佐々木七段との王位戦第3局に勝利したことにより、藤井七冠が王位防衛に王手をかけた。

藤井七冠が王位戦勝利で防衛に王手をかけたことについて、元女流棋士の竹俣紅キャスターがお伝えする。
勝負のポイントは“最終盤”
藤井七冠は、史上初の“八冠全制覇”を目指している。
王位戦7番勝負の第3局で、佐々木七段に見事勝利を収め、王位のタイトル4連覇に王手をかけた。
第3局目では、佐々木七段が細かいところで上手く技を見せて互角の状態が長く続いたが、勝敗を分けたポイントは最終盤にあった。
藤井七冠は、対局後のインタビューで次のように語った。

藤井七冠:
(佐々木七段が指した)4三馬(114手目)を軽視してしまっていて。本譜は何か負けの順があってもおかしくないなと思いながら指していた

軽視して“しまった”というのは、将棋界での言葉のニュアンスとしては「自分の読みの中にはあったけれども、そんなに大したことのない一手だと思っていたのにも関わらず、指されてみたら意外と厳しい、困る一手だった」という意味だ。
つまり、佐々木七段が指した一手によって、負けてもおかしくないと思ったということ。
“唯一の正解”を6分で導き出す
佐々木七段は114手目に自分の玉を守りながら、藤井七冠の玉を狙う渾身の一手を指した。相手のミスを誘う、相手が焦ってしまう一手だった。

これに対して藤井七冠は、次の115手目で「唯一の正解」とも言える一手を打った。
これには、佐々木七段もガクンとうなだれてしまうほどだった。
驚きなのが、「唯一の正解」とも言える一手をわずか6分で導き出したところだ。藤井七冠の凄さが、改めて垣間見えた瞬間だ。
そして、藤井七冠は4連勝で防衛がかかる第4局に向けてこう語っている。

藤井七冠:
4局目はまた後手番になるので、これまで以上にしっかり準備をして、良いコンディションで臨みたいと思っている
先手の方が若干勝率が高いとされているが、通常は先手か後手かで、そこまでの違いはない。ただし、藤井七冠の場合は違っていた。
2023年度、先手での勝率“100%”
通常は先手が少し有利と言われてはいるが、普通の棋士が先手だった場合、仮に0.1くらい有利なものだとすると、藤井七冠が先手の場合は、それを10くらいまでアップさせてしまう力がある。藤井七冠自身も先手で打つことについて、このように語っている。

藤井七冠:
私自身の成績でみると、ここ2年ぐらいでは、先手のときと後手のときで勝率に、おそらく2割以上たぶん差が出ているので。やっぱり後手番でどう戦うかというのが、非常に難しいところなのかな、という風に思っている

藤井七冠が自ら語っていたことは、実際の結果にも表れている。
藤井七冠の直近2年間の戦績をまとめたものによると、先手が69勝4敗で勝率は94.5%。後手は42勝19敗で勝率68.9%と、先手での勝率は後手の時より25%以上高くなっている。
さらに2023年度に限れば、先手での対局は10戦10勝と、勝率は100%となっている。

対する佐々木七段の先手番の勝率はというと、佐々木七段の2023年度の戦績は、後手の勝率は50%だが、先手では76.9%と後手のときよりはるかに高い。
王位戦第4局は、佐々木七段の先手で対局が行われる。
藤井七冠の3連覇か、佐々木七段の反撃があるのか。注目の対局は8月15日、16日に行われる。
(「イット!」 7月27日放送より)