南北軍事合意の破棄も予告

北朝鮮が韓国との融和の象徴ともされていた南北の連絡事務所を16日爆破し、緊張が一気に高まっている。

三田友梨佳キャスター:
今後の南北関係はどうなっていくのかソウル支局の渡辺さんに解説をお願いします。

ソウル支局・渡辺康弘記者:
南北融和の象徴である連絡事務所の爆破は、経済協力を進められない韓国への怒りやいらだちの現れとの分析もあり、北朝鮮の強硬対応は今後も続く可能性があります。
今回の爆破は与正氏が今月13日に出した予告通りでした。与正氏はさらに、南北が互いの軍をひいて非武装地帯を作ったり挑発を控えたりすることを約束した南北軍事合意の破棄も予告しています。

ソウル支局・渡辺康弘記者:
韓国の専門家やメディアは、この軍事合意の破棄や韓国との境界に近い開城工業団地への朝鮮人民軍の進軍もありうると分析していて、南北間の信頼は吹き飛んだ、北朝鮮が立て続けにミサイルを発射していた2017年の状況に逆戻りしたとの悲観的な声が出ています。
韓国国民の血税約15億円が投入された連絡事務所が爆破されたとあって、これまで北朝鮮に融和的だった文在寅政権も強硬姿勢を取らざるを得ず、北朝鮮の今後の行動次第で朝鮮半島情勢がさらに緊迫する可能性もあります。

爆破された南北連絡事務所

与正氏の並外れた実行力のアピールか

三田友梨佳キャスター:
このニュースについては国際情勢にも詳しい、哲学者で津田塾大学教授の萱野稔人さんに話を伺います。今回の北朝鮮の強硬姿勢について萱野さんはどうご覧になっていますか?

津田塾大学・萱野稔人教授:
何よりも金正恩氏の妹である与正氏の権威を高める狙いがあるのではと考えられます。
与正氏は13日にこの連絡事務所が跡形も無く崩れるという談話を発表しています。そのわずか3日後に今回の爆破を実効している。与正氏の並外れた実行力をアピールすることになっています。正恩氏の身に何かあったときのために与正氏の存在感を高めようとしているのではないか。ただ北朝鮮社会は男性優位社会です。女性で年齢も比較的若い与正氏の権威を高めることはそれほど単純簡単ではありません。その権威付けのために今後さらに過激な行動に出る可能性も無くはないと言えます。

三田友梨佳キャスター:
過激な行動に出る可能性もということですが、今後韓国の出方によっても一気に緊張が高まると思いますが、韓国の対応についてはどのように見ていますか?

津田塾大学・萱野稔人教授:
これまで北朝鮮との融和を掲げてきた文在寅政権にとって極めて難しい対応を迫られることになると思います。
そもそも文在寅政権は南北融和に前のめりになったことで北朝鮮に足下を見られて過大な要求をされるようになっていました。自らが米朝の仲を取り持って両国の関係改善を達成できるんだという過信のツケがこうして現れているんだと思います。

三田友梨佳キャスター:
アメリカさらには日本や中国を含む東アジア情勢について今後どうなっていくとお考えですか?

津田塾大学・萱野稔人教授:
今回の出来事がコロナ危機をきっかけに米中の関係がより一層悪化しているなかで起こったことに注意するべきだと思います。つまり朝鮮半島情勢の緊張の高まりが米中関係により直接影響しやすい不安定な状況にあるということです。きっかけは2つあると考えられます。
1つは北朝鮮がアメリカとの膠着した交渉を打破するためにより過激な行動によって韓国にゆさぶりをかけてくる可能性
もう1つは与正氏の権威を確立することに北朝鮮政府が失敗して国内情勢が不安定化してしまう可能性。この後者の場合、誰も状況をコントールできなくなるので予期しない流れで東アジア情勢が一気に緊迫するということもありえるのではないかと考えられます。

三田友梨佳キャスター:
強気な対外姿勢を見せて与正氏への国民からの信頼を高めようとしているのだとしたら、それだけ追い込まれていることを意味しているようにも感じます。
南北首脳間で合意した内容がなかなか進まない韓国へのいらだちが原因なのか、それともアメリカなどから譲歩や支援を引き出す狙いがあるのかいずれにしても韓国がどのような対応をとるのか、そのやりとりで今の北朝鮮の実状が見えてくるのかもしれません。

(「Live News α」6月16日放送分)