復興の歩みを進める被災地の企業は、コロナ禍も重なり、苦しい状況に置かれている。一方で、震災後に事業を継承し、変化に対応しようとした若手経営者の挑戦が成果を出し始めている。

お菓子を作ったのは日本酒「蔵元」

2023年3月、宮城県大崎市にオープンした、おやつ工房「ハルリッカ」。
店内にはバウムクーヘンやシフォンケーキなどが並んでいる。
客からは「香りがいいし、全部おいしそう」といった声が聞かれる。

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お菓子屋さんを手掛けたのは、実は菓子職人ではなく、日本酒「宮寒梅」の蔵元。なぜお菓子だったのか。

寒梅酒造 岩崎真奈 蔵元(38): 
一番はコロナが影響あって、どこにも出歩けない時に親子三代で来てくれるお客さんもいて、酒蔵を大人でも子供でも楽しめる空間に作っていけたらおもしろいかな。

寒梅酒造 岩崎健弥 社長(39):
お菓子を買うことで宮寒梅を知ってもらえる。そういう発想の転換が必要と思っている。

寒梅酒造の5代目蔵元・岩崎真奈さん。夫で社長の健弥さんと出店を決めた。製造には真奈さん自ら携わっている。蔵で作られる酒粕や甘酒などを使ったノンアルコールのお菓子。酒蔵だがお酒を飲まない人も楽しめるお菓子にこだわった。

「無知だからこそ」チャレンジできた

店を手掛けた寒梅酒造は、東日本大震災で蔵が全壊。健弥さんが社長となったのは震災から7年後、33歳の時だった。

一見、早すぎるかに見える世代交代。実は、健弥さんが「若い段階でチャレンジしたい」と義理の父親に直談判したという。

健弥さんはまず新たな設備を導入し、従業員を増やして、品質の向上と効率化を進めた。酒以外の商品開発にも力を入れ、会社の売り上げは社長就任前と比べて4倍まで伸びた。

寒梅酒造 岩崎健弥 社長(39):
無知だからチャレンジできた。突き進めた。

寒梅酒造 岩崎真奈 蔵元(38): 
怖いもの知らずだったね(笑)。少しでも宮寒梅を知ってもらうことはすごく大切だなって。地域の人に守られて生活しているので、ここに人に来てもらうのは私たちの役割、今後、会社を存続していくために守らなければいけないことと思います。

ライバルとコラボレーション

一方で違った方法で挑戦している企業もある。

かねせん 斎藤大悟 社長(41):
人口が減って人口規模に合わせてできることも少なくなると思った。

気仙沼の老舗かまぼこ店「かねせん」の4代目社長、斎藤大悟さん(41)。3年前、39歳で社長になった。「かねせん」は津波で工場が全壊。仮の工場で製造を続けてきたが、区画整理で元の場所に再建したのを機に、父親から事業を引き継いだ。

かねせん 斎藤大悟 社長(41):
こちら、フィッシュプロテインダイエットです。

斎藤さんは、これまでとは違った観点でかまぼこを販売することを考えた。かまぼこの「たんぱく質」を前面に打ち出した商品の開発。

かねせん 斎藤大悟 社長(41):
健康・不健康は一日の話でなく習慣と思っていて、今の食生活を見直して習慣的に自分の体重を測る商品になれたらいい。

さらに、本来はライバルである同業他社と手を組むことを決断した。

かねせん 斎藤大悟 社長(41):
(同業他社の)南三陸町の及善商店の社長と話したときに同じような課題を持っていることに気づいて、2社でやることでうまく解決できる道があるのではないかと。

斉藤さんは笹かまのレシピを渡して製造を委託。新工場の建設費用などのコストを抑えつつ、伝統の味を守ることができた。またそれぞれの知識やノウハウを共有し、新商品も共同開発した。

かねせん 斎藤大悟 社長(41):
新しいことをして面白いことをするお店が増えると、町全体も魅力的になると思うので、臆せず挑戦していきたいと思う。

次々と生まれる新たな挑戦。地域経済に詳しい専門家は柔軟な発想こそ「今の時代」に必要な要素と話す。

七十七リサーチ&コンサルティング 田口庸友 上席研究員:
若手経営者は経験不足がデメリットに考えられているが、この変化の激しい時代には経験にとらわれない試行錯誤・チャレンジできるところが強みになる。

加えて被災地では、その経営姿勢がより重要視されると指摘する。

七十七リサーチ&コンサルティング 田口庸友 上席研究員:
元気な企業があると被災地が活性化するが、特に若い経営者、さまざまな人から協力を得なければならない人は地域の人たちといろんなつながりを持てる。若さが地域の活性化につながる。いろいろなものと連携したりつながったり地域を活性化する効果は大きいと思う。

試行錯誤をしながら、新たな会社の形を模索する若手経営者たち。被災した地域の助けになることが期待されている。

(仙台放送)

仙台放送
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