大きな教科書やタブレット端末など、入れるものが増えて重くなっているランドセル。これが原因で、体の不調を訴える小学生が最近、急増しているという。
子どもたちの体に今、何が起きているのか。
アスリートゴリラ鍼灸接骨院の高林孝光院長に聞いた。
コロナで患者数が10倍に増加
ーー体の不調を訴える子どもが増えている?
子どもの骨折は30年前に比べて、“3倍”に増えています。
特にコロナが流行し始めた3年前と比べると、治療に来る患者の数は10倍以上に増え、そのうち6割が子どもです。
一方、高齢者の方は、コロナ禍で家族の人が「外に出ちゃいけない」と言っていたため、どの治療院も減っています。
ーー子どもたちに見られる症状は?
背骨が疲労骨折してしまう「腰椎分離症」や、かかとの骨が割れてしまう「シーバー病(踵骨骨端症)」、さらに膝のお皿が割れてしまう「有痛性分裂膝蓋骨」などの症状があります。

高林院長によると、この腰椎分離症は「子ども腰痛」といって、現代病の1つにもなっているという。
整骨院には、“身長”に関する悩みを持つ患者とその親も多く訪れていると高林院長は続ける。
「猫背やあご出し姿勢、骨盤後傾の子供たちもすごく多いです。さらに親が一番悩んでるのが、子供たちの身長です。子どもの平均身長は、30年前と比較して横ばいか、0.1cm縮んでしまっているというデータもあり、『どうやったら身長が伸びるのか』という質問が大変多いです」

ーーなぜこういった症状が多い?
まず、コロナ禍による運動不足があります。
外で遊べないので骨が強くならない。そして外で遊ばないと疲れないので、眠れない。さらに食事も不規則になってしまう。夜寝る直前に食事を食べてしまうと、成長ホルモンが出づらくなってしまいます。
年々、運動不足の子どもが増えていく中、コロナ禍はかなりの引き金となりました。
ランドセルの中身も原因の1つ
コロナ禍の外出制限に加えて、子どもたちの負担となっているのが毎日使用するランドセルだという。
昔に比べて、教科書は見やすいように大型化し、冊数も増加。
さらにコロナをきっかけにタブレット端末も加わり、ランドセルを背負うと「人に後ろから乗られている感じでつらい」と話す小学生もいる。

ーーランドセルの影響は?
昔と比べて、A4サイズのファイルが入る大きめのランドセルが増えているので、ランドセル自体が重くなっているのと、コロナ禍では水道に口を付けてしまうことを避けるために、自分で水筒を持って行く子も多く、荷物が重くなっています。
また、コロナを機にパソコンやタブレットを持って行く子どもも増えているので、子どもの腰痛がすごく増えています。

当院の子どもの疲労骨折は年間300人ぐらいで、小1から中3まで幅広く来ています。
疲労骨折は歩けますが、走れなかったり、腰を後ろに反れない、同じ姿勢が保てないなどといった症状があります。

ーー疲労骨折の原因は?
二極化していて、「使い過ぎ」の場合と、「運動不足」の場合があります。
筋肉は、使い過ぎても使わな過ぎても、短くなってしまいます。
最近だと、立位体前屈をする時に手のひらが床に全くつかない子が増えています。
しゃがむと後ろに倒れて転んでしまう子もいるため、体育座りを中止する学校も増えています。

さらにまっすぐ走れない、しゃがむと後ろに転んでしまう、しゃがんだ時にかかとが浮いてしまう、偏平足、O脚、バンザイが出来ない子もいます。
子供の成長に欠かせない「亜鉛」
そしてもう1つ相談件数の多いのが、子どもの身長だ。
高林院長は、成長ホルモンの分泌を促す「亜鉛」摂取のためにも、たんぱく質が摂れるお肉などの食事と運動のバランスを意識することを心掛けるよう指導していると話す。

ーー身長が伸びない原因は?
身長に関しては、栄養状態には問題ないのですが、運動をし過ぎているケースがあります。
よく「筋トレすると身長が伸びない」と言いますが、筋肉がつくから身長が伸びないのではなくて、運動すると汗と一緒に「亜鉛」という成長ホルモンの分泌を促す物質が出てしまうからです。

あと、身長を伸ばそうと牛乳をたくさん飲ませる親がいますが、牛乳が体質に合わない子どもはお腹を下してしまい、亜鉛が一緒に出てしまうことで逆効果の場合もあります。
また、牛乳だけでお腹がいっぱいになってしまい、お肉などからのたんぱく質が摂れなかったりするので、運動も食事もバランス良くするよう指導しています。

ーーケガはどの程度の症状で来る?
最近のスポーツの監督は、昔と違って早期予防を子どもたちに指導しているので、少しの痛みでも来院してきます。
早期予防は浸透していると思います。
骨折した子どもには体操指導をして、「なぜ骨が折れるのか」の仕組みを理解させています。
物を使ったら片付けるのと一緒で、「体も使ったらちゃんと片付けなさい」と私は言っています。体操とかストレッチをしっかりやって、痛みが出たり、疲れが出たり、弱ってる部分をちゃんとケアしなさいと指導しています。
10秒でできる簡単ストレッチ
過剰な運動や運動不足により、太ももの裏の筋肉は小さくなってしまう。すると体のバランスが崩れ、骨盤が後ろに引っ張られ、背骨も反ってしまう。
子どもの骨はまだ柔らかいため、この状態で重い荷物を背負うと、背骨が圧迫されて痛みや疲労骨折などの原因となり、成長期の子供たちは特に注意が必要だという。
そこで、高林院長が指導するのが「太ももの裏の筋肉を伸ばす」10秒ストレッチ。
榎並キャスターも挑戦すると、驚くべき効果が現れた。

ーー自宅でできるケアをお願いします。
椅子に浅く座って、両足を少し広げて、かかとを床につけます。
お辞儀をしてお腹と太ももをつけて、離れないように太ももの下に腕を回して手でロックします。

この状態で、かかとを浮かさずお尻を上げます
お尻が椅子から離れたら、一番伸びている状態で10秒数えます。声を出して数えると筋肉の緊張がとれるので自分で数えることをお勧めします。

これを毎日、朝昼晩に2回ずつやって、2~3週間続けると、太ももの裏の筋肉が伸びて、前屈した時に手のひらが床にベタっとつくようになります。

もう1つ、運動や病気、怪我の予防に役立つ「腹横筋」の体幹の働かせ方も指導します。
運動前とかに、骨盤と肋骨の間の脇腹を両方の親指で、左右からまっすぐおへそ側へ10秒、痛いぐらい押します。

腰が折れている子どもたちは、腰を後ろに反らすことを痛がりますが、運動前に腹横筋を押すだけで、腰椎分離症になるリスクを下げることができます。

ーーシンプルだけど魔法みたいですね。
オリンピック選手などトップアスリートたちは皆、腹横筋を刺激しています。筋肉の刺激の仕方を知っているので、世界で結果が出せているんです。
変化を感じられるので小学生もちゃんと続けてくれます。「体操してね」と子どもや親御さんに言っても、すぐに効果が出ないのでやってくれません。

これはすぐに効果が出るので、みなさんやってくれて、怪我をしなくなります。
当院で再発患者がほとんどいないのは、この2つのストレッチを楽しんでやってくれるからです。
例えば、バレーボールは後ろに反りますが、脇腹を押してから反れば、後ろも前も柔軟性が増し、パフォーマンスが上がります。
10秒間押すだけなので、どこでも出来て、お金もかかりません。是非、子どもたちにはやっていただきたいと思います。