岸田文雄首相に近い木原誠二官房副長官は18日、フジテレビ系『日曜報道 THE PRIME』(日曜午前7時30分)に出演し、衆議院の解散について「大義は重要」との認識を示した。その上で、自民党の萩生田光一政調会長が先に示した、防衛増税の前に国民に信を問うのが筋だとの指摘について、「ひとつの意見で、その通りだ」と述べた。

木原氏は、岸田首相が今国会中の衆院解散を見送った真意について問われ、「岸田首相の口から『解散するぞ』という言葉は一度も出たことはない」と説明。「むしろ(首相からは)『やるべきことしっかりやっていく、仕事をしていくんだ』という言葉しか聞いていない。(衆院解散の雰囲気を)私自身は必ずしも感じてはいなかった」と話した。

一方、萩生田氏が17日、岸田内閣について「地方の感覚に欠けている」と批判したことについて、木原氏は「真摯に受けとめて改善したい」と語った。

以下、番組での主なやりとり。

橋下徹氏(番組コメンテーター、弁護士、元大阪府知事):
解散権についてきのうきょうの新聞などを見ていると、「解散権を弄ぶな」という論評が多かったが、解散権こそが民主主義国家において一国の総理、一国のリーダーが国をまとめ上げる、政治をまとめ上げる唯一の武器だ。独裁国家では最後は強権発動で政治をまとめるが、日本はそういうことはできない。国会議員は選挙でもう一回当選するかどうかがすべてだ。非常に弱い立場の人、余裕のある人、さまざまいるが、この解散権で「さあ、クビ飛ばすぞ。さあ、どうするんだ。俺についてくるのか、どうなのか」ということを示すのは、民主国家において最大のツールだ。岸田首相がこういう形で解散権を使うのは当然だ。

解散権の効果を使い、独裁的、強権的なやり方ではなく、国の政治をまとめていくことは極めて平和的なことだと僕は思う。

松山俊行キャスター(フジテレビ政治部長・解説委員):
岸田総理は(15日の)記者会見の数時間前までは解散する意欲があったと我々の取材では聞いている。実際、解散を見送るとの判断をするまでの数時間に一体何があったのか。なぜ今の国会では解散しない決断に至ったのか。

木原誠二氏(官房副長官):
解散権は総理の専権事項なので、総理の内心そのもので、正直分からない。岸田総理の口から「解散するぞ」という言葉は一度も出たことはなく、むしろ「やるべきことをしっかりやっていくんだ」「仕事をしていくんだ」という言葉しか我々は聞いていなかった。松山さんが言うような(衆院解散に踏み切るとの)雰囲気を私自身は必ずしも感じていなかった。

橋下氏:
解散あるかどうかということを、メディアを含め我々はいろいろ議論していた。でも、解散するかどうかということによって、賛否両論ある中で、結局は国会も政府の方針もうまくまとまった。国会議員なんていろいろ好き勝手なこと言う。自民党内も岸田さんを全員が支持するということでもない。民主国家で唯一それをまとめ上げるツールは解散権だ。僕は知事、市長だったが、自由な解散権はない。議会から不信任を突きつけられたときに解散を発動できるのだが、知事・市長の8年間でどれだけ解散権が欲しいと思ったか。ああでもない、こうでもない、無責任なことばかり好き勝手に言って、財源も何にもないのに、「あれやれ」「これやれ」と言って。こんちくしょう、うるせー、この野郎、解散だ、と言いたいんだけど、不信任を出してくれないと言えないから、僕は自分から「不信任決議してくれ」と何遍も言っていた。「不信任出してくれ、不信任出してくれ。それで解散だ」と。だけど、みんな不信任を出さない。それぐらい解散権というのは現実の政治においてはものすごい重要なものだ。ただ、外から言うと「弄ぶな」とか、そういう話になるが、民主国家において銃を突きつけて強権発動することなく、解散権だけでこうやってまとめるのだったら、極めて平和な方法だと僕は思う。 

松山キャスター:
「今国会での解散は行わない」と岸田総理は表明したが、では、どこで解散総選挙に踏み切るのかが次の焦点になる。去年12月にこの番組に出演した自民党の萩生田光一政調会長が指摘したことを踏まえれば、政府は防衛増税の時期を今年のどこかのタイミングで決めることを方針として出しているが、例えば、年末になる場合、それよりも前に解散総選挙に打って出るのではないかとの見方が強まっている。一般的には9月や10月あたり、秋の解散とみられているが、党役員人事や内閣改造などを早めに行えば、8月下旬以降はいつでも解散できる。

木原氏:
これはまさに総理の専権事項だ。(解散)するかしないか、時期も含めて岸田総理が適切に判断する。総理は仕事を少しでも前に進めることを国民に約束している。国際情勢への対応、子育て支援、防衛力の抜本強化、そういうことを少しでも一歩でも前に進めるということだから、その中で総理が判断する。

橋下氏:
もちろん解散をどのタイミングでやるかは総理の専権事項だ。ただ、民主主義国家の筋として、原理原則として、国民に大きな負担などを求める前には必ず選挙で国民の意思確認をするのは民主主義の大原則ではないか。

木原氏:
橋下さんの言う通りで、解散するということになると、その大義は何なのかと。何を国民に問い、国民の意思を聞くのかは重要だ。 

橋下氏:
年末に決める防衛費増税の時期、そして子育て支援の恒久財源の話もまだはっきりしていない。ここは十分に大義になる。

木原氏:
それが大義になるのか、ならないのかも含めて総理が判断する。

松山キャスター:
萩生田政調会長は、増税前に国民に信を問うのが筋だと。この意見についてはどうか。

木原氏: 
政調会長が言っていることはひとつの意見で、その通りだろうなと思う。

松山キャスター:
国全体の経済状況を見ると、景気の回復もあっていま税収が増加に転じている。国の一般会計、税収の増加を見ると、今年は69.4兆円と過去最高になっている。防衛増税など増税の話がよく議論されるが、このまま税収が増えていけば防衛増税をさらに先送りしてもいいのではないかとの見方も出てくると思うが。

橋下氏:
財源問題で国民が一番関心を持っているのは自分たちの負担がどうなるかということ。政治行政は売上というものを考えず、国民から取ることを中心に考える。防衛財源では一兆円ほど国民負担だとか、一方的に決め打ちになっているが、税収が伸びた場合、負担は下がるはずだ。国民負担がゼロになるとは思わないが、どうも先に国民負担はいくら、子育て支援でも国民負担という話が多分出てくると思う。税収増にあわせて負担をどうするかというとこが、日本政府のメッセージの出し方として一番弱いところだ。

木原氏:
防衛、子育て、こういう政策テーマごとだけではなく、予算は全体でやっているから、全体で税収が上がっていくということは当然ある種の負担は下がっていくということだろう。予算全体としてみて税収増の効果がしっかり出るように取り組むことは当然だ。 

橋下氏:
防衛財源で国民負担は1兆円などと言われている。税収増によって国民負担の1兆円が下がることはあり得るということか。

木原氏:
それぞれの政策パッケージというのは一定の財源と、あるいは、安定を国民に見せるのも我々の責務だ。現状、それを先日閣議決定した枠組みの中で示している。これはこれとしてしっかりやらせてもらいたいが、予算全体として税収の増加は一定程度大きな効果をもたらすから、国民にしっかり還元できるようにやらせてもらいたい。 
 
松山キャスター:
自民党の萩生田政調会長が予算の予備費執行の時期について、9月では地方議会に間に合わないとして、「地方の感覚に欠けている首相官邸だ」と苦言を呈した。

木原氏:
批判はある種の不満があるということだと思う。真摯に受けとめたい。おっしゃる通りで、我々予備費であれ、補正予算であれ、組む時は結局ほとんど自治体にお願いしてやってもらう。我々に手足があるわけではない。自治体のスケジュールと合っていないことが多分ままあるんだろうと思う。そこは真摯に受けとめて改善したい。

橋下氏:
地方のことを考えることは必要だと思うが、地方側も通年議会にすればいいだけの話だ。地方議会は定期で年に3回かそれぐらいしか開かないからこういうことになる。地方議会も通年で開く前提にして、政府から何か話がくればすぐ議会だけは開く。地方のほうの責任が不足しているところもあると思う。

日曜報道THE PRIME
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