大手百貨店の大丸松坂屋は、コロナ禍で減った客足を補うオンライン戦略の一環として、百貨店のノウハウを生かした冷凍食品のサブスク事業に乗り出した。

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大丸松坂屋は、厳選された冷凍食品を定額制で宅配するサブスクサービスを16日から開始する。

大丸松坂屋百貨店・澤田太郎社長:
おいしいということは、なんかやっぱり幸せにつながるなと。

大丸松坂屋の食品担当が厳選した冷凍食品が、毎月6品から10品ほど自宅に届き、料金は1カ月6500円から1万2000円だ。

「西洋銀座」のメニュー例
「西洋銀座」のメニュー例

「ポール・ボキューズ」や「西洋銀座」など、有名店の冷凍食品が並ぶが、メニューの大半は“秘密”だという。

その理由は、「届いた時のお楽しみ」も提供したいからというものだ。

大丸松坂屋は、コロナ禍で客足が減ったことから、オンラインの売り上げアップを目指している。

今回の新事業では、2023年度に3000人の会員獲得、5年後には50億円の売り上げ達成を目指している。

百貨店ならではの精選メニューで差別化

「Live News α」では、マーケティングアナリストの渡辺広明さんに話を聞いた。

堤 礼実 キャスター:
大丸松坂屋の美味しいサブスクサービス、いかがですか。

マーケティングアナリスト・渡辺広明さん:
今回の取り組みはデジタルを活用した新規事業の第3弾で、「ファッション」、「化粧品」につぐもので、準備期間に約1年かけたという。

この3つの事業で共通しているのが、「サービスの利用で、暮らしが豊かになる」こと。さらに、その分野に通じた「プロの目利きのオススメ」を顧客が楽しめること。

これこそ、まさに百貨店の強みであり、他のオンライン販売やサブスクサービスとは、差別化を図ることが出来る。

今回、大丸松坂屋が参入する冷凍グルメの市場は、感染拡大前と比較すると、およそ8.5%も成長している。自慢の「デパ地下クオリティ」を生かすことで、十分商機があると判断したのではないか。

堤 礼実 キャスター:
確かに、デパ地下の美味しいグルメが定期的に自宅に届くのは嬉しいですよね。

マーケティングアナリスト・渡辺広明さん:
サブスクサービスを成功させるには、常に会員顧客へ満足を提供する必要がある。

3つのコースは、毎月メニューが異なり、その内容は一部の商品だけを顧客に知らせて、「届いた時のお楽しみ」というサプライズがある。

こうした遊びができるのは、百貨店側に確かな目利きのチカラがあり、それを信頼する顧客との関係があって成立するもの。

「時間」と「場所」の制約を克服

堤 礼実 キャスター:
この試みを広げていくための課題としては、どのようなものがあるのでしょうか。

マーケティングアナリスト・渡辺広明さん:
デパ地下でないと出店しない有名店の冷凍食品を充実させること。

さらに、バイヤーが出店者と共同開発したり、有名店をまたいだコラボ商品などをどれだけたくさん持っているか、これが差別化のポイントとなり、勝ち筋となりそう。

百貨店ビジネスは既存店舗の営業時間中に、迎え入れる顧客の数に限界があり、今後、成長をはかるためには、「時間」と「場所」の制約を克服する必要がある。

デパ地下クオリティの美味しい定期便は、百貨店の強みを生かしながら「時間」と「場所」の制約から離れ、日本全国の顧客に届ける事ができる。

顧客の利便性に寄り添いながら、うまくサービスの向上をはかれると、大丸松坂屋は高級冷凍食品のプラットフォームに成長する可能性がある。

堤 礼実 キャスター:
食事は生きていく上でとても大切なものですよね。でも忙しかったり、疲れていたりで、思うようにならない日もあるのではないでしょうか。

今度はどんな味が送られてくるのか、サプライズ感覚で楽しみつつ、食卓に彩りを与えてくれるサービスだなと思います。

(「Live News α」5月15日放送分より)

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