5月、静岡市葵区の古着販売店で窃盗事件が起きた。無人販売店とはいえ、防犯カメラが8台も設置されている中での犯行。専門家は「商品を持ち出した瞬間に捕まえる人がいないという気持ちになりやすい」と指摘する。
来店客への“思いやり”がアダに…

2022年11月にオープンした静岡市葵区の古着販売店「syndi.」。年中無休の24時間営業で、常駐するスタッフはいない、いわゆる“無人販売店”だ。オーナーは「店員に気を使わずに買い物したいというお客様に対して、そのような空間が提供できればと思い店を開いた」と話す。

ただ、そんな思いを踏みにじるかのような窃盗事件が2023年5月に起きた。一方、無人販売店であるがゆえに「オープン前からある程度、予想していた部分もあった」ため、店内には8台の防犯カメラが…。
これが功を奏し、映像には若い女がTシャツ5点を持ち去る姿がしっかりと収められていた。捜査の結果、警察は少女(16)による犯行と判断し、8月中にも窃盗の疑いで書類送検する方針だ。
また、犯行がテレビや新聞で報じられたため、少女は母親と共に店を訪れ謝罪。オーナーによると「興味本位でやってしまった」と話していたという。
被害を経て得た気づき

被害から約3週間後の6月17日。「syndi.」では商品を1人1点、無料でプレゼントするというイベントが開かれた。謝罪に訪れた少女と話す中で「若者からしたら古着は少し高いのでは」との思いを抱いたことがきっかけだという。訪れた若者たちは「金欠なのでうれしい」「普段で会わないような服に巡り合えるいいきっかけになった」と喜び、来店客の笑顔を見たオーナーも安堵した表情を見せつつ「軽はずみに万引きをした時に一番悲しむのは両親。二度とこういうことはやらないでほしい」と話す。
無人販売店で相次ぐ窃盗…なぜ?

“非接触”“人件費削減”などの面からコロナ禍で急増した無人販売店だが、その反面、窃盗事件も全国で相次いでいる。防犯カメラが設置されているにも関わらず、なぜ商品を盗んでしまうのか。犯罪心理に詳しい静岡県立大・津富宏 教授は「無人で人が見ていないということは、商品を持ち出した瞬間に捕まえる人や声をかける人がいない、監視されていないという気持ちになりやすい」と指摘し、さらに「防犯カメラの設置が増える中で、多くの人が“防犯カメラ慣れ”してしまい、映されているのが当たり前という感覚で過ごしてしまっているのではないか」と推察する。その上で「未成年の非行を防ぐためには健全な親子関係が欠かせない」と話す。
少年犯罪を未然に防ぐために

県警察本部によると、過去には友人から万引きに誘われたり、友人が捕まったりしていないことをきっかけに軽い気持ちで始め、最初に成功してしまったことで、捕まるまで万引きに手を染め続けたという例もあったといい、人身安全少年課の小澤哲也 課長補佐は「万引きはゲームではなく自分の都合で他人の財産を奪うという卑劣な犯罪でなかったことにはできない」と話すとともに「軽はずみな行動が凶悪な犯罪につながる可能性がある」と警鐘を鳴らす。
2022年、県内で検挙または補導された少年は760人と3年ぶりに増加した。うち4割が万引きや自転車盗など「初発型非行」と呼ばれる犯罪で、より悪質な非行への入り口とも言われている。子供たちは現在、夏休みの真っただ中。小澤 課長補佐は「遊び仲間が変わった」「帰宅時間が遅くなった」など、保護者には「子供たちの小さな変化でも見逃さないでほしい」と呼び掛けている。
(テレビ静岡)