近畿日本ツーリストが新型コロナワクチンの接種業務で、自治体に対し最大で約15億円の過大請求を行っていた問題で15日、警察は近畿日本ツーリストの社員を逮捕した。

近ツー社員逮捕「だますつもりは…」

逮捕前の社員に直接取材。問題について「何を語った」のか?

この記事の画像(18枚)

大阪府警担当・森孝郎記者:
大きな問題となっていた近畿日本ツーリストの過大請求問題。家宅捜索から2週間、事件は大きく動きました 

15日、詐欺の疑いで逮捕されたのは、近畿日本ツーリストMICE支店の支店長・森口裕容疑者(54)ら3人だ。

森口容疑者ら3人はおととしから去年にかけて、東大阪市から委託されたコロナワクチン接種業務で人件費などを過大請求し、約5億8,900万円をだまし取った疑いがもたれている。

関西テレビは逮捕前の森口容疑者を取材。今回の逮捕された容疑について話を聞くと… 

記者:
だます気はなかった?

森口容疑者:
全然そんな…

記者:
そんなことはないということですかね?

森口容疑者:
ただ知らなかったということです

最大15億円を過大請求

取材に対し、詐欺の意図を否定した森口容疑者。今回の事件で森口容疑者が果たしていた役割はどのようなものだったのか?

まず、今回の手口を整理すると次のようになる。

東大阪市から新型コロナウイルスのワクチンの接種業務の委託を受けた近畿日本ツーリストは、コールセンター業務を別の会社に再委託。 その際、今回逮捕された別の担当者は、オペレーターの人数を86%分しか発注しなかった。 しかし東大阪市には100%分の発注をしたと偽り、人件費を過大請求していたのだ。

警察によると、支店長の森口容疑者はこの事実を把握していながら黙認。さらに問題が発覚しそうになると、勤務データの改ざんを指示したというのだ。

逮捕前の森口容疑者に、指示をしたのか直接聞いてみると…

記者:
森口さんは支店長という立場で指示を出したとある、そういうことはされていなかった?

森口容疑者:
いやまぁ…本当にごめんなさい。会社のほうに言われてますから

記者:
今回の詐欺容疑について、支店長としてどう思うのか?

森口容疑者:
色々あるんですけど…すみません

記者:
売り上げのノルマが厳しかったという話があった。そういう背景があった?

森口容疑者:
…なかなか厳しいですね

記者:
だまそうとした思いはなかった?

森口容疑者:
結果的にはね…

警察は森口容疑者の認否を明らかにしていませんが、近畿日本ツーリストが行った社内調査には「時間が経てば経つほど言えなくなった」と話しているということだ。

今回の問題では、東大阪市だけでなく、大阪府や静岡県焼津市など全国63の自治体で、あわせて最大15億円を過大請求していたことが明らかになっている。

調査の結果、過大請求額が約5,800万円にのぼることが判明している。大阪府の吉村知事は15日の逮捕を受け… 

大阪府 吉村洋文知事:
これは当然、税で行われていることなので許されることではない。大阪府としても当然、警察の捜査には積極的に協力をしていきます

逮捕を受けて、近畿日本ツーリストは「3人の処分はまだ決まっていない。捜査には全面的に協力する」とコメントしている。業界大手の企業から逮捕者が出た事件は、今後どう展開していくのか?

“スピード逮捕”なぜ?

この問題を発覚当初から取材している大阪府警担当の森孝郎記者が解説する。

近畿日本ツーリストによる全国で最大15億円にものぼる過大請求問題、とうとう逮捕者が出る事態となった。家宅捜索から社員3人逮捕まで2週間とスピード感のある展開となったが…。

大阪府警担当 森孝郎記者:
4月の近畿日本ツーリストと東大阪市の発表以降、警察に取材をしていると「捜査をしている」との明言はありませんでした。一方で、各地の自治体で過大請求が明らかとなっていきまして、そちらに僕が取材をしていくと、そのような中で、自治体側が警察に話をしているとか相談をしているといったことが聞こえてきました。そんな中、発表から約1カ月半後には、警察が家宅捜索と強制捜査に入り、そこからちょうど2週間なんですけども、逮捕者が出るというスピード感のある展開になりました

今回の逮捕容疑では、東大阪市からワクチン接種業務を委託されて、オペレーターの数などこのコールセンターには86%しか受注していなかったのに、東大阪市には、100%の分を請求していたということだ。

この支店長は、このコールセンターに対してデータの改ざんを依頼して、市には虚偽の報告をしていたということだ。森記者はこの森口容疑者と直接、話をしているが…

大阪府警記者クラブ 森孝郎記者:
今回逮捕された3人が所属するMICE支店は大きな支店なので、売り上げを上げなければいけないという背景がありました。取材の中で私が森口容疑者に、そういう厳しい状況があったのかという質問に対しては、「厳しい状況があった」というふうに答えていました。加えて「最初からだますつもりだったのか」という質問を私がしたところ、かぶせるような形で、「そういうことはありません」というような否定的な返答をしました。そういうやり取りの中で涙ぐむような様子も見られました

近畿日本ツーリストは、全国63の自治体で最大約15億円の過大請求を行っていたとしていて、全国で同じ手口で不正が行われていたとみられる。これについて5月の会見で社長は、「組織ぐるみの不正ではない」としている。上層部に捜査の対象が広がる可能性はあるのか? 

大阪府警担当 森孝郎記者:
大阪府警は大阪以外に静岡や他の都道府県と合同で捜査をしていると発表していて、今後他の自治体についても捜査をしていくというふうにしています。また、同じ手口であるっていうところにも注目していて、今回はその関西の支店のトップである支店長が逮捕されたんですが、それよりももっと上から何か指示があったのかどうか、 それについては、今回の逮捕を受けて、今後の捜査でもっと本格的に捜査がされていくと思われます

発注者である自治体の責任も問われる

今回、自治体が被害者ということだが、もう少し慎重に進められなかったのだろうか?

関西テレビ 神崎博デスク:
このお金自体は税金なので、言ってみれば、われわれ納税者が被害者とも言えると思うんですね。今回、コロナで自治体が多忙を極める中で、外注して発注したと思いますが、その発注した責任は自治体にもあったと思うので、忙しいとは思いますが、どこかの自治体が、現場に行ってチェックしていれば…もしかしたら不正が早く発覚していたかもしれません。ある意味においては、発注者として自治体の責任もあったんじゃないかなと思います

組織ぐるみの不正という側面はなかったのか?など、今後の警察の捜査による実態解明の焦点となりそうだ。

(関西テレビ「newsランナー」2023年6月15日放送)

関西テレビ
関西テレビ

滋賀・京都・大阪・兵庫・奈良・和歌山・徳島の最新ニュース、身近な話題、災害や事故の速報などを発信します。