2023年5月、宮城県村田町の県道で、車の単独事故があった。現場には、事故を起こして道路上に止まった車と、困惑するドライバーの高齢女性の姿が…。そんな事故現場に遭遇し、女性の窮地を救ったのは、下校途中の地元高校生がとった、“とっさの行動”だった。

悪条件重なる事故現場…遭遇した高校生

村田高校に通う佐藤光さん(左)と田中仁斗さん(右)
村田高校に通う佐藤光さん(左)と田中仁斗さん(右)
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宮城県村田高校に通う、佐藤光さん(17)と田中仁斗さん(16)。野球部に所属する2人は、4月に2年生になり別のクラスになったが、今でも毎日一緒に弁当を食べ、部活帰りは一緒に下校する、まさに『親友』だ。そんな2人が、部活動が休みの5月22日、自主練習を終えて、帰宅の途についているときのことだった。

村田高校2年 佐藤光さん:
「車のタイヤがパンクして、車体はボロボロでした。女性はパニックを起こしていて、何をしていいかわからない様子でした」

2人の目に飛び込んできたのは、道路に止まった1台の車と、車の近くで困惑する高齢女性の姿。車は、近くにある橋の欄干に衝突して止まったとみられている。

車が止まっていたと場所には 車から漏れ出たオイルとみられる跡がまだ残っていた
車が止まっていたと場所には 車から漏れ出たオイルとみられる跡がまだ残っていた

夕暮れ時の交通量が増え始めた県道で起きた事故。当時現場付近の天候は雨で視界は悪かった。さらに、警察によると、町内では約200世帯が停電していたという。「別の事故が起きてしまうかもしれない」危険性を感じた2人は、行動を起こした。

事故現場付近は街灯などの灯りは少なく 交通量も少なくない
事故現場付近は街灯などの灯りは少なく 交通量も少なくない

窮地救った連係プレー

村田高校2年 佐藤光さん:
「役割分担を話し合って、おばあさんを助けることと、交通誘導することに分かれて…」

すぐさま自分たちがすべきことを話し合った2人。佐藤さんは、まず女性を安心させるよう声掛けをしたうえで、スマホを持っていなかった女性に対し自身のスマホを駆使して、レッカーの手配をサポート。雨が強さを増す中、女性に傘を差しながら電話対応を行った。

事故を起こして困惑する高齢女性に駆け寄り レッカー手配を手伝った佐藤さん
事故を起こして困惑する高齢女性に駆け寄り レッカー手配を手伝った佐藤さん

一方、田中さんは、車が行き交う現場の交通整理を行った。

村田高校2年 田中仁斗さん:
「私は反射板をつかって交通誘導をしました。向こうから来る車に事故が起きている合図を出して、こっち側を止めたりして…」

多くの車が行き交う中 交通整理を行った田中さん
多くの車が行き交う中 交通整理を行った田中さん

自転車に装着されている反射板を利用することを思いつき、すぐさま手信号に活用したという。生まれて初めての交通整理。100台以上の車が行き交う中でも「怖さはなかった」と、田中さんは話す。

村田高校2年 田中仁斗さん:
「助けたいという思いがあったので、率先して行動しました」

この時、雨は土砂降りに。2人はずぶ濡れになりながらも、警察官が現場に到着するまでの30分ほどの間、お互いの持ち場で渋滞の解消に努めた。

事故を起こしてしまった女性は、「2人がいてくれてよかった…」と話してくれたという。「困っている人を助けたい」そんな気持ちから行動を起こした2人。「よく頑張った」と互いに声を掛け合った。

「仲が良かったからできた」親友の絆

事故から約10日後の6月1日、2人の姿は、地元警察署にあった。勇敢な行動に、警察から感謝状が贈られたのだ。

大河原警察署 髙橋哲夫署長:
「お二方の勇気ある行動は、大人でもできないような行動だと思います。現場で事故に遭われた方は心強かったと思います。ありがとうございました」

緊張しながらも、2人は堂々と、どこか誇らしげに感謝状を受け取った。

とっさの行動がなければ、新たな被害が生じていたかもしれない今回の事故。2人はどうして迅速に行動できたのか、改めて2人に聞いた。

村田高校2年 佐藤光さん:
「仲がいいからこそできた行動かなと…」

村田高校2年 田中仁斗さん:
「信頼がないとできないことなので…。勇気を持って行動すればいいと思いました。」

事故を起こしてしまった女性を安心させ、二次被害を防いだ見事な連携プレー。その勇気ある行動の裏には、『困っている人を助けたい』という思いだけでなく、学校生活や部活動で培った“親友の絆”があった。

(仙台放送)

仙台放送
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