政府が取得を推進している「マイナ保険証」。

しかし、今、システムの不具合などで患者の保険資格が確認できず、窓口での医療費の負担が10割になるなど、トラブルが相次いでいます。

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中には、「マイナ保険証」で登録した患者の情報が、窓口で「該当資格なし」と表示されたり、郵便番号と住所が空欄になっているなど、情報が正しく紐付いていないケースも。

街でも「今問題になっているから使いたくない」「すごく不安」と、その運用に多くの不安の声が。

「めざまし8」は、2年前からマイナ保険証のカードリーダーをいち早く導入し、誤登録などの問題による混乱を訴える「いとう王子神谷内科外科クリニック」の伊藤博道院長と共に、国民から噴出する様々な不安の声を、河野太郎デジタル相に直接伺いました。

「マイナ保険証」問題 河野太郎デジタル相を直撃!

Q.新たな問題が次々と出てきていますが、これについてどうお考えですか?

河野太郎デジタル相:
一億二千万人の国民の皆さん全体に「マイナンバーカード」という新しい物を持っていだたいて、それをいろんな物に使っていただいて、皆さんの生活を便利にしよう。そういうかなり大きなプロジェクトを始めたところですので、最初はいろんな事が…あってはいけないんですが、やはり起きてしまうというのはあると思います。ただこれだけは、起きている問題の多くは原因がわかって対策を打っていますので、今まで起きている問題はだんだん少しずつ解決をしていきますので、これからマイナンバーカードを使って、いかに世の中が便利になったかを一人でも多くの方に実感していただく、そういう体験ができるようなサービスをどんどんスタートしていきたいと思っています。

Q.一番の問題点は?

河野太郎デジタル相:
やはり、せっかくマイナンバーカードを持っていただいても、まだ使ったことがないという方がいらっしゃいますので、マイナンバーカードでこういうことができるんですということを、実際に一人でも多くの方に体験していただく。そういう機会を作っていくことが大事かなと思っています。

「いとう王子神谷内科外科クリニック」伊藤博道院長
「いとう王子神谷内科外科クリニック」伊藤博道院長

いとう王子神谷内科外科クリニック 伊藤博道院長:
(当クリニックでは)実際に1割くらいの人がマイナ保険証を使うんですけど、それでもこれだけのトラブルが起こっていて、これが10割となったときには、とてつもない数のトラブルになると思うのですが…?

河野太郎デジタル相:
いろんなトラブルがありますが、「保険資格なし」というのが表示されるというのは、実際に転職をされたときに、保険の切り替えの期間、そこに入ってしまっているケースというのはあります。今、10日以内に切り替えはやってくださいとお願いはしていますので、これはだいぶ減ってくるのではないかと思います。それから、顔認証がなかなかできないということが起きたときは、おそらく後ろから日が差していたり、顔が暗くなっていると、顔認証がしづらいということがありますので、そこは機械の方の精度を上げていくということも大事ですし、機械の角度を変えて光の加減で顔認証ができるということもありますので、そこは受付の事務の方にご迷惑をかけてしまうのかもしれません。申し訳ないなと思います。

いとう王子神谷内科外科クリニック 伊藤博道院長:
同姓同名の方って結構多くて、しかも同じ日に来るっていうのが結構あるんですよね。その中で“ひも付け”を間違えてしまうと、薬の処方に関して間違いが起こったり、飲み合わせの悪い物を出してしまったり、アレルギーのある物を出してしまったり、場合によっては検査、処置や手術を間違えてしまうということもあり得ることが、致命的なのではないかと懸念しています。

河野太郎デジタル相:
一億二千万人の中で生年月日が同じで同姓同名という方もいらっしゃる。ですから、マイナンバーは各自に別の番号を振っていますので、マイナンバーを提出していただいて保険証の登録をすれば、これはひも付けが間違うことはありません。マイナンバーの提出がないと、氏名・住所・生年月日・性別、これをシステムに入れて、その方のマイナンバーを引き出すんですけども、時々、名前と生年月日だけでそれをやってしまうというケースがあります。
マイナンバーをきちんと提出していただいて、転職した際などは、保険証の登録をしていただく。健保組合なんかも、住所まで入れて住所・性別まで入れて確認をしていただいて、その人のマイナンバーを確認して、ひも付けをしていただく。厚労省は、全部、住所・性別まであててくださいという改正をしましたので、ルール通りにきちんと手順を踏んでいただければ、新たなひも付けは起こらないので、これからは大丈夫だと思います。

Q.戸籍の「ふりがな」の問題はどうでしょうか?

河野太郎デジタル相:
今回の国会で法改正をしていただきましたので、例えば今「こうの」太郎か「かわの」たろうか、戸籍では分からないんですね。これは保険証とは違いますが、公金受取口座、銀行の口座はカタカナで口座名を登録していますので、こちらに漢字4文字「河野太郎」こうのか、かわのか分からない。こっちがカタカナで「コウノタロウ」というと、コンピューターで今ひも付けができないんです。これは今回の法律改正で、ふりがなをふることになりましたので、戸籍、住民票にも「コウノタロウ」とふりがながふられると、今度は口座とひも付けが正しいがどうか、名前で検証することができるようになりますので。少しこれから2年くらい時間がかかってしまいますけども、一歩大きく前進できたと思います。

紛糾する医療現場「メリットよりデメリットの方が多い」

Q.マイナ保険証を導入することによって現場の手続きは簡略化されましたか?

いとう王子神谷内科外科クリニック 伊藤博道院長:
医療の質の向上ということを旗印に、総理も河野大臣もマイナ保険証の一本化をうたっているんですけども、医療の質の向上とは何でしょうか?
例えば、少し手間が省けて時間ができることによって、他のたくさんの患者さんが診れるということだとしても、今のところメリットよりデメリットの方が多くて、少なくとも保険証がないと修正ができないという状況なんです。
それで実際、マイナ保険証を使って診療したときに、医療の情報が見られるということなんですけど、例えばお薬の情報がPDFベースで見られるんですけど、前の病院のお薬をそのまま継承して出そうと思ったときに、手入力をしなくてはいけません。それからCTやMRIを実際に共有することができなくて。せいぜいリポートを見ることしかできないんですね。

河野太郎デジタル相:
日本の医療って、まだカルテがなかなか共有されていない。それぞれの病院がそれぞれの電子カルテを入れているので、これが共有できていないんですね。今、厚労省とデジタル庁が一緒になって、この電子カルテをちゃんとどこでも見られるようにしようという事をやっております。そうすると、この病院で受けた血液検査の内容が、別の病院でも見ることができる、ここの病院で受けたMRIやCTの画像が別の病院でも見ることができる。あるいは特定健診の数字を見ることができる。あるいはそういうカルテの情報を自分で確認することができる。これを目指しています。
まだまだ一歩一歩しか前進をしていないんですけども、ゆくゆくはそうやって、電子カルテが共有されて連携されて自分の医療情報を自分で見ることができる、あるいは自分の医療情報をどの先生に見せていいかということを、自分で決めることができるようにするということもあり得ると思いますので、今そのためのベースを作っている段階です。

Q.電子カルテはいつ頃の実現を?

河野太郎デジタル相:
はい、これはできれば来年度、再来年度からでも、少しずつスタートしたいと思っています。

Q.実現までの医療現場の負担

河野太郎デジタル相:
今マイナンバーカードで受け付けをやっていただくと、保険証の資格が出てきます、コンピューター上に。それをワンクリックで病院のカルテに移行することができますので、書き間違いや新たな打ち間違いということは起きないと。これはもう、今でもできるようになっています。少しずつですが、使っていただいたらやっぱりメリットがあるよねと、先生方にも思っていただかなければいけませんし、やはり患者さんが何回も同じ検査をしなくて、何回も血を採られないで済んだ、あるいは保険証と、例えば高齢者・難病の方、お子さまの公的助成の受給証を別に持って行かなくてはいけなくて、保険証を持って行って、診察券を持って行って、受給証をと、3枚持って行かなくてはいけないということが、これが今マイナンバーにひも付けをしようと、今年から手を上げてくれた自治体と始めていますので、ゆくゆくはマイナンバーカードで受付をすると、高齢者の助成だったり、あるいは小児医療費無償だったり、ということがそれ一枚でできるようになります。

河野太郎デジタル相:
また、マイナンバーカードで病院の診察券代わりにも使えるようになっていますので、そういうふうに便利になっていきますというスケジュールをお見せして、今ここですという所を、もう少し世の中に丁寧に出していかなくてはいけないのかなと思っています。

Q.すでにそういうサービスが受けられるわけではなく、始まった段階?

河野太郎デジタル相:
そうですね、「卵が先か鶏が先か」ということになるかもしれませんが、やはり電子化できます、デジタル化できますというシステムを作った上で、いろんなサービスをどんどん出していきたいと思っています。

「マイナ保険証」を巡っては、こんな懸念事案も。

従来の保険証をマイナ保険証に一本化するため、2024年秋には保険証は廃止されてしまいます。岸田首相は、6月21日の会見で「国民の不安払拭が大前提になる」と話し、保険証の廃止後、最大1年間猶予期間として使えるようにするといいますが、不安の声が収まることはありません。

いとう王子神谷内科外科クリニック 伊藤博道院長:
ぜひ一度現場で見ていただいて、声を聞いていただきたいなと。現場の町医者の声をたくさん聞いてほしいと思うんですよね。少なくとも、かなり壮大な計画を持っているというのは分かるんですけども、その体制がしっかり整ったところまでは、保険証を廃止するのは待っていただきたいと思いますし、保険証そのものはなくても、例えばスマートフォンとかで保険情報がさっと表示できる。そういったものでもいいと思いますけども、代替のものがないと、例えば院内でも患者さんの情報をマイナ保険証が来たときに、ひも付けるんですけど、それをひとたび間違えたら修正に保険証がないと、とんでもないトラブルになることに気づいたんですね。現場で今後起こるトラブルをシミュレーションして、それを払拭してから健康保険証をなくす、ということを考えていただきたいなと。

河野太郎デジタル相:
厚労省で加藤大臣のもとで、これからマイナンバー保険証に移行する、その中で起きうる問題というのを今リストアップして、それにどう対照していくかということを打ち出していく本部を立ち上げてられましたので、そこで一つ一つ問題をあぶり出して、それにどう対応できるのかというのをしっかりやっていきたいと思っています。
来年の秋まで時間がありますし、そこから1年猶予期間があります。ぜひ来年の秋まで待たずに、少しずつ試していただければと思います。

Q.マイナ保険証のメリットについて

河野太郎デジタル相:
医療情報、今病院側がカルテとして持っている物を、きちんと自分で確認することができるようになりますし、同じ検査を他の病院で受ける必要もない。レントゲンにしろMRIにしろCTにしろ、画像を共有することができれば、それだけ体への負担も減っていく事になります。それから電子処方箋というのがもうじきスタートしますが、昨日もらった薬はなんなのかということも共有できるようになりますので、そういう意味で非常に便利になる未来は描けていますが、そこに向けて今、一生懸命山を登らなきゃいけないという所なので、もう少しお時間をいただきたい。

個人情報が漏洩するのでは?拭えぬ不安

「めざまし8」が取材したところ、マイナンバーカードを所持していても、「不安なので、病院で持っているか聞かれても、持っていないと答える(50代)」「個人情報漏洩が怖いので家に置いている(70代)」という人も。この不信感についてはどのように考えているのでしょうか?

河野太郎デジタル相:
誤解があって、マイナンバーカードのICチップの中に自分の医療情報とか税金の情報が入っている、だから怖いとおっしゃるんですが、あのICチップに入っているのはマイナンバーカードに出ている名前と住所、生年月日と性別、それとご自身の顔写真だけで、それを使っていろんな行政機関にアクセスすると、マイナポータルで皆さんの情報を見ることができるという仕組みになっていますので、あのカードに中に入っている情報はそれだけです。だから、医療情報が出てしまうのではないか、税金が出てしまうのではないか、とういうことはありません。
医療情報やら年金情報というのは、そこからアクセスをするときの鍵になるのがマイナンバーカードで、その鍵を使って皆さんの情報をマイナポータルで出して、皆さんに見ていただくと。逆に言うと、紙で作業をやっていると、何か間違いがあったときに分からないんです。

河野太郎デジタル相:
ゆくゆくは、皆さんが持っているスマホでいろいろな行政手続きが完結するようにしたいと思っています一つは行かない市役所、スマホで手続きをやらない方がいらっしゃると思いますが、そういう方が市役所に行ってもらわないといけないのですが、市役所に行ってもマイナンバーカードで本人確認をしたら、いちいち申請書を書かずに口で今日は児童手当の手続きとか、年金の手続きと言っていただければ、手続きが終わる。「行かない市役所、書かない窓口」というのを最終的には実現したいと思っています。

河野太郎デジタル相:
それを目指して運転免許証とマイナバーカードを統合しようと思っています。今、オンラインで本人確認するときの詐欺で一番多く使われているのが実は運転免許証で、運転免許証の写真の上に別人の写真を貼って、それを写真にとってオンラインで本人ですと確認するケースが多発していますので、確認をするときには、ICチップで電子証明書で本人確認をしなきゃダメだね、ということになっています。対面で本人確認をするときには、運転免許証を使うことがこれからもできますので、そこは安心していただいていいと思います。

河野太郎デジタル相:
いろんなタイミングでというと、どんどん後ろへずれていってしまいますので、これは卵か鶏かという話しで、まずはマイナンバーカードというベースを作った上で、そこにいろんなタイミングでサービスを提供して、だんだん便利になってきたねと。
確定申告一つとっても、今年は医療控除できるようになったね、ふるさと納税がオンラインでできるようになったね、来年は給料取得も確定申告自動入力になったねと、ちょっとずつ便利になっていきますので、それをぜひ感じていただきたいなと。

(「めざまし8」6月30日放送)