セブン&アイホールディングスが株主総会を開き、井阪隆一社長の続投を可決した。

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セブン&アイホールディングスをめぐっては、いわゆる「ものを言う株主」の海外投資ファンドが、井阪社長を含む取締役4人の退任や、業績が振るわないイトーヨーカドーなどのスーパー事業を切り離すことなどを求めていた。

25日の総会では、会社側が提出した井阪社長を取締役とする選任案に約7割が賛成し、井阪社長の続投が決定した。

続投賛成の株主:
流れと言うか、体制を変えてもらいたくない

続投反対の株主:
スーパーを持っていることで、シナジー(相乗)効果があるって全然ないと思う。

井阪社長の続投に賛成した比率は、2022年と比べて18.37ポイント低下した。厳しい評価のなか、経営手腕が問われることになる。

積極的な株主は増加傾向へ

「Live News α」では、市場の分析や企業経営に詳しい、経済アナリストの馬渕磨理子さんに話を聞いた。

堤 礼実キャスター:
今回、いわゆる「ものを言う株主」の主張が退けられるカタチとなりましたが、いかがですか

経済アナリスト・馬渕磨理子さん:
「ものを言う株主」は、アクティビストとも言われ、企業の株式を大量に保有して、積極的に経営の改善を働きかけます。そして、企業価値を高めたのちに、株式を売却して利益を得ることを主な目的にしています。
今回、セブン&アイホールディングスに、コンビニエンスストア事業の分離や役員の退任を要求したバリューアクトは、過去にはMicrosoftの株主として経営改革を要求して、それが業績の向上につながった過去があります

堤 礼実 キャスター:
セブン&アイホールディングスの他にも、アクティビストの存在感が増している例というのはあるのでしょうか?

経済アナリスト・馬渕磨理子さん:
今年に入ってから、アクティビストから出された企業経営への提案数は43件で、これは2022年の同じ時点の27件を上回っています。
いま、東京市場がバブル以降の高値を更新するなかで、割安感があり、売却益に「うまみ」のある日本株に海外のアクティビストが注目しています。

アクティビストによる企業への働きかけはさまざまで、取締役の選任や解任、さらに、利益の低い事業の売却や、逆に利益の高い事業の買収要求などを行います。
また、最近傾向として、社会問題や環境問題への積極的な貢献を求めるケースも出てきています

「アクティビストの目的」見極め重要

堤 礼実 キャスター:
やはり株主は企業にとって大きな存在なんですね

経済アナリスト・馬渕磨理子さん:
アクティビストは、仲間内での「なあなあ」や、合理的な理由のない慣習を許容せず、日本企業のガバナンス改革にメスを入れる存在である一方、短期の目線で企業の利益を見ている可能性もあります。
例えば、キャッシュリッチの建設業界では、アクティビストの存在感が増しています。特に、自社株買いや増配を求めるケースが多いです。
アクティビストが株主となり、企業から配当を得るだけ得て、企業にキャッシュがなくなれば売却する、ということも十分に考えられます。

ガバナンス改革の点から、株主の意見を受けることも重要ですが、真に、企業の長期的な成長を考えているアクティビストなのかどうか、ここの見極めが重要です

堤 礼実 キャスター:
株主と企業が手を携えて、ともに成長への道を歩めるといいですね。

(「Live News α」5月25日放送分より)

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