福島県との県境、宮城県最南端に位置する自然豊かな丸森町。この人口1万2000人ほどの町で、全国でも珍しい「七夕」という集落がある。その地名の由来には、織姫と彦星のような2人が深く関わる言い伝えがあった。

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バス停に神社…集落の名前は「七夕」

「七夕」という名前の集落があるのは、仙台市から車で約1時間。宮城県丸森町東部にある大内地区だ。電柱やバスの停留所など、いたるところに「七夕」の文字が…この地名を観光資源として生かそうと、町の観光案内所では6年前から集落を巡るツアーを行っている。

取材班は、その一部を案内してもらうことに。まず、訪れたのは民家の敷地内にあるその名も「七夕神社」。この神社の名前から、一帯を七夕と呼ぶようになったと言われているのだが、そもそもなぜこの神社の名前が「七夕」と名付けられたのか。その成り立ちは、町に古くから伝わるある言い伝えだった。

集落名の由来になったとされる七夕神社
集落名の由来になったとされる七夕神社

美しいはた織りと牛飼いの恋…地域に伝わる七夕伝説

今から約600年前、この地に「七重」というはた織りの上手な美しい女性が住んでいて、多くの人から慕われていた。「七重」は、川を挟んだ北向かいの集落に住む牛飼いの男性と相思相愛の仲だったが、2人が会うのは年に1度、その川を挟んで会うだけ。生涯結ばれることなくこの世を去ったという。のちにこれを知った村人が「七重」をはた織りの神としてまつり、その神社を「七夕神社」と呼ぶようになったのだという。

集落の人たちは、かつて、二人がそれぞれ住んでいたといわれる集落の間を流れる伊手川を、天の川に見立てて「天王川」と呼んでいたという。

2人の男女が住んでいた集落の間を流れる伊手川 天の川に見立て天王川と呼ばれることも
2人の男女が住んでいた集落の間を流れる伊手川 天の川に見立て天王川と呼ばれることも

地名がつなぐ地域の輪

「七夕神社」では、8年前から7月7日の七夕の日に集落の人たちが作った七夕飾りを飾っている。集まった住民たちで食事会を行うのがお決まりになったという。

2019年に行われた七夕まつりの様子
2019年に行われた七夕まつりの様子

また、七夕集落の近くには、「七重」のように、昔ながらのはた織りを体験できる場所もある。使われるのは100年以上前から使われているという「はた織り機」。今は、町に住む7人の女性たちが、昔ながらの技術を守り、次の世代へと伝えているのだという。

昔ながらのはた織り体験が可能
昔ながらのはた織り体験が可能

丸森町観光案内所 小野統さん:
七夕神社のいわれであったり、昔ながらの技で物が作られるのを感じてもらえると、歴史・伝統・文化もわかりやすくなると思うので、そういったところに興味をもってもらえれば。

一年に一度しか会えなかった織姫と彦星のように。地域に伝わる「七夕伝説」は、長い時を経て地域の住民をつなぐ。短冊に願いを書きに、一度訪れてみてはいかがだろうか。

(仙台放送)

仙台放送
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