政府は6月19日午前0時より、接待を伴う飲食店や県をまたぐ往来の自粛要請を全面解除した。東京での感染が完全に終息したといえない状況の中、感染拡大防止と本格再開する社会経済活動をどう両立すべきなのか。今回の放送ではスタジオに識者を迎え、議論を深めた。

自粛解除は緊張感を持ち直すために有効

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海老原優香キャスター:
専門家会議の総意として、自粛解除には問題ない?

岡部信彦 川崎市健康安全研究所 所長:
会議で一人ひとりに聞いてはおらず総意はわからないが、私は今の状態ならば解除に向けて動いていいと思う。政府はそれぞれの委員に聞き、全体の話題としてそのように発表しているのでは。

先崎彰容 日本大学危機管理学部教授:
「狼が来た」という昔話がある。何回も「狼が来た」と言えば人は信じなくなり動かない。我が国は強制せず緊張感の醸成でコントロールをしている。明らかに街の人出が変わっている現在、一度自粛を解除して次の緊張感を与えることでコントロールするために、よいと考える。

業界団体の指針は”精神的安定感”を担保

海老原優香キャスター:
業界団体の指針の効果はどれほどと見る?

岡部信彦 川崎市健康安全研究所 所長:
パーフェクトな方法ではないが、感染症予防のために人と人の距離を保つのは基本。インフルエンザ流行に対しマスクをつけるとか、ノロウイルスに対し手を洗うことと同じ。そして指針により、社会としてコロナウイルスを怖がる姿勢になる、これを急に元に戻さず、段階的に緩めていく。未来永劫、絶対に飲み屋でグラスを合わせて乾杯をできないわけではない。様子を見ながらステップを踏むこと。

反町理キャスター:
先﨑さんはどう見る。

先崎彰容 日本大学危機管理学部教授:
未知のものと戦っているのであり、基本的には不確実。東日本大震災のときにも「想定外」という言葉がよく使われた。とるべき距離が1mか2mか、このスタジオに設置した出演者間のボードの効果も、最終的にはわからない。
ではこれは何を担保しているのか。それは、これをやっているから大丈夫という「精神的な安定」これが社会を混乱に陥らせない重要な手段。アメリカではこれが機能しておらず、人種差別に火がついて混乱している。我が国ではこの精神的安定感を担保する方法、そのコンセンサスの取り方として、ステッカーなどの手段はよいと思う。トイレでも手洗いに注意するなど、そこで我々は安定を確保するのだと思う。

強制力ある仕組みの整備を検討すべき

反町理キャスター:
自粛に頼るのか公的圧力をかけるのか。15日の決算委員会や18日の会見でも総理は強制力についての発言をしている。

佐藤正久 前外務副大臣:
危機管理の観点からは、性善説ではなく性悪説で、使うかどうかは別としてもある程度の強制力の仕組みを持つのは大事。そこで罰則を考えるのは政治の責任。憂えているのに備えないのは無責任。感染症においても、命を守るために万が一に備えるべき。

佐藤正久 前外務副大臣

岡部信彦 川崎市健康安全研究所 所長:
特措法ができたときの考えだが、2009年の新型インフルエンザのパンデミックにおいてもある程度の制限が必要との議論になった。例えば学校の休みは通常状態では学校長が決定するが、それでは学校ごとにばらばらになるため、自治体の長に権限を持たせた。そこで日本ではどこまで私権を制限できるかという議論が相当行われ、緩いと言われるかもしれないが「自粛」という形になった。ただ問題点がある。法律においては決まりごととそれに対する補償が一体となる。しかし自粛に対しては補償という考えがない。

先崎彰容 日本大学危機管理学部教授:
これは「2つの自由」をめぐる話。1つ目の自由は、例えばマイナンバー制度は10%しか普及していない。総務大臣が銀行口座を紐付けしようと話しているが、なぜ今までできなかったのかといえば、プライバシーはじめ権利の問題。平時においては権利を守り自由を担保したいという人が多い。ただ、この自由はある前提に立っている。それがコロナ禍で現れた。
この前提とは何か。例えば一人親に3人の子供がいる4人家族があるとする。コロナ対策の自粛で仕事ができない。もしマイナンバー制度が普及しており、申請から1週間で40万円が銀行口座に入っていたらどうか。2ヶ月以上の給料に相当するかもしれない。これにより経済的な自由だけではなく、精神的自由も獲得できる。虐待しないで済んだ、となるかもしれない。これが2つ目の自由の話。

先崎彰容 日本大学危機管理学部教授

先崎彰容 日本大学危機管理学部教授:
つまり、多少の私権を制限しても、危機の時に貧困にある人の生存権を確保するために1週間で40万円を払えるようにするか。それとも2ヶ月経っても支払われないか。その2つの自由を天秤にかけている。
絶対の無制限の自由というものはない。そこでどちらの自由を選ぶかに、日本人の死生観や文化、国民性がでてくる。これは政治を超えた話だと思う。自身としては、1週間で40万円のほうの価値観を取りたい。その意味では佐藤さんと一緒の考え。

接触確認アプリは不十分なものだが、一定の意義あり

海老原優香キャスター:
接触確認アプリ「COCOA」の運用。どれほどの効果があるのでしょう。

岡部信彦 川崎市健康安全研究所 所長:
公衆衛生対策に応用するためのデータ部分は、実は今回はほとんど外れている。対象は登録した人だけで、どこで接触したかもわからない。今回は一つの試みとして、例えばイベント会場などで登録を促す紙を配るとか。そこを離れて数日経てば、陽性者と接触があった場合に医療機関を受診することにつながる。

反町理キャスター:
しかしビッグデータをとって今後の方策に活かせる?

岡部信彦 川崎市健康安全研究所 所長:
今のところはそこまでではない。データとして公衆衛生対策、個人の感染症対策につなげるにはこれからの知恵がいる。ただ、やらなければ進まないから進歩だとは思う。

岡部信彦 川崎市健康安全研究所 所長

反町理キャスター:
私権制限と公共の福祉の兼ね合いの、ネットにおける向き合い方という話。

先崎彰容 日本大学危機管理学部教授:
肯定的に見ている。日本の場合さまざまな段階を見て試験的にやっている、これくらいの進歩でやっていけばいい。

反町理キャスター:
ペースがゆっくりなのは仕方ない?

先崎彰容 日本大学危機管理学部教授:
今までを見ても、このアプリにも議論がこれだけいる国ならね。

佐藤正久 前外務副大臣:
現状、個人情報も取らず疫学的情報調査の役には立たない。他国から見たら「なにこれ?」レベル。でもそれを逆手にとって、例えばシンガポールでは国民が個人情報を取られたくないから2割にしか広まっていないが、日本は逆にゆるくして一歩踏み出し、広げていくことができる
ただ、メリットを感じてもらわなければ広まらない。陽性者濃厚接触があったとの連絡があれば優先的に検査を受けられるとか、症状を入力することで相談センターにつながるとか、何かなければいけない。

(BSフジLIVE「プライムニュース」6月18日放送)