天皇皇后両陛下は、6月17日から1週間、国賓としてインドネシアを公式訪問されました。国際親善が目的の外国訪問は即位後初めてで、皇后さまが同行されるのは、およそ20年ぶりです。

6月17日 ジャカルタに到着された両陛下(スカルノ・ハッタ空港)
6月17日 ジャカルタに到着された両陛下(スカルノ・ハッタ空港)
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東南アジア南部に位置し、1万を超える島々に約2億7000万人が暮らすインドネシア。今年、日本との外交関係樹立65周年を迎え、首都・ジャカルタの街には両陛下を歓迎する写真が飾られていました。

両陛下のご訪問を歓迎する看板(ジャカルタ)
両陛下のご訪問を歓迎する看板(ジャカルタ)

歓迎行事では、大統領の運転するカートで植物園へ

6月19日、両陛下は「ボゴール宮殿」で行われた歓迎行事に臨まれました。出迎えたジョコ大統領が陛下と握手を交わし、イリアナ夫人から皇后さまに花束が手渡されました。
宮殿の庭で行われた記念植樹。植えられたのは、ジンチョウゲ科の「マラッカジンコウ」。植樹が終わると、大統領自らひしゃくで皇后さまの手に水を…。終始和やかな雰囲気で行われました。

記念植樹をされる両陛下とジョコ大統領夫妻(ボゴール宮殿)
記念植樹をされる両陛下とジョコ大統領夫妻(ボゴール宮殿)

このあと、両陛下は大統領夫妻の案内で宮殿に隣接する植物園へ。大統領が自らカートのハンドルを握るというサプライズがありました。カートに乗るのは初めてだった陛下が「大変おもしろかったです」と感想を述べられると、大統領は「これまでも賓客をお乗せしましたが、きょうが今までで一番緊張しました」と応じました。

大統領とともにスピーチに臨んだ陛下は、インドネシアの歴史や文化について述べられました。

《陛下スピーチ》
「貴国の多様性に満ちた社会・文化について理解を深めるとともに、また、インドネシアの歴史そしてまた両国間の友好親善の増進に今まで尽くしてこられた方の歴史にも思いをはせたいと思っております。」
「テリマカシ」(※インドネシア語で『ありがとうございました』)

皇后さま インドネシア特産の「バティック」作りをご体験

一方、皇后さまは、イリアナ夫人の案内でインドネシアの伝統文化を視察されました。                                      インドネシア特産の染め物「バティック」。
皇后さまは、溶かしたロウで生地に文様を描く作業を体験されました。

「バティック」のろうけつ染め作業をされる皇后さま(ボゴール宮殿)
「バティック」のろうけつ染め作業をされる皇后さま(ボゴール宮殿)

「着てみますか」と促されると、バティックを身にまとい、はじけるような笑顔を見せられました。

両陛下「カリバタ英雄墓地」へ、前日には残留日本兵の子孫とご面会

翌日、両陛下は「カリバタ英雄墓地」を訪問されました。ここには、第2次世界大戦後もインドネシアにとどまり、オランダとの独立戦争に参加した元日本兵28人も埋葬されています。両陛下は黙とうを捧げ、英霊碑に花輪を手向けられました。

英霊碑に黙とうされる両陛下(カリバタ英雄墓地)
英霊碑に黙とうされる両陛下(カリバタ英雄墓地)

この前日、両陛下は元日本兵の子孫と面会されていました。1991年に上皇ご夫妻が訪問された際に実現しなかった、元日本兵関係者との面会が、今回初めて実現しました。陛下は「大変ご苦労されましたね」と労いの言葉を掛けられました。皇后さまは墓地での慰霊について「心を込めて供花をさせていただきたいと思います」と話されました。

残留日本兵の子孫と懇談される両陛下
残留日本兵の子孫と懇談される両陛下

両陛下 インドネシアの若い世代とご交流

今回のご訪問で、多くの人と触れ合われた両陛下。特に若い世代の人たちと積極的に交流されました。ダルマ・プルサダ大学では、日本語を学ぶ学生10人とご懇談。卒業論文に取り組む女子学生には・・・

皇后さま「卒業論文というと、もう4年生ですか?」
  学生「はい。今、4年生です」
  陛下「うちの娘の愛子が、ちょうど卒業論文をこれから…」
皇后さま「がんばってください」

卒論のテーマに日本の「慣用句」を選んだ男子学生は・・・

学生「『水くさい』という言葉は、私たち外国人には『水がくさい』と感じます」
陛下「テーマが面白いですね。私たちが当たり前のように使っている言葉も、突き詰めてみると不思議なものですね」

日本語を学ぶ学生と懇談される両陛下(ダルマ・プルサダ大学)
日本語を学ぶ学生と懇談される両陛下(ダルマ・プルサダ大学)

続いて両陛下は、職業専門高校をご訪問。教室では生徒たちが製作したロボットをご覧になりました。両陛下は「プログラミングは難しかったですか?」「開発期間はどのくらいですか?」などと、一人一人に質問されていました。

ロボットを操作する生徒と会話される両陛下(職業専門高校)
ロボットを操作する生徒と会話される両陛下(職業専門高校)

陛下 お一人でジョクジャカルタご訪問

6月21日、陛下は、お一人でジャワ島中部の古都・ジョクジャカルタを訪問し、日本の支援で整備された砂防ダムの実験施設を視察されました。「水問題」がライフワークの陛下は、今回の訪問中、ほかにも、洪水を防ぐ排水施設や古代の治水に関する展示をご覧になっています。

砂防ダムの実験施設を視察される陛下(ジョクジャカルタ)
砂防ダムの実験施設を視察される陛下(ジョクジャカルタ)

陛下は、ジョクジャカルタの特別州知事で、この地域の王にあたる「スルタン」の宮殿を訪問されました。伝統舞踊や音楽で歓迎を受けられた陛下。晩さん会で、スルタンが「両国の若い人たちの交流を広げていきたい」と話すと、陛下は「まさにそれが重要です」と述べられる場面もありました。

スルタンのハメンク・ブウォノ10世の宮殿を訪問された天皇陛下
スルタンのハメンク・ブウォノ10世の宮殿を訪問された天皇陛下

翌日、陛下は世界文化遺産の「ボロブドゥール寺院」へ。
8世紀頃に建てられたとされるこの寺院は、度重なる火山噴火で埋もれていましたが、1970年頃から本格的な修復・保存の作業が始まり、1991年に世界遺産に登録されました。遺跡保護のため、陛下は素足に布製のサンダルを履き、世界最大級の仏教遺跡の姿を、愛用のカメラに収められました。

視察後、サンダルの履き心地について記者に聞かれると、「サンダルは思っていたより、履き心地が良かったです。そしてまた、サンダルを履くことによってこの寺院を保存しようという方々の熱意を強く感じました。」と答えられました。

また今回の訪問の感想について次のように述べられました。
「今回は何度かインドネシアの若い方々とお話しする機会がありました。」
「将来的にこの日本に関心を持っているようなインドネシアの方々、そしてインドネシアに関心を持っている日本の若い方々相互の交流によって、両国間の親善関係がより深まることを心から願っております。」

両陛下 インドネシア公式訪問のご感想

即位後初めての公式訪問を終えられた両陛下。インドネシアの多様性に富む文化にふれ、多くの人と交流したことを振り返り、「私達二人にとって、とても思い出深いものとなりました」と感想を寄せられました。

(「皇室ご一家」7月2日放送)