命に関わる重い病気の子供たちが安心して家族と過ごせる場所「こどもホスピス」を、宮城県につくろうという動きがある。一方で、資金調達や制度の問題など、設立にはさまざまなハードルがあった。

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宮城こどもホスピスプロジェクト

2023年4月下旬、仙台市内で「こどもホスピス」についての研修会が開かれた。会場には医療関係者など130人ほどが集まり、こどもホスピスの役割や必要性を話し合った。

2023年4月 仙台市内で開かれた「こどもホスピス」に関する研修会
2023年4月 仙台市内で開かれた「こどもホスピス」に関する研修会

宮城県立こども病院 大塚有希さん:
自宅や病院ではできないことも、ホスピスならできる。親も子もその人らしさを失わず自分を大事に思えるようにサポートする場所になりうると思う。

研修会を企画したのは、2023年発足した「宮城こどもホスピスプロジェクト」。こどもホスピスとは、小児がんなど重い病気の子供とその家族が安心して過ごせる施設のことだ。患者の子供だけでなく、その兄弟姉妹や親もケアの対象としている。

参加者たちからは「トータル的な家族のケアがすごく必要」「どんなに苦しくたって嫌な思いでなく生きる喜びをわかってほしい。そういうことを是非応援したい」といった意見が聞かれた。

プロジェクトのメンバーの中には、自身の経験からホスピスの必要性を強く感じている人もいる。

鈴木盛登さん:
「子供たちと夏祭りなどで遊びに来た公園になります」

宮城こどもホスピスプロジェクトメンバーの一人 鈴木盛登さん 12年前 次女・十和ちゃんを白血病で亡くした
宮城こどもホスピスプロジェクトメンバーの一人 鈴木盛登さん 12年前 次女・十和ちゃんを白血病で亡くした

12年前、当時9歳だった次女の十和ちゃんを白血病で亡くした、鈴木盛登さん。
異変が起きたのは、十和ちゃんが3歳の時だ。突然、ふくらはぎの痛みを訴えた十和ちゃん。足の治療をしても改善することはなく、顔色も悪くなっていったという。小児科を受診するとすぐに専門科を紹介され、その日のうちに白血病と診断され、翌日から入院生活を送ることになった。

鈴木さんの次女・十和ちゃん 白血病と診断されたのは3歳の時
鈴木さんの次女・十和ちゃん 白血病と診断されたのは3歳の時

鈴木盛登さん:
24時間付き添わないといけない状況で、日中は妻が付き添う、夜は私が付き添う。その時、十和の妹に0歳の三女がいたので、6歳、3歳、0歳という三姉妹だった。その時は何も記憶できないくらい、分刻みで時間に追われていて、大変と思う隙間すらないくらいの状況でした。もうギリギリでした。

闘病生活は6年にも及んだ。治療による外見の変化から、外に出たがらなくなった十和ちゃん。鈴木さんは家以外に安心して行ける場所が必要と感じたという。後で聞いた十和ちゃんの姉妹の言葉も鈴木さんを動かした。

『お母さん、お父さんは十和ちゃんばっかり』

鈴木さんの3人の子どもたち
鈴木さんの3人の子どもたち

鈴木盛登さん:
看護師さんに言っていたと後で聞いて、申し訳なかったと思っていた。ホスピスが本音を言える場であればすごくいいと思いますし、「そうだよね」と本当にわかる人が言ってあげられるとずいぶん違うのでは…。

こどもホスピスの課題

当事者も医療関係者も必要と感じているこどもホスピス。一方で、設立には課題がある。

宮城こどもホスピスプロジェクト 佐藤千鶴子 代表:
今まで建てたところを見ると、建てるための資金がとても重要になっている。もう一つは、地域の人たちにいかに協力していただけるか。

宮城こどもホスピスプロジェクト 佐藤千鶴子代表
宮城こどもホスピスプロジェクト 佐藤千鶴子代表

こどもホスピスは保険適用の医療ではなく、福祉の対象でもない。寄付に頼らざるを得ない現状があるという。病院に併設しない形の「こどもホスピス」は、現在、日本で大阪市と横浜市の2カ所のみ。2021年、横浜にこどもホスピスを設立した団体の代表は行政の協力も欠かせないと話す。

TSURUMIこどもホスピス 大阪市
TSURUMIこどもホスピス 大阪市

横浜こどもホスピスプロジェクト 田川尚登 代表理事:
横浜は行政とつながって市有地を無償で借りることができ、その上に寄付で集めたお金で建物を建てることができました。これは地域課題として行政と一緒に取り組む課題と思う。

横浜こどもホスピスプロジェクト 田川尚登代表理事
横浜こどもホスピスプロジェクト 田川尚登代表理事

横浜のホスピスは設立から約1年半でのべ850人が利用。そのほとんどがリピーターだという。

うみとそらのおうち(提供:横浜こどもホスピスプロジェクト)
うみとそらのおうち(提供:横浜こどもホスピスプロジェクト)

横浜こどもホスピスプロジェクト 田川尚登 代表理事:
病気を忘れて思いっきり遊んでいる姿を見て、施設の重要性を感じた。

宮城こどもホスピスプロジェクト 佐藤千鶴子 代表:
子供のホスピスは、看取りの場ではない。残されている時間、これが残りかも分からない。そういう人たちが来ることで安らげる、闘病に対して力をもらえる、そういうところを目指したい。

うみとそらのおうち(提供:横浜こどもホスピスプロジェクト)
うみとそらのおうち(提供:横浜こどもホスピスプロジェクト)

病気のこどもと家族が一緒に笑顔で楽しめる場所を。こどもホスピスを設立するプロジェクトは始まったばかりだ。

(仙台放送)

仙台放送
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