夏休みシーズン、観光地で活用の動きが広がっている電動キックボード。一方、海外ではルールの厳格化も進んでいる。

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経済部の岩田真由子記者がお伝えする。

観光地などで活用広がる

最近では、電動キックボードの使用は、街中でもよく見るお馴染みの光景だ。約1カ月前の7月1日には道路交通法が改正され、16歳以上であれば免許不要で乗ることが可能になった。これにより、電動キックボードを利用できる人が増加した。

しかし、使い方が分からない方も多いということで、コンビニ大手のファミリーマートでは、7日に電動キックボードのレンタル事業を運営する「LUUP」と共同で安全運転講習会を開催した。コンビニでは初めてとなる試みだ。

ファミリーマートは貸出場所を店舗に設置することで来店する動機につなげ、買い物客を増やしたい狙いだ。実際に7月から設置した店舗では、売り上げが前の月と比べて伸びたという。2023年度中に、貸出場所を全国100店舗に拡大する方針だ。

そんな電動キックボードだが、夏休みに入り、観光地でも活用の動きが広がっている。8月から鳥取砂丘では、観光客に対して電動キックボードを貸し出す実証実験が始まっている。

「駅から目的地が遠い」「短時間で複数の場所を回りたい」といった地方観光の課題解決を目指すことが目的だ。ハンドル部分についているQRコードを携帯電話で読み込み、クレジットカードなどの情報を登録すれば、1時間1000円からレンタル可能だ。

その他にも、羽田空港周辺や神奈川県の湘南エリア、長野県の松本城の周りなど、観光地で続々と取り入れられている。

世界各地の観光名所でも…

さらに、世界各地の観光地では日本よりも早く電動キックボードが活用されている。

イタリア・ローマの世界遺産コロッセオの前や、ドイツ・ベルリンのシンボルであるブランデンブルク門、フランス・パリのシャンゼリゼ通りなどで活用されている。

その使用用途もさまざまで、電動キックボード大国のアメリカやドイツでは、ちょっとした外出や週末に遊びに行くときの使用が多い。一方で韓国では、約7割の人が日常の移動手段としての使用が多くなっている。国によってその用途はさまざまだ。

パリではレンタル廃止へ

ただ、色々な世界各国観光地でキックボードの普及が進んでいる中、パリは電動キックボードのレンタルサービスを廃止することになっている。

パリでは、2024年オリンピック開催を控える中で、市長がキックボードも走れる自転車専用レーンの整備を主導するなど、車に替わる環境に優しい移動手段への転換を目的に利用促進をして、毎月40万人が電動キックボードのレンタルサービスを利用していた。

しかし、2人乗りなど危険な乗り方が目立つほか、飲酒運転や駐車に関するマナー違反なども問題視されたことから、住民投票の結果、8月いっぱいでパリ市内の電動キックボードのレンタルサービスは廃止されることになった。

この規制の動きは他の国でもみられている。シンガポールでは、2019年から歩道での利用禁止。カナダのモントリオールでは2020年から完全禁止となった。イタリアのローマでは、2022年から正式な身分証明書を持つ18歳以上の成人に制限するなど、電動キックボードに関するルールの厳格化が進んでいる。

日本でも免許不要にルールが改正されて以降、7日未明には酒を飲んで運転した大学生がタクシーに追突する事故があった。さらに、7月29日の隅田川の花火大会の際にも、交通規制された場所を走行する人が見られるなど問題が相次いでいて、厳格化を求める声が高まる可能性がありそうだ。

電動キックボードで“事故を減らす”

電動キックボードというと二輪車タイプをイメージする人が多いが、「LUUP」では将来的には高齢者向けの四輪モビリティなども導入するなど、誰もが安全で便利に移動できるサービスを目指している。

高齢化が進む中で、65歳以上の買い物弱者は年々増加し、2015年時点で825万人とも言われている。そうした方々も、電動キックボードが普及するとともに、それが進化していけば、買い物にも行きやすくなる。

また、高齢者の車の事故を軽減させることができるともされている。車の免許を返納して移動手段がなくなってしまった人も、電動キックボードを活用することができる。

また、JAF=日本自動車連盟が行った、電動キックボードでの交通事故を想定した衝突実験によると、ヘルメットを着用せずに時速20キロの速度で縁石に衝突した場合、脳や頭蓋骨へのダメージが約6.3倍になることがわかった。その結果、重篤な頭部損傷・死亡リスクにつながるという。

2023年4月からは、自転車でもヘルメットの着用が努力義務となり、自分の身を守るためにも着用を推奨している。

(「イット!」 8月8日放送より)