世界の強豪が集うネーションズリーグで銅メダルを獲得し、46年ぶりに主要国際大会での表彰台に立ったバレーボール男子日本代表。
この快進撃を守備で支えた選手が、ミドルブロッカーの髙橋健太郎(28)だ。

今の日本代表はディフェンス力が最大の武器。髙橋はネーションズリーグでもブロックポイント6を記録するなど、ここ一番で器用されるワンポイントブロッカーとして、今やチームになくてはならない存在となっている。
そんな髙橋がパリを目指す理由には、ある人への誓いがあった。

「僕にとってすごく大事な人ですし、今回の銅メダル獲得も藤井さんに良い報告ができたかなと思います」
代表選出も活躍できず 東京五輪も夢に
髙橋がニッポン代表に初選出されたのは、石川祐希と同じ2015年。
チームのエースに成長していく石川に対し、髙橋はコートの外で見守る日々を送っていた。当時の胸中を語る。

「技術が追いついていない中、注目されたのは自分を苦しめました」
その後、度重なる怪我にも悩まされ、目標だった東京オリンピックの舞台にも立つことができなかった。

「東京オリンピックは僕のバレーボールの全て。目標が見つからなかったので辞めようかと思ったし、言葉が見つからなかったです」
「お前は大丈夫だ」支えてくれた師匠
失意のどん底…バレーボールから離れようと考えていた時、折れかけた心を繋ぎとめたのは、東京オリンピックに出場したセッターの藤井直伸さんだ。
「常にお前は大丈夫だと言い続けてくれて、僕の兄のような存在ですし、゛兄でありお袋”であるような感じですかね」

日本代表、そしてVリーグでも同じチーム・東レアローズでプレー。藤井さんはコートの外でも後輩の髙橋をずっと気にかけてくれていた。
「藤井さんが僕のメンター(師匠)だったので、僕は結構弱音を吐くし、『結果を残せばまた求められるから。今ある場所で自ら技を磨いていけば、また求められるからお前は大丈夫だから』ってすごく言われました」
藤井さんの言葉で戦う魂に火がついた髙橋。

東京オリンピック後のVリーグ2021-2022シーズンでは、ブロック賞、ベスト6、フェアプレー賞を獲得した。
憧れの夢舞台パリへ。今度は、支えてくれた、藤井さんと共に。
その矢先。
師匠を襲った病魔 それでもパリへ
2022年2月、藤井さんを突然の病が襲った。
胃がん、ステージ4だった。
髙橋は当時を振り返る。

「藤井さんはものすごく人間的に強いので、『絶対コートに帰ってくるよ』っていうのが合言葉みたいな。僕は藤井さんを待っているんだよっていう、それを励みにして絶対病気に勝ってくれよって言っていたので」
抗がん剤による壮絶な治療。
そんな中でも藤井さんは、髙橋に前向きな言葉をかけ続けてくれたという。
「藤井さんの弱音を聞くよりも、僕の弱音を藤井さんに聞いてもらうみたいな。毎回毎回、試合終わった後に連絡して、あのプレーがだめだったって言ったら、『お前は最強なんだから大丈夫だよ』と藤井さんに言われていて」
絶対コートに帰ってくる。
また、藤井さんと一緒のコートで戦うことを信じて。
師匠への誓いと思いを胸に
しかし、髙橋の願いが叶うことはなかった。
2023年3月10日
藤井直伸 享年31
髙橋が込めた誓いがある。
「常に藤井さんは近くにいると思っているので。だから藤井さんと一緒に、藤井さんもパリオリンピックに出たかっただろうし、藤井さんの思いも背負って頑張っていきたいです」

髙橋がSNSに投稿する際に必ず付ける言葉がある。
「ずっと藤井さんと一緒だっていう思いを込めて、風化させたくないっていう部分もありますし、そういう意味でずっと付けています。』

「藤井さんがやりたかった人生。彼にすごく人として学ばせてもらったので、 恥ずかしいプレーはできないし、簡単にあきらめるようなこともできないし、彼のために行けるところまで行きたいなと思います」
同じコートに立てなくても。
『心は一つ』
支えてくれた心の師匠への思いを胸に、髙橋はパリへの戦いに挑む。
FIVBパリ五輪予選/ワールドカップバレー2023
日本戦全戦をフジテレビ系独占中継!
女子大会 9月16日(土)-9月24日(日)
男子大会 9月30日(土)-10月8日(日)
東京・国立代々木競技場 第一体育館にて開催