埋もれていた宝物を有効活用

華やかな磁器「有田焼」に、藍色の細やかな絵付けが特徴の「瀬戸染付焼」。

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これらの器は実は...。

Culture Generation Japan・掘田卓哉代表:
基本的には職人のところで在庫になっているものです。

Culture Generation Japan・掘田卓哉代表
Culture Generation Japan・掘田卓哉代表

在庫を利用した新たなサービスが、日本の伝統工芸を救うかもしれない。
その新たな取り組みを取材した。

江戸切子を制作する「堀口切子」
江戸切子を制作する「堀口切子」

『見て、使ってもらえればわかってもらえるはず』

東京都の伝統工芸品、江戸切子を制作する「堀口切子」。
彩り豊かな「ぐい飲み」や、中をのぞくと万華鏡のように見える「ロックグラス」などグラス類を中心に制作している。

中には、きめ細やかなカットが施された五寸皿も。
これはグラスに比べて一般家庭の利用が少ないことから、需要も少ないという。

堀口切子 三代秀石・堀口徹さん:
こういった皿は形状とかもあって、どちらかというと料理屋というかプロユースになる。自分たちが作っているものをプロユースの料理屋に見てもらう機会も少ないし、存在もまだ知ってもらえていないと思う。『見てもらえれば、使ってもらえればわかってもらえるはずだ。この違いに』みたいなところは思っているものの、なかなか厳しいです。

堀口切子 三代秀石・堀口徹さん
堀口切子 三代秀石・堀口徹さん

こうした悩みを解決するのが、「クラフタル」という飲食店向けサブスクリプションサービス。

「クラフタル」
「クラフタル」

好きな工芸品を月額3万円からレンタル

Culture Generation Japan・掘田代表:
工房にお邪魔すると、素晴らしい技術の商品とかがほこりをかぶって眠っていたりする。これがなんで市場に流通しないかなと考えると、やっぱり1つ、どうしてもネックになるのは価格。なんとかしてこの価格をハードルを越えられるような新しいサービスが作れないかなと。

仕組みは、窯元で在庫になっている陶磁器などの伝統工芸品を「クラフタル」が買い取り、飲食店は全国およそ200種類の器の中から、好きなものを月額3万円からレンタルできるというもの。

また、飲食店は気に入った器があれば、それまでのレンタル代を差し引いた金額での購入も可能。

実際にこのサービスを利用している、日本料理店「割烹TAJIMA」。
和食にとって、料理の一部である器のサブスクを利用することでこんな効果があった。

「割烹TAJIMA」・田島和彦料理長
「割烹TAJIMA」・田島和彦料理長

「割烹TAJIMA」・田島和彦料理長:
いろんなものを試せる。それが一番のメリット。こういうのを盛ってみようとか、こういうのをやってみようというふうに(案が)生まれて、自分たちが料理を作るモチベーションにもなるし、客を楽しませるという喜びに直結するようなサービス。

伝統工芸品と飲食店の双方にメリットがある、このサービス。
考案の背景には、ある問題があった。

Culture Generation Japan・掘田代表:
『この技術はもう俺で終わりだな』とか『次に継ぐ人もいないし』という暗い話が多い。(伝統工芸品は)価格の問題もあるし、発信力がないこともあるのでなかなか売れない。どうにかして売り上げを上げていかないと後継者も育成できないし、まずは職人に金を落とすというところが、今の本当の課題と思っている。

IT技術で“伝統工芸の未来”切り開く

三田友梨佳キャスター:
山崎さんはデザイナーとしてものづくりにも深く関わっていらっしゃいますがこうした取り組みをどうご覧になりますか?

コミュニティデザイナー・山崎亮氏:
製品デザインの歴史は19世紀におけるイギリスの産業革命の時期から手作りの工芸品なのか工業製品なのかの対立構造が続いています。伝統工芸品は品質はとても良いけど単価が高くて消費者になかなか手にしてもらえないというジレンマがありました。
一方で工業製品は安くて大量に作れる、最近は質も上がってきている。だから伝統工芸品というのは世の中に出回るのが難しかったんだという風に思います。

三田友梨佳キャスター:
山崎さんが思う伝統工芸品の魅力というのはどういうところでしょうか?

コミュニティデザイナー・山崎亮氏:
2つほどあると思います。
1つは工芸品の質。丁寧なものづくりに基づく細やかな質の高さは言うまでもないことだと思います。これは実際に触ってみて使ってみないとわからないことが多い。
2つ目は一見見落とされがちなんですけど、作り手の背景も大切だと思っています。手作りで物を作っている人の喜びを伴う働き方。いろいろ工夫してみようだとか、次はもっと良い物にしてみようだとか、これは工業製品ではなかなか出てこない工夫や楽しみだったりすると思います。
また、材料を供給する側の人達との関係性や地域のネットワークが伝統工芸品の背後にいろんな価値として存在している。こういう情報がしっかり伝わると伝統工芸品の価値をより実感してもらえると思っています。

三田友梨佳キャスター:
そうした魅力をさらに多くの人に知ってもらい、手にしてもらうためには何が必要なのでしょうか?

コミュニティデザイナー・山崎亮氏:
歴史的に工芸製品を作る側は機械に頼ることにかなり抵抗してきました。今のサブスクというIT技術もある種の機械なんですけど、この機械と共に伝統工芸の新しい未来が切り開かれ始めたというのは興味深いです。作り手の喜びを失わないまま、これを続けていくことが大切だと思います。

三田友梨佳キャスター:
職人さんが丹精込めて作り上げる伝統工芸品には手仕事ならではのぬくもりもあります。こうしたITの力も活用して地域の伝統を継承して発展させる取り組みがさらに広まることに期待したいです。

(「Live News α」6月22日放送分)