水素のパワーで、街も空気もきれいにするーー。水素を活用したエコカーの開発が進んでいる。

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7月30日、大分・オートポリスで行われた自動車の耐久レース。爆音を上げ、猛スピードで駆け抜けていくのは、トヨタ自動車が開発中の水素エンジン車だ。

マイナス253度の液体水素を燃料とする、世界初のレーシングカー。

2023年5月にデビューし、今回が2戦目となる。前回に比べ、車両の重さを40キロ軽い1910キロにできたほか、出力も向上した。

さらに、燃料である液体水素の充填時間を、1分40秒から1分へと短縮することができた。

カーボンニュートラル実現の切り札として、水素エンジン車は日々進化を続けている。実は今回は、もう一台注目の車があった。

それは、水素を活用した燃料電池で走るごみ収集車だ。

一般的なディーゼルエンジンのごみ収集車は、走るときや作業の際に大きな音が出るが、この車は、走るのはもちろん作業時の機械の駆動にも水素から作った電気を活用しているため、作業中の音も静かなのが特徴だ。

水素活用で作業時も静かで環境にやさしい働くクルマ
水素活用で作業時も静かで環境にやさしい働くクルマ

住宅地のすぐ近くを通ることが多いごみ収集車にとって、音も静かで環境にもやさしいこの車は、まさにもってこいだ。

トヨタ自動車・中嶋裕樹副社長:
市民生活をサポートしている車たちが水素を燃料とした車に置き換わったらどのような町づくりができるか。今回の目玉のクルマがごみ収集車。

B to G(ビートゥージー)で水素社会をけん引ーー。

企業と自治体が連携して、水素を使った様々な車の導入を検討するなど、志を共にする仲間づくりも進んでいる。

水素を活用した「働くクルマ」に注目していきたい。

燃料電池のごみ収集車は、2023年度中に福岡市など複数の自治体が導入する予定とのこと。

商用車に最適な「パワーと充填時間」

「Live News α」では、早稲田大学ビジネススクール教授の長内厚さんに話を聞いた。

堤 礼実 キャスター:
今回の取り組み、どうご覧になりますか。

早稲田大学ビジネススクール教授・長内厚さん:
先日も、BMWが日本で燃料電池車の実験を開始しましたが、トヨタは水素を使った燃料電池車を乗用車MIRAIで実用化し、現在では第2世代のMIRAIが販売されています。

具体的には、水素と酸素を反応させたエネルギーを電気として使い、モーターを回転させて走ります。

この燃料電池車は、今回のごみ収集車などの「働くクルマ」、将来的には大型トラックなどの商用車での活用が期待されています。

堤 礼実 キャスター:
燃料電池車は商用車に向いていると、言えるのでしょうか。

早稲田大学ビジネススクール教授・長内厚さん:
EVの場合、電気を充電するのに時間がかかるとされているのに対して、水素の充填はガソリン車と同じように短時間で行えるのが特徴です。

商用車は動かすことができない時間。つまり、燃料をチャージする時間が長いと商売になりませんよね。そこで、燃料電池車に期待がかかるわけです。

また、バッテリーを積まない分、車体も軽くできますし、モーターを使うので、EVと同様に低速域で力強く走ることができる。商用車に多い「ストップアンドゴー」に優れてる一方、エンジン車と同じように燃料のチャージが早く、EVとエンジン車とのいいとこどりをしています。

水素社会実現の鍵は”企業の輪”拡大

堤 礼実 キャスター:
燃料電池車の未来をつくるためのポイントは。

早稲田大学ビジネススクール教授・長内厚さん:
普及への課題となっているのが、充填のための水素ステーションの普及と水素の価格です。

商用車で燃料電池車のネットワークが広がると、水素ステーションの拡充や水素価格の引き下げが可能になり、結果的に乗用車での燃料電池車の普及にも繋がります。

さらに、トヨタは水素エンジンの開発も進めています。水素インフラの普及は、水素エンジン車の実用化に向けた力にもなります。

堤 礼実 キャスター:
クリーンなエネルギーである水素には、大きな可能性があるようですね。

早稲田大学ビジネススクール教授・長内厚さん:
水素社会を実現する鍵は、水素を作る・運ぶ・使う仲間を増やすことです。

自動車メーカーだけではなく、水素を運ぶ船をつくる企業や水素ステーションの普及を担う企業など、仲間と協力しながら、一緒に未来をつくる企業の輪を、さらに広げていく必要があります。

堤 礼実 キャスター:
日本が誇る技術が、やがて世界へと広がっていくといいですね。

(「Live News α」7月31日放送分より)