中国・敦煌の砂漠でラクダや「ラクダ渋滞」が発生している。

中国・敦煌のラクダ渋滞について、現地で取材中のFNN上海支局の沖本有二支局長がお伝えする。
敦煌の砂漠で“ラクダ渋滞”が発生
砂漠が広がるのは、かつてシルクロードの要所として栄えた、中国の敦煌だ。取材時の気温は42度。珍しく曇っていたためこれでも暑さは控えめで、非常に暑い気候になっている。

そして、この砂漠ではまるでかつてのキャラバン隊のように、ラクダの大行列が行きかっている。ここ敦煌では、ラクダに乗って砂漠を観光するツアーが大人気だ。

コロナ明けの夏休みということで、毎日約4万人という例年よりもはるかに多い観光客が、灼熱の砂漠に押し寄せている。ツアーの値段は1人約2000円(100元)だ。

毎日“出勤”するラクダの数は、2500頭。中国ではこの大混雑を「ラクダ渋滞」と呼び、大きな話題になっている。

申し込みから長蛇の列で、ラクダに乗るまでの待ち時間が1時間。待つ間には屋根やミストがある場所もあるが、砂漠の上では「自己責任」ということで、観光客は待ち時間中に慌てて水や日よけグッズを購入していた。

そしてツアーが始まると、砂漠の太陽が待っている。景色は素晴らしいが、“ラクダ渋滞”の名の通り行列はゆっくり進み、約4kmのコースを回るのに1時間以上かかった。

しかも、ラクダが驚いてはいけないという理由で、ツアーでは「日傘」の使用が禁止されている。そのため、参加した人たちもこの暑さには参っていた。

ツアー参加者:
とても暑くて、日差しが強い!

ツアー参加者:
肌が黒くなっちゃう!鼻をみてよ、赤いでしょ!もう、こんなに焼けしてる!

この“ラクダ渋滞”を解決するために導入された、画期的な秘密兵器がある。
それが、世界唯一の“ラクダ信号”だ。このラクダ信号は、観光道路とラクダツアーが交差するポイントとなる、合わせて4カ所に設置されている。赤信号を渡ってしまうラクダもいるが、基本的にきちんと信号を守っているようだ。
しかしこの信号も、この夏のラクダ渋滞の過酷さを解消するには至らなかった。
3つの“すぎる”でラクダもストライキ
ラクダのストライキは初めてというが、ことの発端はSNSへの投稿だった。

3つの“すぎる”の1つ目は、「暑すぎる」だ。高温の環境で、何度も砂漠を往復して疲れているように見えるラクダたちの姿がSNSに投稿された。

そうすると、今度は2つ目の「ラクダが働きすぎている」と話題になった。しかし、それでも観光客が増えているなかで、ラクダツアー担当者とラクダが突然のストライキを実施したのだ。

7月18日には、ラクダツアーが一時休業に追い込まれる事態になり、砂漠はツアーに参加できなかった観光客であふれた。
いったい、何が起きていたのか、ラクダ引きの人たちに話を聞いた。

ラクダ引き:
朝4時に起きて、夜10時まで働いたらご飯を食べる。1日4時間しか寝られないよ。

リポート:
ストライキの原因は?
ラクダ引き:
そのことは知りません。

リポート:(ストライキの)具体的な原因は?

飼い主:
それは答えづらいです。

地元政府からかん口令がしかれていて、カメラを向けると関係者ははっきり答えてくれないのだが、取材する中で分かってきたのが「お金の問題」だ。つまり、暑すぎる、働きすぎるに続く3つ目の“すぎる”は、給料が「安すぎる」ということだ。

敦煌は、もともと中国でも貧しい地域なのだが、ラクダ観光の恩恵は広く行き渡ってるとは言えない。例えばラクダを引いている現場の人たちは、観光客の写真を撮ってあげることで1回400円をもらう、いわば「チップ」だけで生活をしているのだ。

過去にないほど暑く、忙しい日が続いているこの夏。現場の人たちの不満が爆発して、今回の「ラクダストライキ」が起きたというわけだ。何もなかったかのようにツアーは再開されているが、待遇が改善されたわけではなく、緊張状態は続いている。
“コスプレの聖地”で撮影を満喫
また、敦煌は「コスプレの聖地」としても知られている。

コスプレイヤーたちはシルクロードにちなんだ、色々なコスプレ衣装に身を包んで撮影に没頭している。衣装のレンタルからや撮影を請け負う専門の業者も多く、ここではラクダに次ぐ観光の目玉となっている。

コスプレイヤー:
美しいから、写真でも動画でもキレイに撮れます。撮影や衣装やメイクで(2人合わせて)1万2000円以上しました。

コスプレイヤー:
(この格好は)「飛天」です。せっかく敦煌に来ているので特別な格好をしたいです。代金は約1万4000円です。記念なので、これくらいは許容範囲です。
かつてはシルクロードの要として栄えた砂漠のオアシスだが、今はラクダツアーやコスプレによる観光業が収入の柱として定着している。
(「イット!」 8月4日放送より)