は、藤井七冠らしくないミスがあって負けてしまったが、8月22・23日に王位戦の第5局、そして、今月31日には残る唯一のタイトルである、王座戦が始まる。

さらに、10月には「竜王」のタイトルの防衛戦も始まる。

ついに登り詰めてきた同学年ライバル

2018年2月、朝日杯での対局を振り返る。

15歳だった当時五段の藤井七冠が、当時竜王だった羽生九段や広瀬八段に勝利して、一般棋戦の最年少優勝記録を塗り替えた注目の一戦となった。

この中に、今回竜王戦で対局する同年代の難敵がいた。対局の横で記録をする、記録係の人物は、藤井七冠と同学年の伊藤匠七段だ。

この伊藤七段が、3日前に今回の竜王戦で挑戦者に決まり、藤井七冠と竜王のタイトルを争うことになった。

関東の将棋界の人からすると「ついに来たか!待っていた」といった感じだという。

5年半前、日本中が注目する最年少棋士と記録係で、プロ棋士になったのは藤井七冠から4年遅れの2020年10月と、大きな差があった。

この2人のタイトル戦をいつかみたいという将棋ファンはたくさんいたが、まだ先の将来の話と思われていた。

しかし、早くも実現する形になった。しかも、史上稀に見る下克上を制していた。

竜王戦の挑戦権をかけたトーナメント表を見ると、伊藤七段は1~6組まであるランキング戦で下から2番目の5組優勝に上がってきた。前期挑戦者の広瀬八段などに5連勝で挑戦者決定戦に駒を進め、決定戦でも、藤井七冠が唯一タイトルを持っていない永瀬王座に連勝した。

5・6組から勝ち上がって竜王挑戦を決めたのは、今回が史上初の快挙となった。

さらに、実は藤井七冠がトーナメント開始前に新聞社のインタビューの中で「この中で誰と対局したいか」を問われた際に、こう答えていた。

藤井七冠:
あえて選ぶなら伊藤六段(当時)でしょうか。自分と同世代ですが、棋風的にはかなり違う将棋を指されるので、長い持ち時間で対局したらどうなるか楽しみです

こう話すなど、藤井七冠も伊藤七段を意識している。

そして、2人の2023年度の戦績だが、伊藤七段は18勝2敗。対する藤井七冠は17勝4敗。藤井七冠はタイトル戦を戦っており、単純には比較出来ないが、勝利数・勝率、共に藤井七冠を上回っている。

また、藤井七冠は2016年のデビュー以来4年連続で勝率1位だったが、2021年度にその連続記録を阻んだのも、伊藤七段(当時五段)だった。

竜王戦七番勝負は10月6日から始まる。

(「イット!」 8月17日放送より)

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