法廷で見せた”挙動不審”

「やめたいとは常に思っています。」うつろな表情でそう答えたのは、覚せい剤の使用の罪などに問われている、女優・三田佳子さんの次男・高橋祐也被告(43)。

送検される高橋祐也被告(43)(去年10月28日 野方署)
送検される高橋祐也被告(43)(去年10月28日 野方署)
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初公判では、高橋被告は起訴内容を認めた一方、弁護人は責任能力を争う姿勢を示した。高橋被告は、2018年にも覚せい剤を使用した罪で執行猶予付きの有罪判決を受けている。

先月21日10時から東京地裁で行われた被告人質問。開廷前の高橋被告はどこか落ち着かない様子で、首を左右に動かし、始まる直前には下を向いて、両手を合わせながら、何か祈るようなしぐさを見せていた。

「私が質問を話し終えるまで、答えるのを待って」「もっとゆっくり聞こえるように」と弁護人から注意されながら、質疑応答が始まった。覚せい剤を入手するまでの経緯についての質問が中心に行われた。

知人からの”金の無心”

高橋被告は2021年の秋頃、知人から “バーの経営”について教えてあげて欲しいとAという人物を紹介されたという。その後、Aとは、月に1回の頻度で、居酒屋などで話す程度の付き合いだったというが、二人の仲は奇妙な関係に進展していく。以下がやりとりだ。

先月21日に行われた被告人質問で、高橋被告は、再び、覚醒剤に手を染めた経緯を語った。
先月21日に行われた被告人質問で、高橋被告は、再び、覚醒剤に手を染めた経緯を語った。

高橋被告:お金を貸してくれと
弁護人:いつから?
高橋被告:初めて会った翌日から
弁護人:何回くらい?
高橋被告:10~15回くらい
弁護人:いくら?
高橋被告:5万、10万の時も

このAという人物は、執拗に、高橋被告に金を無心するようになったとのこと。高橋被告は、一度も返金されたことはないにもかかわらず、エスカレートする要求に応えるよう、Aに金を貸し続けていたという。時には、実家の両親からAに貸す金をもらうこともあったそうだ。

「ゆうちゃん、もう覚醒剤やってないの?」

ある日、居酒屋で、Aから「ゆうちゃん、もう(覚せい剤)やってないの?」と注射を腕に打つようなしぐさで聞かれ、高橋被告はそれに対し「捕まるのはイヤだからやっていない」とはっきり答えたという。しかし、この”悪魔のささやき”が薬物事件への入口となった。

高橋被告によると、覚醒剤を「買い取ってくれ」と言われ、断ったというが・・・。
高橋被告によると、覚醒剤を「買い取ってくれ」と言われ、断ったというが・・・。

2021年9月28日、酒を飲んで家で寝ていた高橋被告の自宅に、突然、Aが訪ねてきた。被告人質問で明らかになった当時のやり取りが以下になる。

高橋被告:『ゆーちゃんおはよう、金貸してくれ』と、私はいきなり家に来てお金貸してくれは無理ですよと言ったら、Aがバッグから薬の様なものをパンパン置きだした。小さいパケ2つくらい、大きめのパケ1つ、そして錠剤1つ。
弁護人:覚せい剤だと思った?
高橋被告:はい、Aから「買い取ってくれ」と、それはできないです。持って帰ってもらえますか、帰ってくださいと言いました。

持っていた金4万5000円を、Aに渡したという高橋被告。しかし、Aは、高橋被告の部屋に、覚醒剤を置いたまま、出て行ったそうだ。

この覚醒剤は、高橋被告が買ったものではなく、Aが勝手に置いて行ったものだという。その主張は、にわかに信じがたいのだが、高橋被告は、当時の心境について「薬をやるわけにいかない、早く持って帰って欲しかった」と振り返る。しかし、結局、覚醒剤に手を出してしまう。

「覚醒剤を見ていたら使いたくなった」

「しばらく、放っておいたが、夜くらいに見ていたら使いたくなった。依存症があるので、目の前にあると強迫観念に襲われてしまう」という高橋被告。Aが置いていった覚せい剤を捨てずに、どのように対処しようか考えて見ていると、徐々に、我を忘れてしまったそうだ。

警察車両に乗り込む高橋被告(去年10月 野方署)
警察車両に乗り込む高橋被告(去年10月 野方署)

弁護人:覚せい剤を使用したことについては?
高橋被告:すごく懺悔の念で、痛恨の想い
弁護人:今はどんな想い?
高橋被告:体に悪いし、自分的にやめ続けていられると思ってチャレンジしている。やめたいと常に思っているんです
弁護人:これからどうする?
高橋被告:自分的に専門医や両親のサポートでどう依存から抜けられるか。売人に会わないように生活していきたい

被告人質問の最後に、裁判官から「どうして誰にも相談しなかったのか」と問われた高橋被告は、すこし間を置いて口を開いた。「両親に心配させられないと思った」と。次回の公判は6月16日、その間に高橋の精神鑑定も行われる予定だ。

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社会部
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