パリ五輪まで1年と迫っているが、セーヌ川の水質問題やデモの問題などが起きている。

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開催まであと1年と迫ったパリ五輪の「華やかなイメージの裏で課題山積」について、FNNパリ支局の山岸直人支局長がお伝えする。

セーヌ川で開会式が行われる

パリのエッフェル塔の目の前を流れるのがセーヌ川だ。パリ・オリンピックは、2024年の7月26日、セーヌ川で開会式が行われる。スタジアムの外で開会式が行われるのは、夏のオリンピック史上、初めてのことだ。

開会式では、選手団を乗せた116隻の船を含め、合わせて約200隻の船が、ノートルダム大聖堂やルーブル美術館などを見ながら、約6kmに渡ってセーヌ川を下り、エッフェル塔のふもとに到着する。

開会式当日は、セーヌ川の両岸に60万人の観客が集まることが見込まれていて、この大勢の観客が、開会式をさらに盛り上げることになる。こうした華やかな計画の一方で、気になるのが警備の問題だ。

17日に行われた船の航行テストの映像では、57隻の船が6kmのコースを実際に航行して、船と船の間の間隔やスピード、さらには、実際に滞りなくテレビの生中継ができるかどうかなど、技術面でのチェックが行われた。

大会組織委員会のエスタンゲ会長は、初めての実験が成功に終わったことを強調したが、記者の質問は警備の点に集中した。

エスタンゲ会長:
セーヌ川で開会式を開催することを決めたのは、安全面を完璧な状態にするために、非常に長い時間をかけ、重要な作業を行ったからです。

エスタンゲ会長は、絶対的な自信を見せている。

“暴動”がフランスのイメージ悪化に繋がる

ただ、警備の対象は1万人を超える選手たちと、その関係者や観客だけではない。式典には100人を超える各国の首脳や要人が出席するため、テロのリスクも排除できない。

フランス内務省は、開会式に警察官と憲兵合わせて3万5000人を配置して警備にあたるほか、パリ市内の防犯カメラを、従来の4000台から4400台に増やすことも明らかにしている。

開会式の安全は、まさに、この大会成功の大きなカギを握っている。

また、フランスは、過激なデモの印象が定着していて、2023年1月にも年金改革法をめぐるデモをきっかけとした暴動があった。さらに6月にも、警察官による少年射殺への抗議デモをきっかけに、暴動が起きた。

こうした暴動の映像が流れると、旅行のキャンセルが相次ぐ傾向にあるという。パリ観光局によれば、7月はパリへの旅行者のうち、20組に1組のキャンセルが出ているということで、オリンピックにも同様の影響を与えかねないと懸念されている。

オリンピックを管轄するフランスのスポーツ相も、「暴動がフランスのイメージにとって良くない」とこの状況を案じている。

“100年間遊泳禁止”の場所が競技会場に

そして、開幕に向けてもう一つ大きな課題がある。それは、目の前にあるセーヌ川をめぐる問題だ。

パリ大会では、トライアスロンの水泳と、オープンウォータースイミングがセーヌ川で行われるが、水質汚染のために、100年前の1923年から遊泳禁止となっている。

今回の決定について、パリ市民はどう思っているのか聞いた。

パリ市民:
セーヌ川で泳ぎたいと思わない。プールや海など、泳げる場所があるから。

パリ市民:
セーヌ川で泳げるのは良いです。パリ市民の生活が変わります。

パリ市民:
汚れたセーヌ川では泳ぎたくない。泳ぐなら、南フランスの海がいい。

パリ市民:
セーヌ川で泳ぎながら、パリの景色を見つめることは素晴らしいです。

約2000億円を投じて汚水処理場を近代化

こうした水質の問題は、東京オリンピックでも同じような問題が話題になった。パリでは、セーヌ川が100年前に遊泳禁止になって以来、水質改善に向けた試みが繰り返し行われてきたが、このオリンピックを機に、一気に改善されることとなった。汚染の主な原因は「大腸菌」などで、大雨で下水道が溢れ、汚水が川に流れ込むことが影響している。

このため、フランス政府やパリ市は、オリンピックに向けて約2000億円(14億ユーロ)を投じて、上流の汚水処理場の近代化を進めたほか、下水の流入を防ぐため、市内に4万6000㎡の容積を持つ巨大な地下水層を建設している。

こうした努力の結果、パリの釣り協会によると、1970年代には4種類しかいなかった魚の種類が、今は35~40種類にまで増えたという。

2022年夏に行われた水質検査で、大会組織委員会は「すでに水泳ができるレベルに達している」と成果を強調した。パリのイダルゴ市長も安全のアピールに懸命で、オリンピック後の2025年には、セーヌ川の3カ所に遊泳スポットを設けることを明らかにしている。

(「イット!」 7月26日放送より)