ダンボールを「こねる」って一体何?
子どものおもちゃや、テレワーク用の個人ブース、医療用の仕切り…
工夫次第で様々な作品や商品に生まれ変わる、可能性が無限にある素材の「ダンボール」。
編集部でもいくつかの作品や商品を紹介してきたが、今、そんなダンボールを「捏ねて立体化」した作品が、Twitterで話題となっている。
#あなたのユニーク魔法
— オダカマサキ【オドンガー大佐】 (@odonger2) June 22, 2020
切ったダンボールを手で捏ねて、立体化する魔法(物理#ダンボールアート #ダンボール工作 pic.twitter.com/CdSXp1cg0H
「切ったダンボールを手で捏ねて、立体化する魔法(物理)」
画像に写るのは、何の変哲もない段ボールを切り抜いてできた、タコのようにも宇宙人のようにも見える丸っこい生き物だが…

このダンボールを「捏ねて」作ったというのが、こちら!

可愛らしかった丸いフォルムから、ぞろりと伸びた触手が不気味な生き物に大変身…
その正体はタコさんではなく、架空の神話「クトゥルフ神話」に登場する「クトゥルフ」という生き物の頭部とのことで、平べったいダンボールから出来ているとは思えない触手のうねりなど、確かにハッシュタグにあるように“魔法”で仕上げられたようだ。
投稿者は、幻獣や身近な生き物をモチーフに「ダンボールの限界を超える造形を追求」しているという、ダンボールアーティストのオダカマサキ(@odonger2)さん。
投稿に寄せられた「途中で何が起きたのか」「ダンボールって捏ねれるんだ…」という驚きの声に「2時間捏ねるだけです」「捏ね捏ねです!」と回答しているオダカさんだが、その「ダンボールを捏ねる」とは、一体どういうことなのだろうか。
さっそく、「ダンボールの捏ね方」について、オダカマサキさんに詳しく伺ってみた。
折って、つまんで…次第に形に
――「ダンボールを捏ねる」とは一体どういう作業?
手とスパチュラ(粘土ベラのようなもの)、細かい部分をつまむピンセット、クセをつけるためのクリップを使い、最初に全体の丸みを付けてから、細かいところを捏ねていきます。一番最初柔らかくするために湿らせたりします。
――ダンボールを切り出す時はどうやって形を決めている?
全体の形状から部品割を考え、部品の大きな部分(顔、手、脚)などを作っていきます。
今回のツイートは顔のベースを作っているところで、皮膚感を出したかったので、ベースはなるべく1枚で作って、目や触腕を貼っていくことに決めました。
顔は完成形から逆算して、シンプルな形状を切り出しています。このとき、穴や触腕の数は変更できないので、切り出しのときに作っておきます。
――この作品はどうやって作ったもの?
全体を湿らせて大きな丸みを付けて、だんだん細かい部分を作り込んでいきます。触手は後半つまむように折って仕上げていきます。深い溝のように見える部分は、何工程にも分けて段々と深く加工していきます。変な皺が入ったり、破れたりしやすい工程なので、ゆっくりと丁寧に加工します。
今回作った「クトゥルフ」は夏の幻獣テーマの展示に参加するための作品ということで、「タコのような頭で触手をたくさん持つクトゥルフで柔らかさ、ヌメヌメ感、邪悪さの演出に挑戦」しようとモチーフに決定したというオダカさん。
ダンボールを「捏ねる」作業はいくつかの道具を使うそうだが、多くの人が驚くだろうポイントは「ダンボールを水で湿らせる」という工程があること。紙を素材にした作品に水はNGなのではと思ってしまいそうだが、これが豊かな質感の表現につながるのだ。
頭部だけの投稿からさらに進化

ちなみに、最初に投稿したクトゥルフの頭部の画像は「ダンボールを2時間捏ねた」もので、まだまだ未完成。
その後の投稿では目や触手が次々と追加され、さらに生々しい姿に…

ダンボールを「こねこね」する魔法のようなテクニックで作られたこちらの作品は、8月6日から東京交通会館で行われる「幻獣神話展VII」にて公開されるとのことなので、完成品を直接見ることができるチャンスだ。
息子さんの指摘から始まったダンボールアート
――ダンボールアートを始めたきっかけを教えて
もともと工作は得意で、息子と家で工作していたときに「お父さんも何か作ってみせてよ!」と言われ、良いところを見せようと、家にたくさんあったダンボール工作をしたら息子が喜んで、被り物を作っていました。
ある日幼稚園のハロウィン用に難しいオーダーを断ったら「いつも僕にやる前から諦めちゃ駄目だっていうのに、お父さんは諦めてもいいの?」と言われ、後に引けなくなり、息子のオーダーをこなしながら作った作品をSNSに投稿。その後沢山のオファーを頂き、2017年から作家活動をはじめ、今に至ります。
思わず「ウッ…」となってしまうような息子さんの鋭い指摘から始まったダンボールアートだというが、他にもたくさんの作品が発信されている。

――気を付けているポイントやテクニックは?
加工の技術に目が行きがちですが、その生き物らしい仕草、生命感、躍動感が出るように、心掛けています。
――お気に入りの作品はどれ?
書籍の表紙用に作成したドラゴンが気に入っています!

今後は「捏ねの技術をもう一段階進化」
――ダンボールの魅力とは?
1枚に見えて、3枚の紙で出来ていて、厚みを変化させられる素材というところです。そのまま使ったり、潰して使ったり、剥がして使ったりを一枚の紙で使い分けられます。
――投稿には大きな反響がありましたが…
1枚のダンボールを捏ねることで、大きく形を変えられることにびっくりされたと思います。完成品は夏の「幻獣神話展」で展示されますので是非実物を見て頂けると嬉しいです!
7月18日には、自粛期間中にテレワークで作成したという、ダンボールを「捏ねる」技法や作品の詳しい作り方、型紙などを収録した『オダカマサキ ダンボール アートワークス』が発売されるという。
オダカさんは「こんなときだからこそ、楽しくダンボール工作しましょう」と話し、今後は「ヤマタノオロチを作ってみたいです。捏ねの技術をもう一段階進化させたいです」との目標を教えてくれた。
身近な素材の大変身に釘付けとなる人が続出した、「ダンボールこねこねアート」。
まだまだ外出に不安が残る…という人も、改めて室内でできるこんなアートに挑戦してみるのも面白そうだ。
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