高級食材のアワビ。天然物の漁獲量が減っている中、陸上で養殖し町の特産品にしようという取り組みが行われている。

地域活性化の切り札へ…陸上で「アワビ養殖 」

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湯気がたつ、ほかほかのカレー。
その中には、ゴロっと肉厚なアワビ。

口に入れると、ほのかな磯の香りが。

福島町産業課水産係 工藤有史さん:
アワビの味は天然物と比べても遜色ないです

このアワビは陸上で養殖されたものだ。

天然物の漁獲量が減る中、北海道南部の福島町で行われている陸上での養殖事業。その最前線に迫った。

新型コロナの5類移行により、観光客が戻ってきた北海道函館市。

斉藤健太 記者:
カレーの老舗「五島軒」のショップには、陸上養殖アワビとコラボした「あわびカレー」が並んでいます

老舗洋食店で販売されているレトルトの「あわびカレー」。

陸上で養殖されたアワビが使われている。

売り上げ累計1万5000個以上のヒット商品だ。

養殖しているのは、函館市から車で1時間30分ほどの福島町。

斉藤健太 記者:
非常に広々とした施設となっています。こちらではアワビが10万個以上育てられているということです

陸上でアワビを養殖している施設だ。

水槽内には約11万4000個のアワビが。

福島町産業課水産係 工藤有史さん:
北海道内の事業者から稚貝を購入し、この施設で育てて出荷する。これから2年半くらいかけ、55ミリ以上になったら出荷します。

どのようにして陸上で養殖しているのだろうか。

外に設置した大きなタンクに海水をため、中の水槽に24時間海水を供給する。

福島町産業課水産係 工藤有史さん:
天然物と比べるとやわらかめな歯ごたえで、小ぶりで食べやすいサイズ。新鮮さは天然物と変わらないです

一時は漁獲量が全盛期の10分の1に…

元々、福島町ではアワビ漁が盛んだった。

しかし、生息地で餌となる海藻が育たなくなる「磯焼け」が発生した影響などで、漁獲量は全盛期の10分の1にまで減少。

町では2016年から陸上での養殖を始めた。

初出荷した2020年度は1万5000個、2023年度は倍の3万個を見込んでいる。

福島町産業課水産係 工藤有史さん:
天然資源にも限界があるので、養殖で安定的に供給したいです

福島町の天然アワビの漁期は、12月の短い期間のみ。陸上養殖アワビは年間を通し、安定して出荷することができる。
 

陸上養殖アワビを使った絶品メニュー

町の名物にと、飲食店とタッグを組んで新たなメニューも考案した。

蒸しアワビや、サクサクに揚げたアワビをぜいたくに使った「アワビカレー」だ。

居酒屋 留 沢田茂さん:
みんな喜んでいる。カレーにアワビが入るのは高級だと。養殖アワビがある限り、盛り上がると思います

観光地、函館市にもブームは広がっている。

特産品の開発に取り組む「福島町まちづくり工房」と、老舗洋食店の「五島軒」が共同開発したレトルトの「あわびカレー」だ。

斉藤健太 記者:
アワビとカレーって合うんですね。コリコリ感もあって、レトルトですけれど新鮮さも感じられておいしいです

2021年の発売以来、1万5000個以上売れた大ヒット商品となった。

五島軒 若山豪 社長:
北海道を取り巻く水産資源の状況が厳しくなっている中で、これからも持続可能な水産資源としてアワビが特産品になっていけば、北海道南部の宝になっていくのでは

陸上での養殖アワビは、北海道南部の新たな特産品として根付いていくのだろうか。

(北海道文化放送)

北海道文化放送
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