2022年5月に公表された、新しい津波浸水想定に基づいたシミュレーションで、宮城県全体の浸水想定面積は東日本大震災の約1.2倍になるとされる。公表から1年、自治体ごとに対策が進む中、避難エリアに多くの人口を抱える仙台市は、津波避難施設の追加を急いでいる。
この記事の画像(11枚)余儀なくされた「避難計画」の見直し
宮城県が公表した津波浸水想定では、仙台市の浸水面積は53.8平方キロメートル。東日本大震災の浸水面積とほぼ変わらないが、津波避難場所としていた3カ所の「避難の丘」が高さ不足となったほか、8カ所の指定避難所が浸水域に含まれ、仙台市は計画の見直しを迫られた。
仙台市 防災計画課 御供真人さん:
津波情報伝達システムの屋外拡声装置を増設するなど対応をとっている。76基設置していて2024年3月ごろまでに15基増やす。また浸水域内にある指定避難所となる学校などの津波に対する安全性を確認し、避難可能であることを確認している。
新たなシミュレーションを受け、仙台市が特に対応を急いでいるエリアがある。その場所とは、かさあげ道路のない、仙台港後背地だ。
仙台市が3年前に発行した津波避難エリアなどを示したいわゆる津波ハザードマップと、宮城県の公表を受け2022年11月に発行したものと比べると、高砂から中野栄周辺の住宅地が新たに浸水域に入ったことがわかる。
“寝耳に水”だった地域の住民は、「ここまで浸水するのか…」と驚きを隠せない。
指定避難所の「高砂市民センター」。想定では、ここも浸水域に含まれる。2階以上への避難が必要となり、屋上に柵を設置することが決まったという。
仙台市高砂市民センター 前田義信 館長:
東日本大震災はセンターまで津波が来なかったので安全という認識だったが、浸水域にある指定避難所として、市民センターをどう有効活用するか考えるきっかけになった。
「津波避難施設」と「津波避難場所」
いざというときの「避難場所」は大きく分けて2つ。浸水域外にあり、避難の長期化に対応できる「指定避難所」と、浸水域内にあり、一時的な避難先として利用できる「津波避難施設」や「津波避難場所」がある。仙台市が急ぐのは、仙台港の近くにいる人が命を守るための「津波避難施設」を増やすこと。2023年4月には新たに、高砂東市営住宅と食肉市場管理棟の2カ所を追加したという。
このうちの1つ、仙台市中央卸売市場・食肉市場を案内してもらうと、施設の管理棟では、3階の廊下と外階段が避難場所となっていた。
仙台市が指定する津波避難施設は、市が所有し、構造上の安全性や津波に対して耐久力があること、いつでも避難が可能な施設であることが条件となっている。
この施設では、外階段だけでなく、廊下全体も避難スペースになっているという。最大104人の避難が可能となり、共用部分も避難スペースだと考えているのだという。 御供さんは、さらに避難施設の数を増やしたいと話していた。
住民以外でも利用できる避難スペースを
18棟からなる高砂東市営住宅も、2階以上の廊下や階段を住民以外でも一時的に避難できるスペースとした。最大で4578人の避難が可能。現在、仙台市が指定した津波避難施設は20カ所。仙台市は今後、条件を緩和して民間の施設にも指定を広げていきたいとしている。
防災の専門家も、自宅周辺だけでなく、遠出する際、その土地の津波避難施設の場所をあらかじめ確認するなど「日頃の備え」が重要だと話す。
全国で相次いでいる大きな地震。次の災害への備えが今、問われている。
(仙台放送)